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「わかる」と「おもしろい」の関係
まずはじめに、本日まで定期マガジン「授業やワークショップで使える面白い入試問題」をご愛読頂きましてありがとうございました。
今月でこのマガジンは終了とさせて頂きます。面白入試問題はこれからも個別に発信していきますので、ぜひ引き続きよろしくお願いいたします。
さて、マガジンとしては最終回となりますが、この入試問題は今後の日本の教育を考える上で非常に考えさせられるものです。
今回は2つの中学入試を取り上げます。
しかも男子校の算数の問題と女子校の国語の問題。一見すると全く異なるように思えますが、実は考え方は一緒なんです。
しかし!!それは「こうすれば点数アップ」という夏期講習的な発想の考えではなく、常日頃から心に留めて置くべき学校から受験生へのメッセージなんです。
入試問題
2017年 駒場東邦中学 算数
今まで算数を学んできた中で、実生活において算数の考え方が活かされて感動したり、面白いと感じた出来事について簡潔に説明しなさい
あれ、算数なのに計算がない・・・。ちょっと前に電車の中でよく見る日能研の「■い頭を〇くする」でも取り上げられた有名な問題です。
これ、ぱっと見は簡単なんですけど、実は難しいですね。それは・・・。
じゃ、次にこちら
2021年 フェリス女子学院中学
「わからないこと」があってもそれがおもしろいと感じたあなたの体験を、どのようにおもしろいかわかるように180字以内で書きなさい
この2つの入試問題に共有するのは・・・
そう、「おもしろいと感じた体験(出来事)」という視点ですね。
しかも、テレビとか冗談で面白いと感じたことではなく
駒東の場合だと「算数の考え方が活かされているのに気付い」て面白い
フェリスの場合だと「わからないこと」が分かって面白い
という条件があります。つまり、普段気にも留めなかったことが自分の知っていることと結びついて「わかって」面白いと感じた体験なんですね。
「わかる」ということはどういうことなのか
人が「分かる/理解する」というのは一体どういうことなのでしょうか。
一般に「わかる」という状況を思い浮かべると、何かが閃いた瞬間だと思いますよね。
フェリス女子の国語の問題の課題文である山鳥重先生の『「わかる」とはどういうことか』から考えてみましょう。
脳科学的に言ってしまうと、「わかる」というのはココロの変化であり、感情だそうです。(なんです <− 一応、私も専門)
つまり、「考えるというプロセスがなんらかの形で終結すると、わかった・わからないという比較的はっきりした心の変化」が生じるとされます。
こんな感じです。
脳は「何だろー」 という好奇心(という感情)からスタートして、注意を全力で目の前で起こっている出来事に向け、手や口などの5感を通じて神経系で処理し、すでに知っている事柄(記憶・知識)とマッチングさせるんです。ザックリ言ってしまうと、これが「わかる」とこうことなんですね。
また「わかる」というのは漢字でも「分かつ」と書くように、違いを感じ取るということでもあります。
「わかった」「面白い」と感じるには
面白いと感じた出来事は人から与えられるものではありません。
目の前で起きていることが、自分のアタマのなかにある知識(心像)とピッタリと重なったときに「わかって」面白いとなるのです。
山鳥先生の言葉を借りるならば、
学校ではわからないことは試験問題とか、先生からの質問という形で与えられます。ですが、このように受け身の形で人から与えられた問題(わからないこと)が解けたからといって、知識が自分のものになるわけではありません。本当の意味でのわかる・わからないの区別の能力は人から与えられるものではありません。自分から自発的にわからないことをはっきりさせ、それを自分で解決してゆかないかぎり、自分の能力にはならないのです。
今回ご紹介した2つの中学入試、「面白いと感じたこと」と書いていますが、、裏の意味はどちらも「自分で考え」て「わかった」こと教えてくださいね、という意味だったりするんですね。
昨今大学入試改革が頓挫し、日本の入試、さらには学校教育がなかなか変わらない状況が続いています。
しかし、都市部、特に東京都心部の中学入試は確実に変わってきています。
よく入試は受験生へのラブレターなどど言われたりしますが、今回紹介した駒場東邦やフェリスの入試問題は、受験生に<自分で>考えたことはありますか、という問いかけでもあります。
山鳥先生の指摘されているように、受け身の形で人から与えられた問題(わからないこと)が解けたからといって、知識が自分のものになるわけではありません
形だけの探究活動や知識の詰め込みドリル学習が短期的な点数アップには効果はあるが、長期的に役立たないというのはこういうことなんです。自分の血肉になっていないから、他の状況や問題に応用することができないんですよね(専門用語では<転移>)。
これまでこのマガジンでは授業や研修で学習者の好奇心を搔き立て、
なんでだろう
と思って頂けるヒントをご紹介してきたつもりです。
これからも読者の皆様の教育や研修にお役に立てる情報を書いていきますので、今後ともよろしくお願いいたします!
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