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[19] 限界利益への接し方

売上高から変動費(販売数量に連動する費用)を引いた限界利益の「意義」は「収支予想の肝」と言われる事も含め、既に知れ渡っています。

しかし、外部者は、立場上可能な人を除いて、一般に「実際の限界利益」を知る事ができません
ここで限界利益を「教科書だけの話」にするのかが差別化への分水嶺です。話を絞れば、限界利益を売上高で除した「限界利益率」に、どう向き合うかです。

限界利益率の位置づけ

限界利益率は、先だっての『数量・単価 [17]』や『(経営者に追従しない)セグメント分け [18]』と共に、予測限界利益の3要素になります。

【図表19】は、化粧品メーカーS社(実在)を例に限界利益部分を抜粋した収支予想モデルのイメージです。
図中の「赤枠」即ち「実績の(連結)限界利益率」が焦点です。
(説得力ある予測に向けて、実績について取組みます)

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限界利益率のリソース例

各セグメントの限界利益率を推計する材料としては、以下のリソースが挙げられます。

● 業界平均値
全国企業財務諸表分析統計(帝国データバンク)」や「TKC経営指標(TKCグループ)」には、過去10期以上にわたる限界利益率の業界平均値が整備されています。

● 海外法人による公開資料
変動費の典型である「原材料費」に関し、欧州や中国の決算資料で「原材料購入高が公表されている場合があります。一般に注記されている「期末の原材料棚卸高」と絡めれば、以下等式が成り立ちます。

前期末原材料棚卸高+原材料購入高=原材料費+当期末原材料棚卸高
∴ 原材料費=原材料購入高+(前期末原材料棚卸高 - 当期末原材料棚卸高)

在庫評価損益や外注加工費については、その重要度に応じて適宜調整すれば良いでしょう。

● 製造原価明細書(単体)
単体原材料費等が連結限界利益率への参考にならないとすれば、単体の経費(償却等を除く)を従業員数で除した「1人当り経費を目線にします。

対象先に限らず他社の「1人当り経費」から得られた業界の経費水準を睨みながら「逆算」で妥当な限界利益率を推計します

「ソウゾウ」する

ズバリの値を検索できない以上、限界利益率へは「ソウゾウ:想像 & 創造」する姿勢で接する事になります。アート(art)でしょうか。

面白いと思えれば、しめたものです。限界利益率を「アート」する、本当の財務分析はそういう所に関係する気がします。

追 記

「アート(美術・技術・音楽等)」の授業を真面目に取組めば良かった、と思う時があります。当時の先生方も何かを確実に伝えていた筈ですが「下手だから」と、それを汲み取らずにいました。

最近、息子の先生が発行する『美術科だより』を読みました。「当時の先生方もこういう事を伝えたかったのかな」との思いを馳せた一方で、こうした媒体の存在に息子たちが羨ましくなりました。

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