ぽにょん

企業分析の講師を国内外・社会人学生問わず業としています。ここでの内容が皆さまとの相乗効…

ぽにょん

企業分析の講師を国内外・社会人学生問わず業としています。ここでの内容が皆さまとの相乗効果で社会の価値向上に資するなら、それを超える喜びはありません。反応・コメント、何なりとお寄せ下さい。

最近の記事

[26] 中国大手デベロッパーが教える「等式」

経営危機が叫ばれて久しい中国大手デベロッパー「E社」の決算書を見ると、1つの特徴が見えてきます。 金利の資産化です。 固定資産等を得るべく借金をした時、その支払金利について費用(損益計算書)でなく資産(貸借対照表)に計上します。 【図表26-1】は、E社の支払金利です。 殆どが、費用として計上されていません。 【図表26-2】から、その主因が中国の不動産業界でなくE社個社にある事も判ります。 ご認識のとおり、金利の資産化は粉飾によく使われます。 ただ、もはやE社が粉飾

    • [25] 覚えるべきたった1つの財務指標

      ROE、流動比率、EVA、…。 無数の財務指標が世に溢れる中「どれも重要と言うから覚えるけど、何か違う」といった声がよく上がります。 これは健全な反応です。 「財務指標は答えに非ず」という財務分析の本質が息づいているからです。 知りたい事(例:強み・弱み)まで辿り着くのに、実際そんなに多くの財務指標は必要とされません。 数多くでなく、1つ。 初めにそれを見る。 そんな財務指標は何でしょうか。 あなたが一番好きな財務指標です。 それで良いのです。 答えが財務指標に無いの

      • [24]「無限ループ」を止めるには

        「実態の調べ方はもういい。財務・非財務の融合も解っている。 知りたいのは収支予想の作り方。 それには実態の調べ方を知らないと…」 この「無限ループ」は世界共通です。 「実態の調べ方」から連想されるSo What感も上述の思いを増幅させるのでしょう。 止める方法があります。 『モデリング』です。 よくある、エクセルを使った貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の「連環スキル」ではありません。 本来明らかにしたかった筈の「ビジネスモデル」について「3つの分ける(セ

        • [23]「これ、お勉強?」と思ったら

          ~利益率、1人当り~円…、背景も十分掴んだ、系統立てた…。 そこまでやらずとも、この種の取り組みに対して、 これ、お勉強? と思った経験はありませんか。 それを避ける手段として、よく「強み・弱み」が挙げられますが、その中身は得てして数的根拠の薄い「空中戦」になりがちです。 あらゆる分析の価値が「将来」への言及により初めて産まれる事は、ご認識のとおりです。 そうした中、財務分析の格言に すべての道は「収支予想」に通ず があります。 「収支」が当期利益や営業キャッシュフロー

        [26] 中国大手デベロッパーが教える「等式」

          [22]「手の動かし方」に迷ったら

          「手が動かなくなる」事があります。 情報をたくさん収集し、数字もいろいろ扱った後でも、それが生じ得るのはご承知のとおりです。 そんな時に、手を動かせ!と言われても、 だから、その「やり方」で迷ってるんだよ! と返すのが本音でしょう。 前回触れた「マッピング」は、一般的な「手を動かす」方法として知られていますが【図表21】の様に財務分析で活用する際、押さえておくと良い点があります。 それは「グラフを混ぜる」事です。 より詳しくは、タグ(tag)化したグラフをマッピングに盛

          [22]「手の動かし方」に迷ったら

          [21] てんこ盛りやスッカスカを防ぐには

          内容が多ければ「てんこ盛り」、少なければ「スッカスカ」と言われる…。 決して珍しくありません。 『経営者・業界・事業・財務諸表』の4章に分ける、初めに『財務諸表』を固める、結論としての『経営者』…。 「前回[20]の内容は既に知ってる」と言っても冒頭の様になる場合は、往々にして以下の「動作」が見られます。 ●『事業』を固めてから『業界』へ移る。『経営者』は最後に着手する。 ●「セクター知見」が最も大事。即ち『業界』を早めに固める。 ● 対象先の特徴が出る『事業』を最も充実

          [21] てんこ盛りやスッカスカを防ぐには

          [20] 業界・事業分析で最も重要なこと

          Cross SWOT, 5 Forces, 3C, PEST, Value Chain, VRIO, ...、数々のフレームワークで形容される「業界・事業分析」ですが、以下の声がよく聞かれます。 ● アウトプットがただのてんこ盛り、と言われる。 ● 財務諸表と繋げる事は知っているが、もう少し全体像を備えたい。 ● 中身が重複するフレームワークが乱立している気がする。 企業を診る「4要素」財務分析に限らず「アクションプラン」に踏み込む事で分析は初めて価値を持つ中、上述の背景に

          [20] 業界・事業分析で最も重要なこと

          [19] 限界利益への接し方

          売上高から変動費(販売数量に連動する費用)を引いた限界利益の「意義」は「収支予想の肝」と言われる事も含め、既に知れ渡っています。 しかし、外部者は、立場上可能な人を除いて、一般に「実際の限界利益」を知る事ができません。 ここで限界利益を「教科書だけの話」にするのかが差別化への分水嶺です。話を絞れば、限界利益を売上高で除した「限界利益率」に、どう向き合うかです。 限界利益率の位置づけ限界利益率は、先だっての『数量・単価 [17]』や『(経営者に追従しない)セグメント分け [

          [19] 限界利益への接し方

          [18] セグメント情報に振り回される!?

          個数ゼロの先も10に上る先もある、区分がしょっちゅう変わる、「その他」が最大の営業利益部門になる、…。 「セグメント情報」は分析に役立つはずなのに…、と言いたいところでしょう。 セグメント情報は「マネジメント・アプローチ(経営者の視点)」に基づいています。分析者の視点とは、名前が異なる以上一致し得えません。 分析者の視点とは「限界利益が産まれるための源泉(強み)」を掴む姿勢です(限界利益の実績値が開示されているか、は関係ありません)。 これは『セグメント情報等の開示に関

          [18] セグメント情報に振り回される!?

          [17]「売上高=数量×単価」と言うけれど

          「売上高を数量・単価に分ける事が重要だ」と言われる一方で、財務分析の実務において「数量・単価」が開示されているケースは稀です。 代わりに「売上高=市場規模×シェア」がよく使われます。業界本などで「規模・シェア」共に、予測を含め把握し易い事が主因でしょう。「全ての道は収支予想に通ず」のモットーにも合います。 ここで再認識すべきなのは、たとえ専門家が示したものでも「予測は推測の域を出ない」という自明の理です。「規模・シェア」の予測値も、推測の域を出ない以上「数量・単価」のそれ

          [17]「売上高=数量×単価」と言うけれど

          [16] 持分法理解のポイント

          マイナー出資、合弁事業、連結外し…、子会社以外の先へ「重要な影響」を与える際に使われる持分法がこれらの多くに絡む中、その「理解」となると以下の様な疑問が出るのも実状です。 a. なぜ配当の受取を利益にしないのか。「持分法による投資利益(持・益)」と二重計上になるからと言うけど、であればそもそも持分法を使わずに単体と同じ「受取配当金(受・配)」にすれば良い。 b. 持分法適用会社(被投資先)は当期黒字なのに、なぜ「持分法による投資損失」が計上されるのか。他に被投資先は無い。

          [16] 持分法理解のポイント

          [15]労働装備率の使い方

          労働装備率は、1人当たりの有形固定資産残高で設備集約度を表します。【図表15-1】は、対象先S社のA・B社との比較による労働装備率の推移です(3社とも実在)。 この図表では、S社の足許における設備増強ぶりが如実に表れていますが、A・B社の労働装備率も世界的なオペレーティングリースの資産化からS社に追いついています。S社の設備集約度は、特段突き抜けていないのです。 そもそも、収益を産む固定資産は設備に限られません。のれん等の無形固定資産もあります。【図表15-2】は3社の「

          [15]労働装備率の使い方

          [14] 総資産回転率の使い方

          「売上高利益率はよく使うけれど、総資産回転率<総資産÷売上高>はROA等の分解で見るぐらいだ」「回転率は算出するだけしかやった事が無い」 今回は、利益率と違って活用されにくい「総資産回転率」がどう使えるのかを見ていきます。 回転率を「変換」する【図表13-3】は、前回の「[13]忘れがちな初期動作」で掲載した、対象先S社のA社・B社との比較による「総資産回転率の推移」です。 総資産回転率を時系列・他社比較する時は、まず「総資産回転期間<総資産 ÷(売上高÷12)>」に変

          [14] 総資産回転率の使い方

          [13]忘れがちな初期動作

          「せっかく労力をかけたのに、実はそこ重要じゃなかった」といった経験はありませんか。その原因の多くに、今回のタイトルが絡んでいます。 財務分析の初期動作で「対象先の財務指標を算出する」のは自然でしょう。【図表13-1】でS社(実在)の「ROA(総資産償却前利益率)」を時系列化してみました。 「T期(直近期)・T-8期に急落」「T-2期・T-13期が最高水準」等の気づきが有り得る中「S社のROAは長期的に高いのか(この期間の平均:10%台)」と聞かれたら【図表13-1】を基に

          [13]忘れがちな初期動作

          [12]フリーキャッシュフロー:原典と実務

          「税引後の、貸付人(Debt Holders)と株主(Equity Holders)に充てられるフリーキャッシュフロー(FCF)は<自由に使えるお金>らしいけれど、Debtの返済は自由じゃないよね」「式がいくつかあるけれど、手間だったり、簡単でも不正確なのは使いたくない」 今回はFCFについて、原典に基づく事で実務に適う捉え方が何なのかを見ていきます。 企業が「自由に使えるお金」なのかFCFは1986年のAmerican Economic Review誌でMichael

          [12]フリーキャッシュフロー:原典と実務

          [11]キャッシュフロー分析の初期動作

          「キャッシュフロー(CF)計算書がBS・PLと絡まない」「償却や減損以外のNon-Cash項目を理解するなんてムリ」「CF分析が重要なのは分かるけど、前段階の<作成>で時間を費やしてしまう」 いずれも、財務分析への真摯な姿勢から出る一般的な感覚です。今回は、CF分析に時間をより使えるための「初期動作」に焦点を当てます。 「下」から始めるCF計算書をBS・PLを絡めて作る時、様式どおり「営業→投資→財務→現預金の増減額」という風に「上」から始めると結構まごつきます。 この

          [11]キャッシュフロー分析の初期動作