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【超短編小説】血液型占いによると

 血液型占いによると、僕らの相性はあんまりよくないらしい。
 女子は意外だねといって笑っていたけれど僕らは正直あきれかえっていた。色とりどりのランドセルが並ぶ中、時代遅れ(と言っていたのは血液型占いをしてきた女子たちだった)の黒いランドセルを背負っていたつっくんはAB型だったけれど、別に不真面目でも変人でもないし、紺色のランドセルを背負う僕はB型だったけれど、担任の律子先生(A型だと言っていた)とは仲良しだ。
 僕はつっくんと一緒に帰り道を歩いた。血液型占いは三年一組で一番はやっている遊びだ。りなちゃんはB型だからという理由でA型のけいこちゃんと喧嘩をしたし、たけおくんはO型だからという理由でワガママになった(マイペース、の意味をはき違えているとつっくんが言っていた)。
「血液型占いって本当なのかな」
 僕の何気ない一言はつっくんに聞こえていたらしい、つっくんは僕の足が石ころをこつんこつんと蹴る動きを時折観察しながら答えてくれた。
「血液型占いがあるのはニホンだけなんだって」
 ふぅん、と僕は鼻息に音を乗せて答えた。
「当たるのかな」
 僕の足が石ころを蹴り損ねた。石ころは道を変に転がって、用水路にぽちゃんと落ちた。
「当たってる気がするだけだよ。そんなこと言ったら、クラスの大半はマジメないいこになっちゃうよ」
 僕は笑った。つっくんの言う通りだった。僕らの三年一組はやんちゃなクラスで、律子先生はいつもニコニコしながら「静かにしてね」と言う。時々隣のクラスから齋藤先生が走ってきて「うるさいぞー」なんて言う。でも僕はちょっと不安になった。僕らは律子先生が大好きだから、律子先生が静かにしてねって言ったら静かにするけれど、これはマジメってことになるんじゃないかな。僕はつっくんに思った通りのことを言った。つっくんは「あはは」って笑った。
「マジメなコはね、先生に『静かにしてね』って言われなくても静かにするんだよ」
 僕もまた笑ってしまった。二人でわははと笑いながら歩いていたら、女の人がにこにこしながら僕らの方を見ているのに気がついた。女の人はヒモを持っていて、その先には犬が繋がれていた。散歩の途中だったみたい。
 僕らは笑い転げながら、他愛もない話をした。今月のコロコロコミックに話題が移ったとき、僕らは分かれ道にさしかかった。僕の住むアパートは右の道だけど、つっくんのおうちは左の道だ。
「じゃあ、また明日!」と別れた僕らは次の日の朝、「おはよう!」と同時に挨拶をする。血液型占いによると仲の悪い僕らだけれど、昨日も今日もアニメやゲームの話で盛り上がる。
 それはきっと、この先も、変わらないんだろうなと思う。

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)