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瞳孔散大!平滑筋弛緩

*記事タイトルである『瞳孔散大!平滑筋弛緩』という言葉の意図や意味に辿り着くまでにいくつかの少年漫画を順番に紹介していきます。しばしお付き合いください。

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「七生報国(しちしょうほうこく)」

突然ですが『七生報国(しちしょうほうこく)』という言葉をご存じですか?

たぶん若い人は絶対に知らないと思います。(なんなら私も知らなかったのですよ)

解説しておくと、鎌倉時代末期の武将・楠木正成が足利尊氏との闘いに敗れて自害する際に「命尽きるとも七度生まれ変わりて国に報いん」という言葉を辞世の句として残したことから、『七生報国(しちしょうほうこく)』という4文字がずっと受け継がれてきたようです。

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実は私がこの『七生報国(しちしょうほうこく)』という言葉を初めて知ったのは漫画でした。

かつて少年ジャンプで連載していた漫画『激!極虎一家』(著:宮下あきら 連載:1980~1982年)の最終決戦時に登場したのです。

「七生報国!」
「死して七度生き返り、国に報い、友に報いる」

死んだはずの仲間の墓に雷が落ちて、3人の極道が蘇って主人公たちを助けに来るのですが、その時に叫んだセリフが『七生報国(しちしょうほうこく)』という言葉でした。

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その後に再びこの『七生報国(しちしょうほうこく)』という言葉に出会ったのは少年チャンピオンで連載されていた『覚悟のススメ』(著:山口貴由 連載:1994~1996年)を読んだ時でした。

(正確に言うと、『七生報国(しちしょうほうこく)』という言葉の最初の二文字である『七生』という部分だけだったのですが)

主人公である葉隠覚悟が強化外骨格「零」をまとった時に、頭部に「生」「七」と表記されていて、最初はまったく意味がわかりませんでした。

「生トン?」と読んでたくらいでした。(「七」という文字がトンというマークに見えてしまっていた)

どうやら『七生報国(しちしょうほうこく)』は正確には『國報生七(くこうほうょしちし)』と、昔の日本のように右から読むのが正解だったようです。

だから『覚悟のススメ』の強化外骨格「零」の頭部には「生」「七」という文字が掲げられていたようです。

(強化外骨格「零」の頭部のデザインの中に『七生報国(しちしょうほうこく)』というメッセージが込められていたわけですね)

学生時代の漫画研究同好会のメンバーから「覚悟の頭部のあれは元は『七生報国(しちしょうほうこく)』という言葉の2文字を使っていて、右読みで「七生」と読むんだよ」と言われて(教えてもらって)初めて気づいたのでした。

「あぁ、『七生報国(しちしょうほうこく)』ってアレか、昔ジャンプで読んだ『激!極虎一家』のクライマックスで登場した言葉だ」

『覚悟のススメ』から『激!極虎一家』に繋がるという、まさかの展開ではあったのですが、これがまるっと事実なので仕方がありません。

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「地獄へ落ちろ~ッ!」

なんか、いきなり昔の軍国主義的な言葉からスタートしましたが、別に『激!極虎一家』に限らず、本当にあの頃(昭和の頃)の漫画ってめちゃくちゃな作品が多かったんですよね。

かつて少年ジャンプで連載していた『ブラック・エンジェルズ』(著:平松伸二 連載:1981~1985年)を初めて読んだ時もそうでした。

第一話に登場した女子高生が家で泣いていて股間から血を流している姿を見ても「誰かに股を攻撃された?」くらいの感覚で、最初は全然意味が分からなかったことを覚えています。

なんで覚えているのかというと、その前後の話の流れの意味がまるで繋がらなかったんですね。

その女子高生(妹)の姿を見た兄がユラ~っと鋭い目つきで包丁を握って犯人である悪徳刑事を刺しに行くんですね。

「股から血が出たくらいで殺しに行くの?妹は生きてるのに?別に殺されたわけでも無いのに?」

くらいの感覚にずっと違和感があったんですよ、当時、小学生(10歳)だった少年ぴろしはあまりにも無垢だったので。

で、その違和感をずっと覚えていて、やがて中学生くらいになって性の知識を得たくらいのタイミングになって初めて「そうか、アレは乱暴(レイプ)されていたんだ、なんて悪い刑事なんだ、そりゃ兄貴は包丁持って殺しに向かうよな」という、正しい理解をしたのでした。

平松伸二先生が『ブラック・エンジェルズ』の前に連載されていた『ドーベルマン刑事』もめちゃくちゃでしたね。

主人公の刑事はニュースーパーブラックホークという大型拳銃で44マグナムの弾丸を放って犯人の眉間を撃ち抜いてましたからね。

普通に犯人を射殺していた、ということです。

それくらい凶悪な犯人が毎度登場していた、という展開上の理由もありましたが、むしろそれくらいの派手な展開を当時の読者が望んでいた、という背景的な理由の方が大きかったように感じます。

現在の少年ジャンプからは想像もつかないほど、昭和の頃のジャンプはかなり劇画というか青年誌に近い大人びたドラマ作品が多かったのです。

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かくゆう私自身も昭和の頃に多感な少年時代を過ごした少年でしたので、なんとなく空気的なことも覚えています。

とにかくみんな「スカッとしたい!」という感覚だったんですよね。

だから非常にわかりやすくブレない作品が多かったんです。

ブレないというのは、徹底的というか「悪は悪である」という作品性が多かったのと、その悪を悪として成立させるためか『救われない話』が異常に多かったように思います。

きっとその方が、ブッ殺したときにスカッと出来る!という方程式がド真ん中に存在していたんだと思います。

また、同時に漫画を毎週描かれている作家先生からも、それをコントロールしている当時のジャンプ編集部からも「売れるためならなんだってやってやる!」という執念のような気概を(子どもながらにも)感じていました。

まさに「勝つための覚悟」というやつですね。

現代のように「読んだ読者に与える影響」のことなんか、まるで配慮されていない、本当にギラギラと尖った作品だらけの時代だったのです。

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「瞳孔散大!平滑筋弛緩」

ようやくこの言葉に辿り着きましたが、このセリフはなんの漫画作品に登場したか?ご存じでしょうか。

あの『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦先生の前々作にあたる漫画作品『バオー来訪者』(連載:1984~1985年)に登場したセリフなんです。

たった17話しか掲載されなかった(完結:ジャンプコミックス全2巻)にも関わらず、その類稀なる才能と唯一無二性はこの当時から突出していて、私のような漫画好き少年はたちまちこの作品の魅力に憑りつかれました。

主人公は逃亡者でありながら無敵の化物である『寄生虫バオー』をその身に宿していて、危険が迫ると変身して闘うという異色のヒーロー物語でした。

そのバオーが変身するプロセスが序盤で解説されるのですが、その時に使用されたセリフ(正確にはナレーション)こそが「瞳孔散大!平滑筋弛緩」という言葉だったのです。

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