「赤い部屋」(江戸川乱歩)

あらすじ

 内装が赤に統一された部屋に7人の男があつまっています。彼らは日常に退屈して異常な興奮を求めて集まりました。今回の集まりは新入りのT氏が自己紹介と彼の話から始まります。

 T氏は退屈しのぎに色々な道楽を試したものの自分に合うものがありません。人殺しの興奮によって退屈を紛らわせるようになり、それも3年間で飽きました。阿片に手を出すようになり、正気を失う前に人に話そうと思って集まりに参加したようです。

 始まりは交通事故を起こした運転手に、病院の場所を尋ねられたことからです。意図的ではないものの、ヤブ医者の場所を教えてしまって轢かれた人は死んでしまいました。こういった罰せられない方法で殺人を繰り返して退屈を紛らわせたそうです。

 聞き手達は興奮して話を聞き続けています。そこに給仕女が飲み物を持って入ってきました。T氏はピストルを取り出し、給仕女を撃ちます。女の悲鳴が響き、驚いた聞き手は立ち上がりますが、すぐにイタズラだとわかります。T氏は謝りながら給仕女に自身の胸のあたりをピストルで撃たせます。1度目とは違う銃音が響き、T氏はうめき声をあげて倒れました。100人目の犠牲者を自分にしたようです。

 撃たれて死んだように見えたT氏が笑いながら立ち上がります。最初からT氏の芝居で、話も全て作り話でした。給仕女が電灯をつけると、幻想的で素晴らしい部屋がみずぼらしく見えました。

感想

 子供っぽくい話が悪意を加えることでとても趣味の悪い話になります。ネタばらしされるまでT氏が狂人にしか感じられません。給仕女とともにピストルを使ったイタズラが殺人の告白と手口によって説得力を持ちます。聞き手とともに思わず騙されてしまいました。気味の悪い赤い部屋、殺人に至る話の流れ、本当のように思わせる手口の紹介まで全てが巧妙です。

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