見出し画像

川端康成『掌の小説』あらすじと感想

新潮文庫 川端康成『掌の小説』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。


『掌の小説』


【目次】


骨拾い
男と女と荷車
日向
弱き器
火に行く彼女
鋸と出産
バッタと鈴虫
時計
指環

金糸雀

写真
白い花


落日
死顔の出来事
屋根の下の貞操
人間の足音

二十年
硝子
お信地蔵
滑り岩
有難う
万歳
胡頽子盗人
玉台
夏の靴

雀の媒酌
子の立場
心中
竜宮の乙姫
処女の祈り
冬近し
霊柩車
一人の幸福
神います
帽子事件
合掌
屋上の金魚
金銭の道
朝の爪

恐しい愛
歴史
馬美人
百合
処女作の祟り
駿河の令嬢
神の骨
夜店の微笑
夫人の探偵
門松を焚く
盲目と少女
母国語の祈祷
故郷
母の眼
三等待合室
叩く子
秋の雷
家庭
時雨の駅
貧者の恋人
笑わぬ男
士族
質屋にて
黒牡丹
日本人アンナ
雪隠成仏
離婚の子
顕微鏡怪談
踊子旅風俗
望遠鏡と電話
鶏と踊子
化粧の天使達
白粉とガソリン
縛られた夫
舞踊靴
楽屋の乳房
眠り癖
雨傘
喧嘩

化粧
妹の着物
死面
舞踊会の夜
眉から
藤の花と苺
秋風の女房
愛犬安産
ざくろ
十七歳
わかめ
小切
さと

五拾銭銀貨
さざん花
紅梅
足袋
かけす
夏と冬
笹舟



秋の雨
手紙
隣人
木の上
乗馬服
かささぎ
不死
月下美人

白馬

めずらしい人
解説 吉村貞司


【あらすじ】


122編と作品数が多すぎるので、一部のみにさせていただく。

「骨拾い」
両親を早くに失った私は、幼い頃から祖父を一人で介護していた。私が16歳の時に祖父が亡くなり、祖父は火葬された…。

「指環」
「伊豆の踊子」の原形をなす話。

「夏の靴」
謎めいた高貴な少女が馬車を追いかけ…。

「弱き器」
砕け散ってしまった観音像を巡る話。


【感想】


全般的に女々しく、いい意味での著者の変態性がそこかしこに現れている。決して本人の言動というのではなく、作品の世界観のようなものについてだ。ここには収録されていないが、『片腕』などはその最たるものだと思うし。
読んでいると全編に流れる時代がかった日常感、貧しさに正直なところうんざりしてくる。あえて具体的には書かないが、いろいろな差別にもうんざりする。そういう時代だったのだと思うので、それはそれで仕方がないのだろう。いい悪いではなく。
そして、心底女性が嫌悪と恐怖の対象なのだろうと感じる。田山花袋や永井荷風などとは、全く違う女性の描き方をしているし。

前半に多い“夢”のような“現実”のような作品は、読んでいて変な感触を感じる。そこかしこに“狂気”をはらんでいて、不穏な影を落としている。
同じ“夢”つながりでも、夏目漱石や内田百閒とも違う感じ。完全に“夢”でもないし、“日常の延長線”のようでいてそうでもないような…。
“狂気”と“美”は表裏一体なのだと思う。この短編集を読んでつくづく感じたことだ。


【余談】


本当は川端康成の『片腕』が読みたかった。ちくま文庫『川端康成集 片腕 文豪怪談傑作選』に収録されているが、公式サイトやほかのオンラインショップをいつ見ても〈在庫なし〉になっている。書店でも取り寄せができなかった。唯一、見つけたのは古本だけ。
決して潔癖症ではないが蔵書は新品が好きなのだ。図書館で借りるのはいいのだけど。
仕方がないな~と、代わりにこの本を購入した。まだ『片腕』を新品で購入することは諦めていない。

短編集とはいえ600ページを超す厚さ3㎝の文庫本は、さすがに読み応えがあった。というより、読み終わるまで時間がかかった。
この短編集は、川端康成がほとんど20代に書いたものが収められているということだ。その十数年後に、「私の歩みはまちがっていた」と断言したらしい。
そうなのか…。凡人にはわからないが。


【リンク】


川端康成『掌の小説』|新潮文庫
川端康成集 片腕 文豪怪談傑作選 | ちくま文庫

よろしければサポートをお願いいたします。 いただいたサポートは記事を投稿するために、ありがたく頂戴せていただきます。 よろしくお願いいたします。