「疑惑」(江戸川乱歩)

あらすじ

 主人公の父親が殺された翌日から話が始まります。父親は良い人物ではなく、色々と迷惑をかけているので容疑者も何人かいました。主人公の話を聞いている友人からすると家族の犯行に思えます。

 事件から5日後、主人公は兄が怪しく思えるようになっています。父親の死体の側には兄と自分しか持っていないハンカチが落ちていました。家族の雰囲気もギスギスしているように思うらしい。

 事件から10日後、主人公は憔悴しています。家族の間でも疑い合っているようです。もとの容疑者の疑いも晴れ、父親の素行も警察が知るところとなりました。警察としても家族が疑わしくなっています。その翌日には血の付いた斧が見つかります。凶器が見つかっても犯人はわかりません。主人公の様子もおかしくなっています。

 事件から1ヶ月後、友人が会うと主人公はやつれています。体調が悪く、病名もわからないようです。事件の犯人はわかり、実は主人公が殺していたらしい。主人公には家族がそれぞれかばい合っていて疑心暗鬼に見えるようになっていたようです。

感想

 主人公と友人の会話文だけで話が進むので新鮮に感じます。主人公の父親への印象が悪く、何かを隠しているのではないかと思っていました。状況証拠から最初は誰もが疑わしいです。徐々に主人公が最も怪しくなりますが、真相がわかったときには予想していなかった結末で意表を突かれました。
 主人公にとっては家族をずっと疑い続けたことへの罪悪感、自分の心の弱さがまさしく悪だといいます。気持ちはわかるのですが、そこまで気に病まなくてもとも思ってしまいました。

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