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エッセイ | 盗んだチャリで走り出す | 今週のありがとう❤️


 ずっとずっと前のはなし。
 むかし私の地元から東京まで、私鉄一本で乗り換えなしで行けた。

 かなり前のある時、友人がこんな話を聞かせてくれた。


 その友人は高校生の頃、家族みんなで電車で行った。
 家族みんな一緒だったから、友人は財布を持っていなかった。
 しかし、帰りの電車に友人だけ乗り遅れてしまった。友人1人だけホームに残して、無情にも電車が発車してしまった。離ればなれになってしまった。

 当時、携帯電話は普及していなかったから、家族とは連絡がとれない。もしかしたら、家族はとなりの駅で待っているかもしれない。いや、きっとここに戻ってくるはずだ。

 いろいろ考えながら、その場で待った。しかし、数時間待ち続けても、家族は友人のもとへは戻ってこなかった。

 困った私の友人は、駅を出た。線路沿いの道をたどって、家のある方向へ歩き出した。その途中、鍵のかかっていない自転車を見つけた。
 彼はその自転車に乗って、100キロ先の自宅になんとかたどり着くことができた。


 実際にはもっと短く、友人が笑いながら語るのを聞いて、私も「あはは」と笑った。もちろん、鍵のかかっていないボロなチャリだったとはいえ、持ち主が困ったかもしれない。けれども、話として面白かったから、その時は笑うだけだった。


 あとになって思えば、いろいろ友人の話には矛盾がある。
 切符を家族に渡していたのなら、どうやって駅の外へ出られたの?
 電車に乗れば確かに一本で行き来出来るけど、実際には何ヵ所か線路は枝分かれしているし、人が通れない橋がかかっているところも多いし。
 交番かどこかへ相談できたんじゃない?etc…


 友人は尾崎豊が好きだったから、作り話だったのかもしれない。
 私はもう、彼の連絡先も知らないし、万が一どこかでばったり出会ったとしても、この話について語ることはないと思う。

 ホントでもウソでも、もうどちらでもいい。ただ、元気にしていてさえくれれば。

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