「難船小僧」(夢野久作)

 伊那一郎という水夫は美少年で人目を引きますが、過去に乗った船が全て沈んでいます。迷信ではありますが、あまりに多くて上海では誰も船に乗せたがりません。根拠はなくても気持ち悪さがあるのは理解できます。船という閉鎖空間では普通の環境とは違った心理になるのでしょう。そんな中で伊那はアラスカ丸という船に乗り込むことになります。バンクーバーへ至るまでの航路でだんだんと暗い気配が濃くなっていきます。航路の途中で伊那は死んでしまいますが、最後まで原因がはっきりとはしません。ただし、賭けの対象になるくらい話題になっていたせいで港に見物人が一杯になっています。着いたあとにどうなったかはわからずじまいです。後味が悪い話でした。

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