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文字を読む、言葉に触れるということ


優れた本を読んでいると、おもいっきり殴られるような一文と出逢うことがあります。立ち止まって味わってなおもすばらしいと思えたとき、僕は付箋を貼るようなことをします。

本棚からかつて読んだ本を取り出して、付箋が貼られている部分を開くと、当時はこんな言葉に引っかかっていたんだぁ……って懐かしさを覚えることがあります。でも大抵、よい一文だけれど付箋を貼るほどだろうか? とクエスチョン・マークが浮かびます。

そうです。真にその一文を味わうためには、最初からその本を読み直さなければならないのです。いや読み直したとしても、もう話筋は記憶されているんだから、はじめて読んだときの興奮は戻ってきやしない。

読書は海外旅行みたいだ。僕はお金持ちじゃないから、同じ土地に何度も何度も訪れることはできない。いろいろな国に行ったけれど、もし次に旅するとしたら、まだ一度も行ったことのない場所を選ぶはず。そして旅するときは、再訪できないということを覚悟しながら、なるべくすべての感覚に焼き付けるようにして歩く。

読書もおんなじで、いま出逢ったこの一文は、いまでしか感じられない味がする。文字を読む、言葉に触れるってそういうことなんだ。きっと。

だから「名言集」のような文章や人間には、注意を払わなければなりません。それらはあたかも味わい深い言葉を陳列しているかのように見せかけ、本質を伝え導いてはくれません。

僕は今日、とてもたいせつなことを本から学びました。つまるところ、それはたった一言に集約されます。けれど僕は、そのたった一言に、すべてを収めようとしない。輝きをはなっているのは、文脈のおかげなんだから。

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