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[16] 持分法理解のポイント

マイナー出資、合弁事業、連結外し…、子会社以外の先へ「重要な影響」を与える際に使われる持分法がこれらの多くに絡む中、その「理解」となると以下の様な疑問が出るのも実状です。

a. なぜ配当の受取を利益にしないのか。「持分法による投資利益(持・益)」と二重計上になるからと言うけど、であればそもそも持分法を使わずに単体と同じ「受取配当金(受・配)」にすれば良い。
b. 持分法適用会社(被投資先)は当期黒字なのに、なぜ「持分法による投資損失」が計上されるのか。他に被投資先は無い。
c. 「強制評価減」はどう扱われるのか。

「単体・連結」に峻別する

財務分析の実務に資する持分法理解のポイントは、現行の会計基準を前提に仕訳化した事象を「単体・連結」に峻別する事です。

【図表16】は、基本取引の仕訳イメージを「発生時・決算時」に大別して「投資元(単体)・連結への修正」に分類した一覧表です(日本基準)。

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1. 発生時
① 持分の増加:持分法固有の論点は無い中、いわゆる「会社分割による合弁事業化」において、切り出される資産・負債の純額より投資が大きい場合に総資産回転率が低下する場合もあります。
② 配当の受取:単体では「受・配」が計上される一方で、連結への修正では「重要な影響」による赤字被投資先からの配当が利益扱いされる事態を防ぐため、単体の「受・配」を「投資」で相殺するのです(a.の答え)。

2. 決算時
① 被投資先の利益計上:いわゆる「持・益」の典型例ですが「持・益」には諸要因が絡むため、出資比率を基とした被投資先当期利益の算出は「概算」に留めるのが財務分析上のおススメです。
② 投資差額の償却、未実現利益の消去:被投資先が黒字でも「持分法による投資損失」が計上された時、これら要因が被投資先当期利益の出資比率分を上回った可能性があります(b.の答え)。
③ 強制評価減:単体では被投資先への投資にも適用される中、連結への修正ではその評価損を一旦消去した後「持・益」で改めて加味する方式が一般に使われます(c.の答え)。

【図表16】の内容を発展させると、営業外損益に「持・益」が、強制評価減に特別損失が属する事から、総資産利益率(ROA)の分子として「営業利益+受取配当金」より「NOPLAT(当期利益+税引後利息)」を使う方がシャープで、この見方は「業況不芳先の連結外し」にも対応できる事が示唆されます(NOPLATについては「[12]フリーキャッシュフロー:原典と実務」で触れています)。
こう言えるのも、仕訳のおかげです。

それは、仕訳でどう表せますか。
本当の財務分析はそういう所に関係する気がします。

追 記

息子から「財務分析って難しい?」と聞かれ「物事について<2つの見方>をするのが基本かな。例えば、おカネを借りる事について<借金が増える>のと<手持ちの現金が増える>という、2つの見方をするんだ」と答えました。

とっさの事とは言え、例がイマイチだったと反省していたら「それ、小学校低学年でも解るわ。イケる!」と返ってきました。

「仕訳にされると、逆に解りにくい」という声をよく聴きます。
このギャップが一体何なのか、根は深そうです。

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