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2022年12月の記事一覧

心象風景 / 詩

心象風景 / 詩

町の底に凝った靄は、

ある部分がまとまりを帯びて濃くなったと思えば、

薄らいで離れたり、

そんな風にして漂っていたが、

そこに突如強い光が射し、

絹のようだった靄が俄に粒立った中を車が貫いた。

靄は素早く揺れ、渦を巻いて千切れたが、

暫くするとまた浮かびあがるようにして濃さを改め、

その薄片が粘りながら融合するのだった。

天狗星 / 詩

天狗星 / 詩

夜の空に閃光が走って、あれは天狗星。
深山へ下りて人界に紛れようと、
嘴鋭く、
大目玉を見開いて、
背中の翼は紫のゆらめきを僅かに帯び、
無数の松の影の間を飛び抜く姿は妖獣の類。
狗か鳥か、混じりものか、怖じ気か。

暗い部屋 / 詩

暗い部屋 / 詩

マッチを擦ると暗闇の部屋に燐光が走り、

どこから吹くのか風に焔がぼぼぼと鳴った。

その橙のほのめきに手をかざし、

もう軸に延びはじめた焔を蝋燭へ近づけて、

つと火がうつると、

部屋がぼうっと朧に浮かびあがった。

闇に紛れた場景は、

焔に潤んで、

ひそやかに震えていた。

多きもの / 詩

多きもの / 詩

微細な振動を有したそれらは、

寄り集まることで模様を呈しはじめる。

その一つ一つは無意識的でありながらも、

巨大な全体なる一塊は、

連なりあった肉体に甚だしい唯一の頑な精神を有し、

ただ直進する。

しかし、その精神の中心は不気味に空洞で、

同時に高圧で、

それ故もはや止まる術を知らずに拍車がかかる。

愚かなる世 / 詩

愚かなる世 / 詩

空から爛れた手が伸びて
人の世を猛火が忽ちに焼く
土の上に寝そべる躰と躰
累々と渦高く重なる魂
此処も彼処も此方も彼方も
風に舞う灰は大切な人
時が流れるなら尚強く
愚かなる世に終末の鶴