マガジンのカバー画像

創作短編集

304
私が書いた創作短編をまとめたマガジンです。 今後記事が増えたとき、こちゃこちゃするかもしれないと思ってまとめてみました。
運営しているクリエイター

2022年12月の記事一覧

【短編小説】裏社会の年明け

 おそらく、というか確実に親切心からの行動だろう。ラスターは本心から感謝していた。 「ノ…

【超短編小説】また、二人で

 ホットチョコレートを手に「今年もお疲れさま」と笑い合う。些細な変化があったとしても、こ…

【短編小説】燃える家に手をかざす

「みえこ合格おめでとう」という横断幕がむなしく見えてきた。私はおそらく来ないであろう主役…

【短編小説】ネコタレントインタビュー

 YouTubeのチャンネル登録者数百万人突破。今もっとも人気と言えるペットチャンネルの看板猫…

【短編小説】ただのやりとり

 雪だるまが来たのかと思った。  寂れた酒場のカウンターでコインを数えていたコバルトはし…

【超短編小説】N氏の改心

 N氏は膝に乗る猫を撫でながらスマートフォンを操作し、どこかへ電話をかけた。 「お電話あり…

【短編小説】君の好みをまだ知らない

 雑貨屋のテーブルを占拠してあれもこれもと贈り物を選ぶノアを、ラスターは店の外から見ていた。大事な弟妹に聖夜の贈り物といったところだろう。遙か昔――それこそ原初の魔女が現れる前――民が争いに疲弊していた頃、身寄りを失った子供たちにパンを配って歩いた兵士がいた。彼の些細な活動は他者の共感を呼び、パンの他にも菓子や干し肉を配る者が現れた。そして一年で最後の満月の日は休戦とする風習が誕生したのだ。まぁ、後世には「贈り物をする」という部分だけが残ったのだが。  相手が五人も居れば贈り

【超短編小説】ピンクの木

 図工の先生が言いました。 「今日は木を描いてみましょう」  生徒たちはみんな、絵の具で思…

【超短編小説】まずはあなたから

 インターネットが発展した結果、無料でいろいろな人の作品に触れる機会が増えた。創作SNS「…

【超短編小説】思い通りにならない

 ある国の王様は悩んでいた。  国民に税を納めるように命令をしても、誰一人として言うこと…

【短編小説】ふたつの殺人

 ナタージャ・ミストーネという魔術師が殺されたというニュースは瞬く間に各地を駆け巡った。…

【短編小説】絵筆を持っていたかった

 彼は会う度に絵を描いていた。  よれよれのバッグにはいつもスケッチブックと小さなケース…

【超短編小説】血液型占いによると

 血液型占いによると、僕らの相性はあんまりよくないらしい。  女子は意外だねといって笑っ…

【超短編小説】有言実行

 小説家の学校で、教授は生徒たちに問いかけた。 「物書きにとって一番大切なものはなんだと思う?」  チョークで黒板をトントンと叩きながら、教授はぐるりと教室を見渡す。チョークの破片がぱらぱらと落ちたとき、一人の生徒が手を上げた。  教授に名を呼ばれた生徒は元気よく答えを述べた。 「読み手だと思います。読み手がいなければ、小説は完成しません」 「良い答えだ」教授は微笑んだが、彼の答えは正解ではなかったようだ。 「他にあるかね?」  教授は、もう一度チョークで黒板を叩いた。  別