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【時価総額TOP5】SaaSベンチャーの上場前ファイナンス施策を調査してみた。

こんにちは。PreVenture編集部です。

今回は、2021年11月現在の時価総額TOP5のSaaSベンチャーが上場前に行ってきたファイナンス施策についてまとめました。現在の日本のトップを走る5社が、どのタイミングで何を目的に資金調達をしてきたのかを1つの記事にまとめています。各社によって特徴的な部分も多いため、ぜひ楽しみながらご覧ください!

対象企業

既に目次でも見えていますが、今回対象になる企業は次の5社です。

・株式会社ラクス
・株式会社マネーフォワード
・freee株式会社
・Sansan株式会社
・株式会社エス・エム・エス

選出基準は2021年11月時点での「国内SaaS企業」に絞った時価総額のトップ5で、strainerが提供しているデータを参考にしました。

それでは、早速見ていきましょう!

(1)株式会社ラクス

ラクスvf

▼基本情報
時価総額:5835億1600万円
市場:東証一部
事業概要:IT技術を、「楽」に企業の発展に活用できるように。お客様の課題解決やビジネスの成長を、クラウドサービスとIT人材で支援。

時価総額ランキングでは、2位以下に1000億近く差をつける圧倒的な数字を叩き出している株式会社ラクス。そんなラクスの資本政策は、上場SaaS企業では非常に珍しく、オーガニック成長を基本としてきました

後述するほとんどの企業がVC等からの資金調達を行っているのに対し、ラクスはほぼ自己資本で成長してきたことがわかります。(セプテーニ・ホールディングスからの出資が約2%ほど)

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STARTUP DBより引用

創業からIPOまで、基本的には黒字経営を続けていたことも、外部資本に頼らずに成長できた要因として大きいです。

IPOをしたのは2015年12月。東証マザーズ上場し創業から15年で上場企業の仲間入りを果たしました。ラクスは自社でサーバーを持たないクラウド事業を中心に複数事業を展開し、2015年12月のIPOで初値147円から、2021年7月までの5年半で株価を20倍に成長させています。

また、2021年3月には東証一部へ市場変更し、より一層注目される企業の1つになりました。

(2)株式会社マネーフォワード

マネーフォワード

▼基本情報
時価総額:4409億3200万円
市場:東証一部
事業概要:Fintech領域での個人向けSaaS形態のサービスと、中小企業の経営とバックオフィス業務の効率化を目的とするクラウド型ERPのサービスプラットフォームを提供。

個人向けの家計簿アプリ「Money Forward ME」で知られる同社ですが、上場前は合計45億円ほどの資金調達を行っています。目立った調達をまとめましたので、調達ハイライトでみていきましょう。

【調達ハイライト】
上場前調達額:約44億円

■シリーズA
2012年12月:2000万円
引受先:マネックスベンチャーズ

マネーフォワードは創業から7ヶ月で最初の資金調達を行いました。引受先のマネックスベンチャーズは、代表の辻氏が創業前に所属していた古巣で、同社ではこの調達をシリーズAとしています。

■シリーズB
2013年10月:5億円
引受先:ジャフコ

2014年1月:5000万円
引受先:TBSイノべーションパートナーズ、三菱UFJキャピタル
■シリーズC
2014年12月:15億円
引受先:ジャフコ、クレディセゾン、ソースネクスト、三井住友海上キャピタル、電通デジタル・ホールディングス、GMO VenturePartners

この資金調達は、代表の辻氏が「各ジャンルのナンバーワンプレイヤーに出資してもらえたことで事業拡大を加速できる」と語ったとおり、各領域でのシナジー効果を期待した調達になります。

例えばクレディセゾンとの提携内容として、セゾン・UCカードの利用明細データをマネーフォワード上に自動保存するサービスの提供が挙げられます。この提携を機に、MFクラウド請求書とクレディセゾンのカード決済の連携や、MFクラウド会計利用者向けの金融商品も開発にも着手しました。

■シリーズD
2015年9月:9.7億円
引受先:SBIホールディングス、静岡銀行、ジャフコ

2015年10月:5.6億円
引受先:三井物産、Fenox Venture Capital、三菱UFJ信託銀行、山口フィナンシャルグループ(山口銀行、北九州銀行、もみじ銀行を傘下に持つ)、東邦銀行

このラウンドでの調達から、多くの金融機関の参入がみられます。引受先のうち、YMFG および東邦銀行とは、フィンテックサービスを共同開発するとともに、銀行ユーザに対してマネーフォワードのサービスを OEM 供給するとしました。事業拡大先を押さえに行く目的での出資であり、会社としては明確な方向性を示した調達といえます。

■シリーズE
2016年9月:8.2億円
引受先:みずほFGおよび三越伊勢丹グループ、みずほFinTechファンド、三越伊勢丹イノベーションズ、Fenox VC、東邦銀行、北洋銀行、群馬銀行、福井銀行、滋賀銀行等
■IPO
2017年9月:東証マザース上場
2021年6月:東証一部へ市場変更

同社のファイナンス施策の特徴として、シリーズB~CあたりまではVCからの調達が中心ですが、シリーズC~Dあたりからは地方銀行や事業会社からの調達が増えていることが挙げられます。

これは、同社が法人向けの販売チャネルとして地方銀行や会計事務所などとの協業を行っていることが背景にあると考えられます。

資本業務提携によって、事業拡大の足元を着実に固めていくファイナンス施策といえますね。

(3)freee株式会社

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▼基本情報
時価総額:3865億3500万円
市場:東証マザーズ
事業概要:小企業を初めとした法人・個人事業主向けの、事務管理を効率化するためのSaaS型クラウドサービスを開発、提供。

SMB向けにSaaSを展開し、非常に高い成長率を誇る日本屈指のSaaS企業であるfreee。同社は国内のSaaS企業でも最大規模となる約161億円を上場前に調達しており、他のスタートアップの平均的な成長スピードよりも2倍近く速いスピードでの成長を実現しました。

そんな同社を調達ハイライトでみていきましょう。

【調達ハイライト】
上場前調達額:約161億円

■シード
2013年6月:5000万円
引受先:DCM Ventures

2012年に、DCM Venturesからシードラウンドで調達を受けたことから、同社の資金調達が開始されます。DCMは投資した会社の多くがIPOをする先見性の高いVCと言われており、投資を受ける段階でかなり注目度が高かったと言えそうです。

その後もDCM Venturesからは何度かフォローアップでの出資を受けています。

■シリーズA
2013年7月:2.7億円
引受先:DCM Ventures、Infinity Ventures
■シリーズB
2014年4月:8億円
引受先:DCM Ventures、Infinity Ventures

2014年9月:6.3億円
引受先:Pavilion Capital、RSPファンド(リクルートホールディングス)

同業他社のマネーフォワードがジャフコから5億円の大型投資を受けたのと同じタイミングで、同社は追加で15億円近くを調達し成長のスピードを落とさないようにしました。この投資により、2012年7月の創業以来約2年で20億円弱を調達したことになりました。

■シリーズC
2015年8月:34.9億円
引受先:DCM Ventures、RSPファンド(リクルートホールディングス)

2015年12月:10億円
引受先:SBIインベストメント

法人向け機能の拡大を目的とし、シリーズCでも大型の資金調達をおこなしました。調達リリースと同日に、「クラウド会計ソフト freee」に経費精算機能を追加し、日本初のモバイル・アプリ付きの経費精算機能をもった会計ソフトとなりました。

■シリーズD
2016年12月:33.5億円
引受先:未来創生ファンド、DCM Ventures、リクルートホールディングス、三井住友トラスト・インベストメント、SBIインベストメント、スパークス・グループ、Salesfoce Ventures、日商エレクトロニクス、日本生命保険相互、ちばぎんキャピタル、Japan Co-Invest

人工知能技術の開発への注力および「クラウドERP」としてのユーザー体験強化を目的に、複数のファンドおよび事業会社を引受先とした当時としては超大型の資金調達を行いました。

2016年当時、freeeは人工知能技術をベースとした自動仕訳機能の開発等、事業の中核となる技術とサービスを確立し、結果としてクラウド型会計ソフトおよび給与計算ソフト市場においてシェアでNo.1となっていました。この資金を、中堅規模法人向けのサービスの強化や税理士・会計事務所向け機能およびサポート体制の強化に当て、さらなる成長に向けて大胆な投資をしていきました。

■シリーズE
2018年8月:65億円
引受先:LINE、Greyhound Capital 三菱UFJ、ライフカード、AMG、ティー・ロー・プライス・ジャパン

IPO前年の8月に、これまでの「業務効率化ツール」から進化し、スモールビジネスがさらに強くスマートに育つための「プラットフォーム」形成のためのサービス開発を目的とした調達を実施しました。

これが上場前最後の調達で、同年7月に決定した新ミッション「スモールビジネスを、世界の主役に。」の実現に向け、LINE株式会社や株式会社三菱UFJ銀行との業務提携を行いました。

■IPO
2019年12月:東証マザーズ上場

超大型の調達を繰り返し、凄まじいスピードで成長してきた同社。特徴としてグローバル投資家の株式保有率が高いことが挙げられます。IPO時のグローバル投資家保有比率は32.3%と、全体の約1/3を占めており、各種連携なども含めて非常に特徴的なファイナンス施策といえるでしょう。

(4)Sansan株式会社

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▼基本情報
時価総額:3850億9600万円
市場:東証一部
事業概要:法人向けに名刺管理SaaS「Sansan」を提供、国内の名刺管理クラウドサービスとしてシェア80%超を誇る。個人向けには名刺管理アプリ「Eight」を展開。

名刺管理SaaSでは圧倒的なシェアを誇る同社。IPO前のラスト・ラウンドとなったシリーズEではバリュエーション1千億円以上のユニコーン規模となり、上場時にはそれを上回る1,425億円という企業価値評価を得ています。

そんなSansanの調達ハイライトをみてみましょう。

【調達ハイライト】
上場前調達額:111億円

■シード
2007年8月:1400万円
引受先:インキュベイトファンド

同社が創立した2007年に、インキュベイトファンドの赤浦氏がSansanの代表取締役の寺田氏と出会い、即決で投資させてほしいという話をしたことからこの投資が生まれました。

■プレシリーズA
2009年6月:5000万円
引受先:サイバーエージェント、リクルート、GMOベンチャーパートナーズ
■シリーズA
2013年4月:5億円
引受先:ニッセイ・キャピタル、Salesfoce Ventures、GMOVP
■シリーズB
2014年5月:14億円
引受先:INCJ、DCM Ventures、環境エネルギー投資、日本経済新聞、GMOVP
■シリーズC
2016年1月:20億円
引受先:DCM Ventures、ニッセイ・キャピタル、Salesfoce Ventures
■シリーズD
2017年7月:42億円
引受先:スパークス、DCM Ventures、Salesfoce Ventures
■シリーズE
2018年12月:30億円
引受先:日本郵政キャピタル、T.Rowe Price Japan Fund、SBIインベストメント、DCM Ventures

継続して資金調達を複数回行ってきたSansanですが、上場前最後の資金調達ラウンドでは、(VC以外に)上場企業の株式を多く保有する投資家からの投資を受けました

例えば日本郵政は、グループのネットワーク・ブランド力等を活用して成長が期待できる会社への出資を行うことにより、国内ベンチャー企業の成長を後押するといった社会性の高い投資家です。こういった社会性の高い投資家からも資金調達を受けていることが特徴です。

■IPO
2019年6月:東証マザーズ上場
2021年1月:東証一部へ市場変更

早い段階で黒字化を達成し、スタートアップのロールモデルとも言える成長を続けてきた同社。大幅にギアを入れようというタイミングでシリーズBの調達を行い、当時はSaaS事業においてはあまり一般的ではなかったCM施策で事業成長を実現するなど、着実ではありつつも思い切りのある経営も特徴的です。

(5)株式会社エス・エム・エス

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▼基本情報
時価総額:3746億5700万円
市場:東証一部
事業概要:人口減少と高齢化という社会課題に対し、メディカルプラットフォーム事業領域と、グローバルキャリア事業領域において解決を目指した事業を多数展開。

2003年の創業以来、高齢社会における社会課題を解決するためのインフラサービスを提供する同社。創業から5年後の2008年には上場を果たしており、5年という短期間のうちでどのようなファイナンス施策があったのかが気になる企業です。

実はエス・エム・エスはエクイティによる調達をほとんど行っておらず、上場前には合計2回の調達で約2億円を調達したのみでした。

■1回目
2005年3月:1.4億円
引受先:みずほキャピタル、りそなキャピタル、アズワン、ジャフコ、安田企業投資、日本アジア投資
■2回目
2005年12月:8000万円
引受先:みずほ証券、エムスリー
■IPO
2008年3月:東証マザーズ上場
2011年12月:東証一部へ市場変更

ほとんどの起業家は自分たちの事業がスケールする前提で事業を始め、早い段階からエクイティによる資金調達を多く行います。エス・エム・エスの場合は、人材領域の高収益事業を構築することで、キャッシュフローを獲得してマーケットインサイトを得つつ事業を広げていったため、自己資本での成長をメインとしてきました。

初めは成長市場の人材領域で多くのキャッシュを生み出し、その後早い段階からのwebサービスの提供などで着実に成長してきたため、盤石なファイナンス施策を打ってきたといえます。

最後に

今回は、国内のSaaS企業時価総額TOP5社の上場前ファイナンス施策についてまとめました。気になる企業があれば、ぜひご自身でも詳細にリサーチしてみてください。会社の成長の背景が見えてきて興味深いと思います。

最後に、弊社では転職前にベンチャー適性がわかる診断サービス「PreVenture」を運営しています。自分のキャリア志向を客観的に確認してみたいと思っている方には非常にお勧めになっていますので、是非試してみてください!

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本日の記事に書いてあったような成長企業を中心に、経営者と直接やりとりさせていただいていますので、志向にあったキャリア支援ができるかと思います!

参考資料


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