週刊少年松山洋_タイトル_調整

世の中に対する“怒り”を力に変えて

原動力は怒りのパワー

「モノ作りの原動力ってなんですか?」

って聞かれることがあります。

それは弊社の採用面接の場だったり、クリエイターインタビューを受けている時だったり、様々ですが。

こういう時に私はいつもこう答えます。

「私の原動力は“怒り”です」

結構、皆さん、キョトンとされるので、そのあとにちゃんと説明します。

思えば子どもの頃から、気に入らないことばかりでした。

ずっと、親や学校の先生から“世の中は生まれながらにしてみんな平等なんだよ”と聞かされて育ったのに、ある時に“そうではない”ことに気付かされました。

“全然、平等じゃないじゃん。背が高い人もいれば低い人もいる。痩せてる人も太っている人もいる。ブスも美人もブサイクもイケメンも全然平等なんかじゃない。もっと言うと生まれながらにして体が不自由な人だっている。早く走るとか、勉強ができるとか、ある程度は努力や鍛錬で身に着けることができる能力だって厳密に言えば、やはり平等なんかじゃない。”

もっと早い段階で“そうじゃない”と知らされていれば、それ相応の努力を重ねて備えることもできたんじゃないかとすら思いました。

復讐を誓った幼少期

子どもの時にクラスメイトと好きな漫画の話をしている時も、みんなが『キン肉マン』や『北斗の拳』を挙げる中、私だけが『バオー来訪者』や『機械戦士ギルファー』や『ウイングマン』の話をして浮きまくってました。

いくら熱弁しても“あー、あの打ち切りになった気持ち悪い漫画ね”くらいの温度で、全然理解してもらえませんでした。

自分が好きなものが理解してもらえずに悲しかったですね。

そして同時に“怒り”が芽生えていました。

子どもながらに復讐を誓ったものです。

自分がこんなに好きで大切に思っている作品達の面白さは決して間違ってなんかいない。

いつか世の中がこういった作品の面白さを思い知ることにきっとなる。

自分はこういう世の中がまだ気づいていない作品の面白さを体の中にため込んで、いつか将来自分の手でこういった面白さを世に知らしめるんだ!

そんなことばかり考えて大人になりました。

『ジョジョの奇妙な冒険』も『王立宇宙軍』も『魍魎戦記MADARA』も『トップをねらえ!』も『エルデガイン』も『EATER』も『フロンティア』も『ブラインド・フューリー』も、周りが否定すればするほど私の中に「怒り」の力を溜めてくれました。

足りないことを自覚してまた怒る

漫画を自分で描くようになってからは、さらにそれが明確になっていきました。

“なんでこんなに伝えたいこと・表現したいことがあるのに、それをやらせてくれないんだろう。こんなに描きたくて発表したくて仕方がないのに”

どうして、自分を認めてくれないんだろう。

これは今でも思っています。

中学2年生の14歳くらいから30年以上ずっと変わらない思い。

やりたくてやりたくて、伝えたくて伝えたくて、形にしたいのにそれをやらせてもらえない、やらせてくれない。

そんな時にいつも考えていたことは

まだ積み重ねが足りない。

思いが足りない。

行動が足りない。

影響力が足りない。

覚悟と力を示さないと。

結果でそれを見せつけないと。

誰もこっちを向いてなんかくれない。

悔しくて悔しくて、認めてほしくって、日々を仕事ばかりで埋めて積み重ねることで、自分自身に鞭を打っています。

私の原動力は今も“怒り”。

世の中の理不尽に対する“怒り”と、自分自身の力の無さに対する“怒り”を、エネルギーに変えてまたどうすればいいのかを考えて考えて考えて、決定して行動するのです。

*****

さて後半部分はもう少しだけ“怒り”の力が持つ魅力について語りたいと思います。

弊社でかつて開発したゲームソフト『Asura's Wrath アスラズラース』(2012年発売:カプコン)は正に“怒り”をテーマにした物語でありゲームシステムでした。

“怒り”をテーマに据えたゲームソフトがいかにして誕生したのかを懐かしくも語っていきたいと思います。

『Asura's Wrath アスラズラース』誕生秘話

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