マガジンのカバー画像

伊達酔狂の映画ノート

12
運営しているクリエイター

記事一覧

『止められるか、俺たちを』(2018)

脚本 井上淳一

演出 白石和彌

出演 井浦新、門脇麦、山本浩司、藤原季節

https://www.allcinema.net/cinema/364367

白石和彌作品を、オレは嫌っている。

大体においてバイオレンス・シーンが無駄に長く、いたずらにしつこく、スリルや緊迫感を生むよりは白々とした嫌悪感を呼んでしまう。

冒頭でサディスム・シーンをエンエンと展開する『死刑にいたる病』が、その典

もっとみる

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007)

脚本・演出 吉田大八

出演 佐藤江梨子、永作博美、永瀬正敏

https://www.allcinema.net/cinema/327384

かれこれ20年も昔のトレンディ映画だが、意外に古びていない。基本のドラマと演出がしっかりしているからだろう。女優志願で東京に出たもののサッパリ芽が出ず、草深い田舎の実家に舞い戻ってきた女性の物語。

女性は自分に才能がないのではなく、周りが足を引っ張るか

もっとみる

『零落』(2022)

脚本 倉持裕

演出 竹中直人

出演 斎藤工、趣里、MEGUMI、玉城ティナ

https://www.allcinema.net/cinema/385447

アマプラでは星2.5でレビューゼロ。allcinemaのコメントは二つだけで、どちらかというと不評。気の毒に。そんなに出来の悪い映画とは思えないんだが。

ワリと近年の映画だが、公開当時、評判になったとは聞かない。プロの批評家はどんなふ

もっとみる

『カンパニー・メン』(2010)

演出 ジョン・ウェルズ

出演 ベン・アフレック、トミー・リー・ジョーンズ、ケヴィン・コスナー

https://www.allcinema.net/cinema/340401

アメリカ社会の不況と格差拡大をテーマにした社会派作品。エンタメ要素は少ないから、ヒットは期待できない。よくこんな作品をハリウッドが制作したものだと思う。ベン・アフレック、トミー・リー・ジョーンズらのスターも意気に感じて出

もっとみる

『凌辱された女 リベンジパチンカー・アナザー』(2015)

脚本 友松直之

演出 奥渉

出演 東凛、徳元裕矢、佐藤良洋

https://www.allcinema.net/cinema/355753

いわゆるピンクVの1本である。きちんと劇場公開されたのかどうか。

正直、早送りでおいしい部分だけつまみ食いするつもりだったんだけど、ドラマ・パートも結構おもしろくて結局ほとんど全部観てしまった。戦う女の話は、男にとってもメソメソ女のウザい話よりずっと

もっとみる

『金子文子と朴烈』(2017)

演出 イ・ジュンイク

出演 イ・ジェフン、チェ・ヒソ、山野内扶

https://www.allcinema.net/cinema/366287

金子文子のことは、故・瀬戸内寂聴さんのエッセーで初めて読んだ。大逆事件に連座して死刑を宣告されるが、土壇場で無期に減刑された。すると彼女は、「人の命をオモチャにするな!」と叫んで恩赦状を引き裂いたという。

大逆事件というと、明治時代の幸徳秋水の事件

もっとみる

『クローブヒッチ・キラー』

演出 ダンカン・スキルズ

出演 ディラン・マクダーモット、チャーリー・プラマー、サマンサ・マシス
https://www.allcinema.net/cinema/376442

アンチ・トランプ映画?
米中西部辺りの極めて保守的な中都市が舞台。そこでは信仰する宗教が異なると⎯⎯ていうか、キリスト教徒じゃないと、それだけで差別の対象になる。車の中に落ちていたポルノ写真1枚で、変態扱いされる。

もっとみる

『オフィーリア』

演出 クレア・マッカーシー

出演 デイジー・リドリー、ナオミ・ワッツ、クライヴ・オーウェン

https://www.allcinema.net/cinema/370302

フェミニズム版『ハムレット』

あまりにも有名な古典を、オフィーリアと王妃ガートルードの視点で読み直し。それは言うまでもなく、#MeTooムーブメントに代表される女性の権利意識向上と無関係ではあり得ない。女性の、女性による

もっとみる

『黒蜥蜴」

脚本 新藤兼人

演出 井上梅次

出演 京マチ子、大木実、川口浩、叶順子

1962年 大映

https://www.allcinema.net/cinema/86421

日本浪漫派の死

三島由紀夫版『黒蜥蜴』は、薄田泣菫から三島へと続いた日本浪漫派が産み落とした鬼っ子みたいな作品だ。

日本浪漫派は、侘び寂びだの陰翳礼讃だの物のあわれだの、日本の伝統的美意識とは全く別の美学で成立していた

もっとみる

『こころ』

脚本 猪俣勝人、長谷部慶治

演出 市川崑

出演 森雅之、新珠三千代、三橋達也

1955年日活

https://www.allcinema.net/cinema/136888

漱石『こゝろ』をプラトニックな同性愛文学と見る見方が50年代にもあったのかどうか知らない。しかし、同性愛に対する世間の認知が乏しかった当時に、文豪の名作の隠れた側面に光を当てる試みは、かなり大胆なチャレンジだったこと

もっとみる

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

https://www.allcinema.net/cinema/367638

アンチ・リベラル?
手控えのないバイオレンス描写がタランティーノの作風の一つだとはいえ、この映画は過激すぎやしないか。無断侵入してきたヒッピーの女を、顔がメチャメチャに潰れるまでブラピ扮するスタントマンが殴りつける。

シャロン・テートを殺害したマンソン・ファミリーに対して、タランティーノの怒りがそれほども激しいのだ

もっとみる

『銀平町シネマブルース』

脚本・演出 城定秀夫

出演 小出恵介、さとうほなみ、吹越満

https://www.allcinema.net/cinema/385345

タナダユキや今泉力哉とともに、いま一番胸に響く映画を見せてくれる城定秀夫の22年作。 ピンク映画を撮る時の茶化したようなコメディ・スタイルと違い、じっくり腰を据えて撮っている。しかしどれほど悲惨な話でも、やはり一抹の軽みを失わず、どこか楽天的なのがこの人

もっとみる