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欲望が愛に変わるまで



作者の言葉

 以下に記すことは、友人から聞いた実話をもとにしている。
 彼は他の仲間からは、白い目で見られているが、私にとっては愛すべき人間である。
 「何がそんなに愛すべき人なんだい?ただ、愛欲に飢えた男ではないか!」
 そんな非難の声も当然起こりうるだろう。しかし、それでも私は彼のことを人間味あふれる奴だと心の底から思っている。
 
 こんな前置きなど、読んで頂ければ不要だと思いつつ、書いてしまった。
 書いてしまったものは、そのまま残すのが私の主義だ。判断は読者にゆだねよう。
 では本題に移ろう。


(1) 孤独と社交性

 僕は疲れきっていた。人を信じることができなかったから。人に心があるなんて思いこむことでつらくなるのだから、いっそのこと、人に心なんかないと思ったほうがきっと楽なのだろう。

 言いたいことを言うのではなく、常に相手が喜ぶであろう言葉を吐いておけば、心なんていらない。それで余計な煩わしいことを回避できるならば、それでよい。とことん機械的な言葉を発して、とことん人を「モノ」として扱えば、心に波風がたつことはない。そうやって生きていれば、人に囲まれていたって、孤独を貫くことができる。表面上は社交的な人間だと思われつつ、心を閉ざして生きていけばいい。孤独に生きるためには、見かけ上の社交性は必要なのだ。


(2) 週末

 金曜日の仕事が終わった。最近、週末に雨が降ることが多く、なかなか遠出できなかった。明日は久々に晴れる予報が出ている。

 心にモヤモヤとした雲がおおっているときには、体を動かすに限る。溜め込んだ欲望を放出すれば、きっと心は軽くなる。


(3) 写真

「ご予約ですか?」
「いいえ」
「そうですか。お写真からですね。どうぞこちらへ」

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