ゲームソフトの工数見積り④ドラゴンボール編
『ドラゴンボールZ KAKAROT』はストーリー体験と成長を軸としたオープンフィールドRPGでしたので、対戦アクションゲームのような工数見積りとはちょっと意味合いが変わってきます。
RPG(特に本作)ではバトルで敵と闘って成長させるだけではなく、様ざまなフィールド上で探索したり釣りや料理を食べるなど要素が非常に多いのが特徴です。
そうした全ての要素を工数見積りしだすとキリが無いですし(開発時はしっかりと算出しましたが)それら全てをここで公開することは出来ませんので、特に印象的だった部分をピックアップしてお届けします。
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悟空の道着のマークの変遷
孫悟空の道着の胸のマークといえばパッと頭に浮かぶのは?『悟』ですか?それとも『亀』ですか?
本作の制作にあたって開発チームと最初に決めたことは、作中の衣装の変化をとにかく正しく丁寧に実装するということでした。
悟空の道着の胸のマークはそれぞれの物語の中での師匠にあたる人物や流派によってつけられています。
亀仙人のところで修業していた時はもちろん『亀』です。
その後、界王様のところで界王拳や元気玉の修業を行った時に『界王』マークになりました。
そしてナメック星に到着してフリーザと闘った時に『悟』という自分自身の名前を付けるようになりました。
ここまではみんな印象的に覚えているとは思うのですが、悟空の道着の胸のマークが無くなったタイミングをご存知ですか?
実はこれ、セル編の時にはもう胸のマークは無くなっているんです。
当時、開発チームと仕様書を切りながら「たぶんこのタイミングで悟空自身は誰かに教えられて成長するキャラクターでは無くなって、自分自身で強くなっていくということを鳥山明先生が暗にメッセージとして込められたんだろうね」って話してました。
(同時に「まぁたぶんもういちいち描くのがめんどくさいって考えられた可能性の方が高そうだけどね」とも思ってましたが)
また、実は悟空の衣装は胸のマークだけでなく地味にその時々で変化しているのです。
腰の帯紐がハラマキのような形状に変化したり、靴のデザインが少しずつ変わっていたりしています。
それら全ての衣装合わせを『KAKAROT』ではしっかりと再現するために悟空だけでなく全キャラクターの物語の時間軸と衣装の対比表をエクセルで作ってチーム内で共有しましたね。
この細かな衣装の変化とその再現はプレイされたお客様からも好評だったようで、本当に頑張って実装した甲斐がありました。
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ちなみに腰紐や靴などの変化や道着の胸のマークの変化はそんなに大きな変化ではありませんし、大きな印象が変わるわけではありませんでしたので工数に大きな影響はありませんでした。
では、本作において最も工数を必要としたキャラクターは誰だったのでしょう?
『ドラゴンボール』=孫悟空という印象がありますが、(これは実際に開発してみて改めて思い知ったのですが)実は彼は意外と死んでいる時間が長いのとその回数も多いのです。
とはいえ黒髪からスーパーサイヤ人→スーパーサイヤ人2→スーパーサイヤ人3という変化も確かにありますので、相応の工数が必要だったことは事実です。
しかしスーパーサイヤ人3だって変更したのは顔と髪型のみです。(モーションとエフェクトは全部新規で作る必要はあります)
悟空含めて他キャラクター達とも比較にならないほど膨大な工数を必要としたキャラクターを後半部分で紹介したいと思います。
なぜここで後半部分に引っ張るのかというと、開発工数の話だけでなくアフレコ収録の話も同時にしますのでちょっとフルオープン状態では語りにくくなってしまうのです。ご了承いただければと思います。
いつもの通り情報の取り扱いにはご注意ください。(転載禁止です)
では張り切っていきましょう!
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ぶっちぎりの限界工数突破キャラクター!
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