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【超短編小説】それで、続きはいつですか?

 あるクリエイターが、二次創作の長編漫画「未来の僕ら」をアップロードした。今回はその第一話で、主人公とライバルのカップリングが本編最終回後に結ばれるまでを描く予定である。
「未来の僕ら、おもしろかったです!」
「不器用な主人公と素直になれないライバルのすれ違い、今から楽しみです!」
 幸いなことに、様々な感想を頂けた。おそらく過去一の大反響と言ってもいい。そんな感想はほぼ必ず、同じ言葉で締められていた。
「それで、続きはいつですか?」
 クリエイターは比較的すぐに、続きをアップロードした。すれ違った二人がぎくしゃくするのを見て、仲間が心配する様子が描かれている。その様子を見つめる不穏な影に、読者たちはドキドキした。
「二話も面白かったです」
「サイコーでした」
 こういった続き物は、二話目以降からがっくりと閲覧数や感想が減ることが多い。しかし今回も、
「それで、続きはいつですか?」
 と、第三話を楽しみにする声が多く聞こえた。
 クリエイターの胸の奥で何かがチクリと痛んだが、すぐに第三話をアップロードした。読者たちは大盛り上がり。感想欄もハイテンション。しかしクリエイターは上の空。
「読みました。不穏な空気がたまりません。それで続きはいつですか?」
「ところで続きはいつですか? 楽しみです!」
 そう。さすがのクリエイターも気が付いてしまった。
 続きを所望する読者は多いが、書き上げた作品に対してはほとんど何も言ってくれないのだ。続きいつ? 以外の感想もほしいなぁと思ったが、感想が来ないよりはマシだと思いなおす。それに一言二言といえど内容に関しても触れてくれている。しかしさすがに疲れ果ててしまった。クリエイターは簡単なお知らせを投げた。

「未来の僕らの更新ペースを少し落とします。続きを希望する声が多く、その期待に応えようと一気に無理をしすぎました。まだまだ続きますので、のんびり待ってもらえたらうれしいな、と思います……」

 通知を消すのも一つの手かもしれない。クリエイターがそんなことを考えていた矢先、さっそくコメントのお知らせが入る。更新ペースを落とすという通知は読者を多少がっかりさせたかもしれないが、それよりも作者側の体調を気遣うものが多かった。
 しかし、文末はすべて同じ文言であった。

「それで、続きはいつ上がる予定ですか?」

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)