
第218号『ゲーム業界の中卒採用』
なかなかインパクトありますよね?ゲーム業界の皆さん?
どうですか?“中卒採用”。
“中途”採用ではありませんよ?“中卒”採用です。
最終学歴が“中学生”という人材を採用するという話です。
え?高卒採用でもなく?中卒?いきなり?
やっぱりそう思います?
えーっと、ね、そうね。
順を追って話しましょう。
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先日、サイバーコネクトツー福岡本社で小学生&中学生(とその保護者)を対象とした会社見学会とフィールドワークという名のセミナーを実施しました。
『目指せ!ゲームクリエイター!iTeens Lab.特別フィールドワーク』というイベントで小学生から中学生の子供達とその保護者の方々総勢40名ほどがサイバーコネクトツー福岡本社に見学に来られたのでセミナーを実施しました。
— 松山洋@チェイサーゲーム (@PIROSHI_CC2) November 18, 2019
みんなゲームクリエイターになって一緒にゲーム作ろうぜ! pic.twitter.com/KH65ABmJ73
親子含めて40名程集まっていただいて会社見学のあとにゲーム業界における基礎知識や職種の説明などをひととおりやった後に、いつも通りに質疑応答を行いました。
もちろん子供たちからは積極的に手が上がることもなく(というか誰一人として手が上がりませんでした)その代わりといっては何ですが、保護者の方からバンバン手が上がって色んな質問をいただいたのでした。
“やっぱり子供の将来のことだから親はそりゃ真剣だよな”
なんて思いながらこちらもひとつひとつの質問に真剣にお答えしていたのですが、ある保護者からこんな質問が飛び出しました。
「採用される人はやはり専門学校や大学卒だと差があるのでしょうか?」
“いえ、少なくとも弊社では特に差は無いですね”
「では合格する人というのはみんな高校を卒業して専門学校か大学に入ってから初めて勉強する人が多いのでしょうか?」
“あー、いえ、実態はそんなことないですね。合格する応募者の大半が実は高校や中学時代から独学でCGやプログラムを学んでいてその根っこの部分から他とは一味違うというか、なんというかまぁハッキリ言ってしまうと早い段階から学んでいる人の方が残酷なほどの力の差を持っていて他の同級生に対して圧倒的な実力差を見せつける形で合格する人が多いですね”
「では専門学校や大学に行かなくてもOK?」
“はい、オッケーですね。実力さえあれば”
「では実力さえあれば中卒でもOKってことですか?」
“えっと……(一瞬考える)あれ?そうですね、全然オッケーですね、むしろこの業界若ければ若いほどいいわけですから。まー確かに社会人経験が全くない中卒ってのはこれから会社内で社会人教育をやっていかなければならなくなるので、多分最初はアルバイト入社で入って先輩達から仕事や社会人としての教育やマナーを学んで、って、アレ?うん、やっぱり中卒でも全く問題ないですね、出来るな、それ。はい、ちょっとこれから社内で業務部や開発部のスタッフと相談してみますね”
まさか保護者からの質問を受けて~の流れで気づかされることになるとは自分でも驚きでした。
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“中卒採用か、ちゃんと考えてみるか”
と、このセミナーが終わったあとに、後日ウチの人事担当者や取締役が集まる定例ミーティングがあったので早速その場で話をしてみました。
“いや、結局のところ採用する時の判断基準ってどれだけ技能があるかってことだからさ、早ければ早いほどいいわけじゃん?現に今もウチには高卒だっているわけだからさ。それを更に年齢下げて『中卒採用開始!』ってうたえばそこそこのニュース性があると思うのよ?いや別にニュースにインパクト性を持たせることが目的ってわけじゃあないからね?ちゃんと実力は吟味するってことだから。そこは極めて大事だよ?ただね、やっぱり今の時代の採用はイコール競争ってことだから、他社との競争に勝つためには人がやらないことをやらないとね。いつも言ってるとは思うけど。ね?うん、で、さ、うん、どう思う?”
と切り出したら
“何とんでもないこと言ってるんですか?あり得ないでしょ?”
と一刀両断されてしまいました。
“え、いや、え?そうかな?別にいいでしょ?中卒だって”
“いや、あのね、社長、ホントに何考えてるんですか?いい加減にしてくださいよ?技術や能力だけで採用を決めているわけではないってことはご存知でしょう?そして知っての通りゲーム開発はチーム開発、みんなでコミュニケーションを図りながら集団で作っていくわけですから。必要なのはむしろ相互理解でしょ?それを年端も行かない中学生って、コミュニケーションを他の大人とまともに図れると思います?それこそ何年も何年も下積みをさせることになってしまいますよ?人の人生を預かって採用を行うんですから軽はずみなことを思いつきで言わないでください”
“え、いや、その、まぁ、別に思いつきってことではないんだけど……”
“そもそも中学生は人間的に未熟過ぎです。本当に子どもですよ?そりゃ例外だってあるでしょうけどそれって何万人に一人の確率ですか?そんなレアケースがあればこちらも例外として対応もしますけど。会社の採用基準を根底から「こうしようぜ!」みたいな言い方するのはやめてください。どうせ(いつも通り)苦労するのは我々なんですから”
“あ、う、あー、えっと、その、はい、いつも、すいません……”
“とりあえず『低年齢層の早期獲得』をテーマにいくつかこちらでも施策を考えてみますので。改めて定例会で現実的なところから話し合っていきましょう。それでいいですね?”
“はい、わかりました、それでお願いします……”
*****
マジか、ここまで徹底的に部下に叱られることになるとは思ってもいませんでしたが、確かにそりゃそーかもな、ちょっと早急すぎたかもな。
けど、人がやらないことをやんないと競争に勝てないってことは事実なんだからコレを足掛かりにちゃんと前に進められるように動いていかなきゃな。
もちろん何でもそうだけど会社ってのはオレひとりで動かしているわけでもなく、みんなでそれこそ役割分担を持ってそれぞれのプロフェッショナルとして仕事をしているわけだからな。
むしろ俺の意見やアイデアに対してあんなにもド正面から真っ二つに斬りつけてくるなんて、実に頼もしいスタッフであり本当にしっかりしてるよな。
いやー良かった良かった!
“なーんてことが、こないだあったのよー”
と、その翌日くらいにたまたま飲んだナンバーナイン小林琢磨に話していたらすっごいテンションで
「まっちゃん!それいーじゃん!ちょっとすぐ俺の部下にLINE送って指示するわ!いいね、中卒採用、言っとくけどこーゆーのは早いモン勝ちだからね?まっちゃん?“タクマにパクられた~”とか泣き言ゆーのは無しだからね?ウチは早いよー?明日ミーティングしてすぐ決めてリリース出すからね!よし、ナンバーナイン中卒採用開始!とかですぐやろう!よし、LINE送った!もうすぐやるよ?こーゆーのは!」
とか言い出したので
“あー、うん、まぁタクマがそれでいいのならいーんじゃない?”
そう伝えた後にグラスを傾けながら頭の中でタクマの部下のアラケンとクドーくんの顔を思い浮かべながら
“(すまん、アラケン、クドーくん、明日の御社の社内ミーティングでタクマがきっと凄いテンションで『中卒採用!』とか言い出すと思うけど、それ、100億パー俺のせいだから、すまん、大丈夫、二人ならきっとタクマの暴走をキチンと止めてくれるって俺は信じてるから)”
心の中でそう呟いて、グラスの酒を飲み干した後に帰って寝ました。
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まとめ、というか今回のオチ。ちょっとなんか後半面白く書いてしまいましたがサイバーコネクトツーでの『低年齢層の早期採用施策』を実施検討していくことは本当です。部下としっかり詰めながらプランを練って固まったらまた改めて発表させていただこうと思います。
とか言いながらこんな記事を書いている間にナンバーナインから『中卒採用開始のお知らせ』なんてリリースが世の中に出ていたらもうアラケンとクドーくんに平謝りするしかないですが。(まぁなんだかんだこの世界はアイデアなんて誰でも思いつくものであって実行するやつが一番賢くて偉いんだから先に動いたんならそれはそれで良いことだと思います。あとさすがにアラケンやクドーくんがミーティングでタクマに撃ち負けることもないとは思ってますけどね)
出たら出たでそれは面白い世の中という事で。
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