【短編小説】林檎が実る頃【秋が好き】
林檎が実る頃
秋が好きです。もう夏の暑さに怯えなくていいんだなと思えるので。敬二さんがそう仰ったときに、わたしはおもわず「でも、すぐに冬がやってきます」と言ってしまいました。敬二さんは眉毛をハの字にして「そうですね。寒いのはお嫌いですか?」と笑っていました。わたしは余計なことを言ってしまった恥ずかしさから、頬を紅くして小さく頷きました。敬二さんはわたしに外套を羽織らせてくれました。わたしの顔はもう真っ赤っかです。熟れた林檎だってここまで見事な紅色にはならないでしょう