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『映画えんとつ町のプペル』感想。挑戦者になれるか

お笑い芸人キングコング西野亮廣氏が製作総指揮・原作・脚本を担当した『映画 えんとつ町のプペル』が12月25日公開になりました。3年前から気になっていた映画がついに公開になるということで、さっそく映画館で鑑賞してきました。


『映画えんとつ町のプペル』感想。構想に8年費やした意味は?

「映画 えんとつ町のプペル」の話をする前に、絵本の話を。

私が「えんとつ町のプペル」映画化の話を聞いたのは2017年12月。『ジェイ・エイブラハム来日セミナー』で、登壇した西野さんが語られていました。話の中で、西野さんは、通常5000冊売れたらヒットしたといえる絵本業界で、なぜ『えんとつ町のプペル』(幻冬舎 2016年10月21日)の絵本が累計部数40万部を超える異例の大ヒットを記録できたのか、ということについて、こんなことを言っていました。

「えんとつ町のプペル」を制作するときに、すでに4冊の絵本を手掛けていた西野さんは、「絵本はせいぜい売れて2、3万冊。もっと多くの人に届けるためには、別のことを考えないといけない」と考えたそうです。

人が物を買うときは「生きていく上で必要か、否か」。たとえば、食事や生活必需品にはお金を払いますよね。しかし、それだけではありません。ほかにもお金を出すところはたくさんあります。たとえば、友達と遊びに行く。彼とデートする。もっと突き詰めると、修学旅行などでは、それほど必要だとは思わないペナントなどにも、意外とお金をかけています。

『体験×おみやげ』が、より力を持つ時代が来る

これはどういうことかというと、「人は作品にはお金は出さないけれど、思い出にはお金を出す」。つまり、『おみやげ』が、思い出を残す(思い出を思い出す)装置として《必要》だからお金を払う、というのです。

絵本がお土産になる! 正直、この話を聞いたときは目からうろこでした。絵本は、本屋さんで買うもので、ターゲットは子ども。時々、子どもの頃を思い出すために絵本を買う大人もいる、くらいの意識だったので。

「じゃあ、そのお土産を欲しくなる体験ってどうなるの?」と思ったら、「絵本の原画を無料でリースして、全国どこでも誰でも僕の絵本の原画展を開催できる」ように、イベントを企画したのです。それも、主催者は「やりたい」と自ら手を上げた人。つまり、もうすでにこの時点で応援者がいっぱいいたのです。

私も、本を作る仕事に携わっているのですが、正直、この発想はなかったです!本は本屋で売るものだと思っていたので。西野さんは「『体験×おみやげ』が、より力を持つ時代が来ると思った。ディズニーランドこそ、世界最高峰の『おみやげ屋さん』だ」と語っていました。ディズニーが体験で、だからこそお土産が売れる。そんな発想で世の中をみたことがなかったので、かなり衝撃を受けました。

ジェイ・エイブラハムさんの講演を目的にいった講演会で、まさか西野亮廣さんに未了されて帰ってくることになるとは!

思えば、あの時からもうすでに「映画 えんとつ町のプペル」のファンづくりは始まっていたんですよね。映画が公開されるまでのワクワク感も含めて、楽しめました。

「絵本」があっての映画ではなく映画化のための絵本作成

「挑戦者を壊して、チャンスを壊して、これをやって何になるのか。僕はこんな世界はドキドキしない。僕が見た未来はこんなんじゃなかった。こんな息苦しい世界を子どもたちに渡せない」(舞台挨拶より/西野さん)

さて、話を映画に戻しましょう。この映画、物語が公開されたのは絵本のほうが先ですが、実はこの絵本は映画化するために作ったものだと西野さんは語っていました。映画化するためには莫大なお金がかかる。いきなり映画をやりたいといっても、なかなか協力してくれる人が集まらない。また、映画が公開された時点で、すでにたくさんのファンを作っておく必要があるから、だからさきに絵本を描いた。たしか、そんな話をされていたんじゃないかと思います。

クラウドファンディングで絵本の資金を集めたのも、お金を集めることが目的ではなく、かかわってくれる人、応援してくれるファンをたくさん作ることが目的だったと聞き、マーケティングセンスがすごすぎると、驚きました。映画を作るために、絵本の大ヒットを狙い、絵本の大ヒットを狙うために、クラウドファンディングをして、クラウドファンディングをするために、吉本男前ランキングに参加して、クラファンのログイン登録の手間を省かせる。相当計算されたプランです。すべて逆算の発想ですね。目的を決めて、達成するためにはいつまでに何をどうしたらいいのか。

「声優」芦田愛菜×窪田正孝をメインキャラに選んだ理由は?

厚い煙に覆われた“えんとつ町”。煙の向こうに“星”があるなんて誰も想像すらしなかった。一年前、この町でただ一人、紙芝居に託して“星”を語っていたブルーノが突然消えてしまい、人々は海の怪物に食べられてしまったと噂した。ブルーノの息子・ルビッチは、学校を辞めてえんとつ掃除屋として家計を助ける。しかしその後も父の教えを守り“星”を信じ続けていたルビッチは町のみんなに嘘つきと後ろ指をさされ、ひとりぼっちになってしまう。そしてハロウィンの夜、彼の前に奇跡が起きた。ゴミから生まれたゴミ人間・プペルが現れ、のけもの同士、二人は友達となる。

これが今回の映画のストーリーです。主演の「プペル」の声を演じるのは窪田正孝さん。「ルビッチ」を演じるのは、芦田愛菜さん。西野さん曰く「キャラクターの声を演じるにあたり、そこに微塵のうそがあってはならない。見ている人にメッセージが届かなくなってしまう。だから、もしも映画と同じシーンになったとき、役者としてではなく素の自分として本当に映画のセリフのような言葉をいう人を選びたかった」と。だからこの2人を主演に選んだとのことでした。

印象に残るシーン、セリフを通して伝えたかったこと

「映画 えんとつ町のプペル」、最初のシーンはまるでディズニーランドのスプラッシュマウンテンやラピュタのワンシーンのようでした。トロッコに乗ってものすごい勢いでトンネルを走り抜け、途中、ラピュタでシータとバズ―が敵に追われているシーンを思い出しました。開始早々、大冒険が始まる映画は、ほかにどんな見せ場を作ってくるのか、ワクワクします!

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この映画の見せ場は、本当にたくさんありますが、その中の1つが高い、高い煙突の上から、光り輝く街の風景を見下ろすところ。しかも、その明かりのともった町が、やわらかく光輝いているのです。まわりが煙突の煙で汚れた家や建物ばかりだからこそ、より一層明るく、神々しくみえるのかもしれません。

「下を見ると揺れるから見るな! 上を見ろ!」

そんな高い煙突に上るシーンで、芦田愛菜ちゃんが声を担当するルビッチが下を見て怖がります。そのときに「下を見ると揺れるから見るな! 上を見ろ!」というがあります。この言葉、映画の中に何度か登場します。

新しいことに挑戦するとき、つい不安なことに目をやりがちです。でも、不安なことばかり見ていると先に進めなくなります。先に進みたかったら、目的地に到達したかったら、不安を見るよりも前を向く。

ストーリーも、たった100分の物語の中で心が成長し、殻を脱ぎ捨てて自ら変わろうとする人もいれば、逆に本性を出してくる人もいます。さきほど書いたように、「映画の中で一切のうそがあってはいけない」と、西野さんが語ったわけがわかりました。声優が、自分自身の感情で演じることによって、物語の中の登場人物に共感できる。

物語の比較的重要なシーンに、オリラジ藤森さんが演じるお調子者キャラが出てきますが、それがまたいい感じでゆるーく場をあたためてくれるんです。西野さんと藤森さんの仲の良さが伝わってくる演出だなと感じました。

私はこの映画の中でたくさん好きなシーンやセリフがあったのですが、残念なことに途中からコンタクトの調子が悪くなり、おかげで目が痛くなり、後半から映画どころじゃなくなってきてしまったのです!

映画を見て泣けるのか、目が痛くて泣けるのか。もうわからないくらい目が痛かった!どのシーンも大好きでしたが、やはり一番よかったのはラストシーン。コンタクトを外したためほとんど見えていなかったのですが、片目で見ても、とても印象に残るシーンでした。

もう1つ、映画を見ながら「映画や絵本を描くということは、描いて終わり」ではなく、描いたものを誰にどうやってとどけるのか、そのためには何をしたらいいのか、そこが大事なんだと、改めて感じました。「いい作品を作れば売れる」ではなく、自分たちで手売りをしてでも届ける。ただ手売りだけだと限られているので、そこは応援してもらう、ファンを集める仕組みが必要。そこまでやるからこそ、多くの人の心を動かせるようなものができるのかもしれません。

一緒に映画を見に行った子どもたちの反応は?

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今回、「映画 えんとつ町のプペル」は、子どもたちにも見せた方がいい映画だろうとの思いから、長男と次女、次男と一緒に行くことにしました。長男は高校生なので一緒にくることはないかと思ったのですが、映画好きなので見たいとのこと。私も「夢はなにもない」と語る長男には、みておいたほうがいい映画だと思うので、来てくれてよかったと思います。長女は、友達といくのかゲームがしたいのか、来ませんでした。

長男ですが、まだ詳しい感想は聞いていないのですが、「もう一度見たくなった」と話していることから、思うところはあったのでしょう。次男は「何度も涙が出たよ」と教えてくれました。自分が小学生や高校生だったら、どんな視点でこの映画を見たのかな。小学生だったら、ルビッチに感情移入して、高校生だったら町の人や、ルビッチの友達のように「夢を追うな。現実を見ろ」という言葉と、ルビッチとのはざまで揺れ動くかな。大人になった今は、ストーリー展開やアニメーション、映画の世界観、マーケティングなど、ついいろんなことを考えて、物語に集中しきれていなかったのだけど。映画は、制作の舞台裏も含めて1つの作品なんだなと、改めて感じました。

もう一度見たい「映画 えんとつ町のプペル」

本当はパンフレットが欲しかったのですが、あいにく劇場にはおいてなかったようで、替えませんでした。残念。パンフレットを読んで、映画の隅々まで理解して、気づかなかった名シーンなども発見して、それでもって、もう一度改めて見てみたいと思います。

今度、「映画 えんとつ町のプペル」をコミュニティービジネスの面から考えてみたいと思います。私一人では大変なので、コミュニティービジネスを専門にしている友人の力を借りて――。


明日は、沖縄の首里城焼失について書く予定です。もしよかったらまた遊びに来てください。



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