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読書感想文

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ネタバレありです。
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2023年12月の記事一覧

「子供のはなし」(チャールズ・ディケンズ)

あらすじ

 旅人が行った先で出会いと別れを繰り返します。最初は子供、次に少年、青年とだんだん出会う相手の年齢が上がります。

 子供とは共に遊び、少年とともに学び、旅人は出会った相手と一緒に同じことをしています。しかし、旅人はそのうち一緒に居た相手を見失ってしまいます。呼んでも返事はありません。

 旅人は倒れた木に座っている老人に出会いました。老人の隣に座ると過去に出会ったみんなが現れます。

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「気の毒な身内の話」(チャールズ・ディケンズ)

あらすじ

 親戚が集まって暖炉を囲んで物語を話す場面で、はじめに語る主人公の話です。

 主人公は何事にも成功とは無縁の人物だと思われています。事業でも、恋愛でも、遺産の相続までも失敗したと世間では思われています。しかし、実際はそうではありません。

 元々秘書だった人物に乗っ取られた、と言われている事業は合意のもとに任せただけでした。子や孫に恵まれた人生で、妻との仲もずっと良いままです。

 

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「シグナルマン」(チャールズ・ディケンズ)

あらすじ

 「おぅーい、そこの人!」という声を聞いて、主人公は信号手に気づきます。どことなく気になった主人公は信号手のいる場所へ行きました。

 信号手がいた場所はかつて見たことがないほど寂しい場所でした。巨大な地下牢のように重苦しい雰囲気です。

 信号手は奇妙な視線を主人公に向けていました。何かに恐怖している様子もあります。それでも主人公詰め所に通してくれました。仕事をしながらいつもの様子や

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「黒いベール」(チャールズ・ディケンズ)

あらすじ

 年末の黄昏時に若い医師が休憩室でくつろいでいました。その日は風が強く、雨も降っていてとても寒かった。医師は1日中歩き続けて疲れていたのでウトウトしてしまっています。

 恋人のローズのことを考えながら眠ってしまっていた所を、雑務を任せている少年に起こされました。女性が訪ねてきたようですが、警戒している様子です。外にいた女性はとても背が高く、喪服で正装していました。顔は黒いベールで隠さ

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「クリスマス・キャロル〈角川文庫〉」(著:チャールズ・ディケンズ、訳:越前敏弥)

あらすじ

 初老の商人スクルージは冷酷で守銭奴です。スクルージにとってクリスマスは得にならない不快な日でした。クリスマスイブは〈スクルージ&マーリー〉商会の共同経営者だったマーリーが死んだ日です。そんな日に7年前に死んだマーリーが幽霊になって現れました。

 マーリーは生前の罪によって鎖につながれ、死後は悲惨なものだとスクルージに伝えます。スクルージが自分と同じ運命を辿らないように機会を手に入れ

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「D坂の殺人事件」(江戸川乱歩)

あらすじ

 「私」は白梅軒という行きつけのカフェでコーヒーを飲みながら店の外を眺めていました。店の向かいには古本屋があります。そこの妻が美人なので店から眺められることが目的の1つです。白梅軒で知り合いになった書生の明智小五郎が通りかかりました。こちらに気づいて店に入ってきたので2人で話しながら店の外を眺めていました。

 その日は目当ての美人がなかなか出てきません。本泥棒が4人も来ているのに人が

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「赤い部屋」(江戸川乱歩)

あらすじ

 内装が赤に統一された部屋に7人の男があつまっています。彼らは日常に退屈して異常な興奮を求めて集まりました。今回の集まりは新入りのT氏が自己紹介と彼の話から始まります。

 T氏は退屈しのぎに色々な道楽を試したものの自分に合うものがありません。人殺しの興奮によって退屈を紛らわせるようになり、それも3年間で飽きました。阿片に手を出すようになり、正気を失う前に人に話そうと思って集まりに参加

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「鏡地獄」(江戸川乱歩)

あらすじ

 Kの友人「彼」には不思議な病が取りついていました。「彼」はガラスや鏡への異常に執着していました。物理学を学び始めると「彼」の執着心はさらに強くなります。中学を卒業した後は庭に実験室を作り、1日中籠もるようになりました。

 そこからはどんどん「彼」はおかしくなってしまいました。Kはある朝「彼」の使用人に呼ばれます。「彼」の実験室には笑い話が聞こえる玉を見つけました。Kが玉を壊しすと中

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「疑惑」(江戸川乱歩)

あらすじ

 主人公の父親が殺された翌日から話が始まります。父親は良い人物ではなく、色々と迷惑をかけているので容疑者も何人かいました。主人公の話を聞いている友人からすると家族の犯行に思えます。

 事件から5日後、主人公は兄が怪しく思えるようになっています。父親の死体の側には兄と自分しか持っていないハンカチが落ちていました。家族の雰囲気もギスギスしているように思うらしい。

 事件から10日後、主

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「芋虫」(江戸川乱歩)

あらすじ

 須永中尉は戦争で負傷して五体のほとんどをを失っています。無事なのは視覚と触覚だけです。須永時子は夫を支える良い妻として、家を借りている鷲尾老少将から会うごとに褒められています。実際は抵抗できない夫を虐げることを楽しむ奇妙な嗜好があります。ある日、時子は夫の目の純粋さを恐れて目を潰してしまいます。時子は後悔して「ユルシテ」と指で夫の体に書いて謝罪します。体を動かしたりなどの反応は一度も

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「氷の涯」(夢野久作)

 上村作次郎がシベリア出兵中、事件に巻き込まれる話です。作次郎は軍の仕事が退屈で探偵のようなことを始めていまいます。色んなところに首を突っ込むとあらぬ疑いをかけられます。結果的にニーナという子供っぽい女性と日本軍から逃げることになります。終始あまり暗い空気にはならず、二人で死ぬことを選んだところで終わります。作次郎本人からの手紙として話が進んでいるので、終わりも含めてどこまでが本当なのか判断が難し

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「あやかしの鼓」(夢野久作)

 100年ほど前に作られた鼓にまつわる話です。鼓を作る職人が失恋したとき鼓を作ります。別れた相手の幸福を祈って作った鼓ですが、関わった人は全員不幸な死を遂げてしまいます。そのため、のちに「あやかしの鼓」と呼ばれるようになります。
 ときは流れ、「あやかしの鼓」を作った職人のひ孫にあたる音丸久弥が翻弄されていきます。呪いが本当であるかのように不幸になり、最後は「あやかしの鼓」を壊して自殺します。

「押絵の奇蹟」(夢野久作)

 病院から失踪したピアニストの女性から歌舞伎役者の菱田新太郎への手紙として話が進みます。ピアニストの井ノ上トシ子は演奏中に喀血したため、入院することになっていました。手紙の内容は恋文のような始まりでした。運命の相手だと新太郎のことを書いていて、実際恋心があるのでしょう。しかし、生き別れの双子かもしれないらしい。トシ子の母親は新太郎の父との不義を疑われて父に斬られてしまっていました。真相を知っている

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「難船小僧」(夢野久作)

 伊那一郎という水夫は美少年で人目を引きますが、過去に乗った船が全て沈んでいます。迷信ではありますが、あまりに多くて上海では誰も船に乗せたがりません。根拠はなくても気持ち悪さがあるのは理解できます。船という閉鎖空間では普通の環境とは違った心理になるのでしょう。そんな中で伊那はアラスカ丸という船に乗り込むことになります。バンクーバーへ至るまでの航路でだんだんと暗い気配が濃くなっていきます。航路の途中

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