「押絵の奇蹟」(夢野久作)

 病院から失踪したピアニストの女性から歌舞伎役者の菱田新太郎への手紙として話が進みます。ピアニストの井ノ上トシ子は演奏中に喀血したため、入院することになっていました。手紙の内容は恋文のような始まりでした。運命の相手だと新太郎のことを書いていて、実際恋心があるのでしょう。しかし、生き別れの双子かもしれないらしい。トシ子の母親は新太郎の父との不義を疑われて父に斬られてしまっていました。真相を知っているだろう新太郎の父も死んでいて、実際はどうなのか知る由もありません。どうにもならない想いのことを思うと胸が痛くなります。

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