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神々の島バリ。なんで私なの?バリの神様のいたずらか?「Street Story」と絡まっていく不思議な物語
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#バリ島

Silver Story 【帰国、それから】#56

Silver Story 【帰国、それから】#56

ユキさんの家に着くとそれからはバタバタでまだ違和感の残った足をかばいながら帰国の支度に取り掛かった。
荷物はさほど多くなかったので、そんなに時間はかからなかった。

これまでをふり返ると本当に不思議な日々で、人の縁(エニシ)を感じる旅だった。
縁がある人、深い絆で結ばれた人は、どんなに離れていても何十年も会えなくても必ず人生が交わり、共に生きていくのかもしれない。
日本で光一さんに出会った時か

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Silver story   #51

Silver story #51

領事館のあるデンパサールは、国際空港があり、そこまで行けばぐっと日本が近くなるように感じる。
ほんの数日前にここに来てすぐにバリの深いところに魅せられた私は、まるでタイムトラベルをしたかのように、今までの自分の体験が一瞬だったような気になっていた。

人に話してもきっと夢でも見たんじゃないと言われるのが関の山だろう。私自身も、説明できるかよくわからない。ただ、光一さんには、お母様のことをちゃん

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Silver Story #48

Silver Story #48

首からかけたカメラの重さが日本での毎日を私に思い出させていた。
確かにここにお世話になって、いや、あの穴みたいなのに落ちてからアレヨアレヨと色んなことが起こっていたから、ホテルに連絡するなど頭の隅にも浮かばなかった。
しかも、持ってきた携帯は、落ちた衝撃で見事に壊れているときたから連絡のしようがない。

ユキさんたちに頼めばよかったがさっきも言ったけどあまりにも事の展開がすごすぎて脳が通常通り

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Silver story # 45

Silver story # 45

うっすらだが全体がオレンジのフィルターがかかったような画像の左上に円の4分の1のようなものが写っていたのだった。どう見ても目玉にしか見えず、私に飛びかかってきたあの時の目玉だと直感でわかった。そして、やはり存在したのだと絶対的確信が湧いてきた。

どう説明していいかわからないが感覚的なものとしか言いようがない。あの時の覇気をその一枚から感じたのだ。
もうこれは、1人で収めることができず、お母様

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silver story #44
「バリ、そして」

silver story #44 「バリ、そして」

私にとって一生のうちで、もう二度と体験することはないであろう激しい1日の次の日は、嘘のように普通の朝だった。
かなりの高揚と疲れとアルコールでいつの間にかベッドに運ばれ朝を迎えている。

本当にあった出来事なのかと疑いたくなるほど穏やかで柔らかい朝だった。
日本では、何を差し置いてもカメラを離さずデーターチェックを常にしていたが、バリに来てからは、私自身が驚くほど二の次、三の次になっている。テ

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Silver story #43

Silver story #43

#43

目を覚ましてくれたのは、日本のそれとは違う鼻からはいってきた異国の香りだった。
私は、バリの食べ物に合う体質なんだと自分でもかなり驚いている。
香りが強い食べ物ばかりでこの国に来る前は、かなり心配していたが、お母様の料理だからか、出されるもの全てが美味しく体にすんなり入っていくので自分でもびっくりしているのだ。

隣にいたはずのユキさんもキッチンでお母様と一緒に並んで楽しそうに料

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silver story  #42

silver story #42

#42
行きと違って帰りは早く家に戻れたように感じた。山登りのそれと同じなのかもしれない。

時間の経過がわからなかったが、家に戻るとすぐに現実を感じた。お腹が空いたのだ。

「何か食べますか?」
顔に出ていたのか、お母様が台所に向かいながら声を出してきた。

みんな無言で家まで帰り、中に入って最初に聞いた言葉だったのでなんだかおかしくなった。
夢や幻、非現実的なものに触れても

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silver story#41[終宴]

silver story#41[終宴]

#41
村長さんの祈りが終りを迎えようとしていたので私は、残りの時間撮れるだけのシャッターを押し続けた。今度は、何の支障もなく思う存分撮ることができた。

男たちの中には、口からヨダレを垂らして一心不乱に祈りを捧げる者もいた。白目をむいて倒れている者もいた。皆が皆、何かしらの影響を受けているようだった。
松明や組み上げられた木々を燃やし高く昇る炎の灯りで全ての男たちは、一つに見えてまるで紅い塊

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silver story #40

silver story #40

街の雑踏。私の居たところ。
ただそれは、四角いカメラのファインダーの中、ファインダー越しに見ていた街の様子だった。

振りかえっても、振りかえっても四角に切り取られた様にしか見えず、時々ただのオレンジに変わったりしてシャッターを切っているような映像になった。
車のクラクション、信号の音、話し声、雑踏の中からかすかに身に覚えのある音が聞こえてきた。その音に集中すると、どこかで聞いた音、音色。

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silver story #39

silver story #39

白い衣装のサリナちゃんは、その衣装が松明のオレンジに染められてまるで火の妖精のようだった。その瞳は、黄金の琥珀の様でキラキラとしていた。空げな眼差しは、ある一点を見つめたままで、まるでそこに誰かがいるかのように、二人で見つめ合って踊っていた。
彼女には何かが見えているのかもしれない。そんな風に思えてきた。

降りそそぐ火の粉の温度とオレンジの光が体に覆

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silver story #37

#37
星たちの瞬きは、日本のそれと違って見えた。空気が澄んでいるせいだろう、ミラーボールのようにキラキラしていて一つ一つが強い光を放っていた。ミルキーウェイのような星の帯がいくつもいくつも重なっているようだった。

その時、ひとすじの一際光る星の帯が流れた。
「あ、流れ星!」
次の瞬間、あたり一面には、高く茂った草が、風に吹かれて波のように揺らめき広い海原のように広がっていて見上げると、そ

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