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歩きんぼ
2022年12月17日 21:51
町の底に凝った靄は、ある部分がまとまりを帯びて濃くなったと思えば、薄らいで離れたり、そんな風にして漂っていたが、そこに突如強い光が射し、絹のようだった靄が俄に粒立った中を車が貫いた。靄は素早く揺れ、渦を巻いて千切れたが、暫くするとまた浮かびあがるようにして濃さを改め、その薄片が粘りながら融合するのだった。
2022年12月16日 08:21
夜の空に閃光が走って、あれは天狗星。深山へ下りて人界に紛れようと、嘴鋭く、大目玉を見開いて、背中の翼は紫のゆらめきを僅かに帯び、無数の松の影の間を飛び抜く姿は妖獣の類。狗か鳥か、混じりものか、怖じ気か。
2022年12月13日 21:59
マッチを擦ると暗闇の部屋に燐光が走り、どこから吹くのか風に焔がぼぼぼと鳴った。その橙のほのめきに手をかざし、もう軸に延びはじめた焔を蝋燭へ近づけて、つと火がうつると、部屋がぼうっと朧に浮かびあがった。闇に紛れた場景は、焔に潤んで、ひそやかに震えていた。
2022年12月13日 21:28
微細な振動を有したそれらは、寄り集まることで模様を呈しはじめる。その一つ一つは無意識的でありながらも、巨大な全体なる一塊は、連なりあった肉体に甚だしい唯一の頑な精神を有し、ただ直進する。しかし、その精神の中心は不気味に空洞で、同時に高圧で、それ故もはや止まる術を知らずに拍車がかかる。
2022年12月2日 10:25
空から爛れた手が伸びて人の世を猛火が忽ちに焼く土の上に寝そべる躰と躰累々と渦高く重なる魂此処も彼処も此方も彼方も風に舞う灰は大切な人時が流れるなら尚強く愚かなる世に終末の鶴