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創作短編集

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私が書いた創作短編をまとめたマガジンです。 今後記事が増えたとき、こちゃこちゃするかもしれないと思ってまとめてみました。
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2023年1月の記事一覧

【短編小説】殺せるものなら、と

「ちょっと男子! 真面目にやって!」  最早名物怒号となってしまった声が案の定響く。野球…

【短編小説】孤独に刃を向ける者

 ノートとペン立てを置くので精一杯なテーブルで、ノアは書き物をするフリをしていた。少し離…

【短編小説】哀悼の義務

 ウサギが死んじゃった、と泣きそうな顔のAが教室に飛び込んできたとき、廊下に溜まっていた…

【短編小説】当たらなかった弾を拾って

「私は、レインがおすすめかな」  中級英語の講義が突如休講になったので、カナエとコトミと…

【短編小説】雑貨屋の傍にて

 ちょっと待っててくれ、と単独行動を取り始めたラスターが戻ってこない。のんびり構えていた…

【超短編小説】斜陽

 扉を強く叩く音がする。  随分と乱暴な来訪者に俺は居留守を決め込んだ。まだ寝ていたい気…

【短編小説】小説の中のワタシ

「どうしよう、ワタシ、高階敬一に見張られているかもしれない」  大真面目な顔のノリコがそんなことを言いだすので、私も少し真剣な面持ちになって彼女の話を聞いた。  スターバックスはフラペチーノの最新作の販売開始日というだけあってバカみたいに混雑していた。普段フラペチーノのフの字にも縁がないような人たちが、気だるそうにスマホを弄って列を作っている。 「とりあえず、これ読んで」  ノリコが取り出した分厚いコピー用紙の束には、時折蛍光ペンで線が引かれていた。私はそれを読み流しながら、

【短編小説】手中の刃

 最近この手の依頼詐称がなかったので、油断していたというのが正直なところだろう。普通、明…

【短編小説】期間限定性能ぶっ壊れ毒舌美人巨乳剣士カトリーヌちゃんが来た

 ぐるりと、辺りを見回したカトリーヌは顔をしかめて思いっきり吐き捨てた。 「ここは戦力が…

【超短編小説】兄の背

 目覚ましのアラームが鳴った瞬間名残惜しく思う。少し泣きそうになったがもうそんな年齢では…

【超短編小説】投稿炎上

 ――ここ数日、我が家の庭にやってくる野良のネコちゃん。我が家の子が食べているキャットフ…

【短編小説】クジラになった同級生

 昔は、みんな色々なものになりたがった。さとるくんはポケモンマスターになると息巻いていた…

【短編小説】哀れなリンゴ売り

 甘いリンゴと書かれた看板を持った男がやってきた。ギルド近くの道路に不定期に現れるリンゴ…

【短編小説】帰郷

 子供の頃の冒険譚なんてたいしたものではないのだが、その日の私たちは地平線の向こう側を目指して延々と自転車をこいでいた(私は荷台に座っているだけだったが)。彼の目には海が広がっていた。水影を携えた彼の薄い蒼の瞳は私のお気に入りだった。  私たちが追い求めた地平線が海に飲まれて白波をざぶさぶと吐き出す様は、まるで長年見知った友人が見るも無惨に変わり果ててしまったような得体の知れない虚無に似ていた。自転車を止めた彼が潮水へ足を踏み出したので私もそれに倣った。彼の脚が鱗に覆われるの