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【可愛い歯への想い】松本良太 インタビュー


2024年2月21日(水) – 3月3日(日) の期間にピカレスクギャラリーで松本良太 個展「陶器の “不思議生物” 」を開催しています。

今回は、松本良太さんにご自身のことや制作エピソード、今回展示される作品についてインタビューしました。ぜひお楽しみください。


ー 自己紹介をお願いします。

岐阜県中津川市で陶芸をしています。
動物をモチーフにした置物を制作していますが、最近は空想の生き物も制作しています。ユニークで可愛い作品を作ることをモットーにしています。

ピカレスクギャラリーさんで個展を開催するのは2回目になります。
前回よりも出品する作品数が増えています。短い期間ですがよろしくお願いいたします。

ー 現在の作品の世界観が生まれたきっかけを教えてください。

大学生の頃に京都の美術館を授業で訪問した時、狩野山雪の猿猴図と偶然出会いました。その水墨画に描かれていたお猿さんが何とも言えない可愛さで、とても驚き強い影響を受けました。

「猿猴図」自体は多くの作家が描いているのですが、私は狩野山雪の猿猴図が一番可愛いと思います。

大学卒業後、猿の干支置物を作る機会があったのですが、デザインで悩んでいた時、昔 美術館で買った猿猴図のポストカードが出てきたんです。をの空気感にヒントをもらい猿を制作したのが、今の作風が誕生した最初のきっかけかもしれません。
現在も、狩野山雪が描いた猿猴図に私は強い影響を受けており、自身の作品の一部は猿猴図に描かれている猿の顔に似ているものもあるかもしれません。

名古屋の東山動物園などに行き、実際の動物の写真を撮影し資料を作り、それをもとに作品を作るパターンもあります。

フェデリコ・ボナルディというイタリアの陶芸家からも影響を受けているかなと思います。

ー現在使用している素材で作品を作る理由を教えてください。

元々、父が陶芸家で自宅には材料や器材が揃っていました。

子どもの頃は絵などの平面表現に興味があり、陶芸には関心がありませんでした。大学時代はイラスト制作に取り組み、卒業後はデザイン関係の仕事を始めました。

ですがその後 紆余曲折あり仕事を辞め次に何をしようか考えていた折、私の父から、父と父の知り合いが共同で出展しているイベントのブースの片隅に作品を出品してみないかと声をかけられました。

そのイベントで、作品の作り方や販売のコツを父の知り合いから教わりました。それまで陶器作品を作ったことも無かったのですが、それがきっかけとなり陶芸家としての活動がスタートしました。

実はもともと構図を考えたり、立体感をどう出すか、色合いをどうするなど、絵の制作で悩むことが多く苦手意識が強かったんです。ですが粘土なら何も考えずに直感的に作れるので、自分にあっていると活動をスタートしてから気づき、今に至ります。

特に陶芸は、化粧土でザラっとした質感を出したり、釉薬でテカリを出したり、表現できる素材感のバリエーションが多いのは大きな利点だと思っています。

ー 普段、何からインスピレーションを受けていますか?

漫画やゲーム、プラモデル、他の作家さんの投稿する写真や動画からインスピレーションを受けます。住んでいる場所が陶芸の産地に近いので陶磁器を取り扱っている美術館やお店、他の作家さんの個展やグループ展を見学しています。

また毎年、母校の名古屋造形大学で卒展を開催しているので見学に行っています。学生さんが制作する作品は勢いがあって尖ってもいるので驚きやインスピレーションを受けます。

ー 影響を受けたアーティストや、作品はありますか?

影響を受けたアーティストは先ほど紹介した狩野山雪の猿侯図です。水墨画で描かれた猿は現代にも通用する可愛さがあります。

一撃殺虫ホイホイさん」という短編漫画からは、デザイン面での影響を受けました。作中に登場する人型ロボットのデフォルメがすごくうまくて、勉強になってます。

ゲームでは「風来のシレン」に影響を受けたと思います。ゲーム内に登場する敵のモンスターがすごく可愛くデフォルメされていて、強く印象に残っています。ゲームは小学生時代から大好きで、この点も作風に影響を与えていると思います。漫画やゲームを見る際には、立体物をどうデフォルメしているのか、どうデザインしているのかという点に注目しています。

遊戯王OCG(オフシャルカードゲーム)からも影響を受けています。高校生時代で出会い、非常に熱中になっていた時期があり、モンスターのデザインやイラストも夢中で見て楽しんでました。遊戯王OCGにはカッコいいモンスター、可愛いモンスター、気持ち悪いモンスターなどのイラストが描かれています。

あまりにもハマりすぎて、受験勉強に集中することができませんでした。大会出場するぞとなると、流行りのカードを押さえたり新しく発表されるルールに合わせて準備をしたり、出費がかさみ仕事にも支障が出て、制作に集中できなくなるので今は距離を置いています。
ですが、今までも新しいカードが出た時は、つい癖で調べてしまいます(笑)。今思うと遊びながらデザインの勉強ができたと思います。

けどやっぱり、距離を置かなきゃなと思いますね。奥が深い分、またハマってしまったらやばいぞと注意しています。

イベントに出展すると「ジブリ」や「ポケモン」みたいと言われることはありますが、この辺りについては無意識に影響を受けているのかなと思います。それ以外にも、日本のアニメーション表現が今の造形の表現と通づるところも大きいかもしれません。

ー制作で苦労するのはどんなところですか?

陶芸は、スケジュール管理や制作計画を大事にしながら進める必要があるため、その部分にはとても気を使います。

まず、陶器を焼くために窯を炊いてから、焼き上がった陶器を冷ますのに約3日かかります。また陶器作品で絵の具的な役割を果たす釉薬は、焼く前と焼いた後で色が大きく変わります。色の変化を想像しながら絵付けをするのも大変ですね。

その分、形を作っている時は、目に見えて結果がわかるので純粋に楽しめる制作工程です。

ー今回の個展でこだわったポイントをお聞かせください

今回の個展作品は、化粧土塗を細かく描き分けつつ、全体に塗って制作しています。

普段の作品は暗めの色が多いため、今回は明るい色を用いて華やかな雰囲気を演出したり、またコントラストをくっきりしサイケデリックな見栄えにするなど、カラフルなものに挑戦しようと考え色々実験した結果、今回の個展の作品群が誕生しました。

塗り重ねる際には大体2~3回ぐらい丁寧に塗らなければ、色が綺麗に出ないので苦労しました。ですがその分、カラフルで不思議な雰囲気が生まれたのではと思っています。

ー ご出展いただく作品のコンセプトを教えていただけますか?

「ミズイロツノサンショウウオ」

今回のメインビジュアルの作品です。
青いボディと黒い角がチャームポイントです。背中の茶色の部分は呼吸器官という設定です。ミズイロツノサンショウウオの名前の由来は現実にいそうなサンショウの名前にしてみたいと思い名付けました。
ミズイロツノサンショウウオは使用する原料に少し苦労した作品で制作した時期によって雰囲気が微妙に変わります。

「モドキリン」


今回の個展に向けて制作した作品です。
元々は純粋なキリンを制作つもりでしたが、制作している内に別の生物になりました。名前の由来はモドキとキリンを組み合わせました。モドキリンの模様はキリンをイメージして化粧土を塗りました。化粧土を細く塗り分ける事は思った以上に大変でしたが、塗り分ける作業は楽しかったです。

「ジャコウウシ」


今回の個展に向けて制作した作品です。
ジャコウウシは現実に存在する生き物で自分なりにアレンジして制作しました。現実のジャコウウシは北アメリカ北部やグリーンランドなどの寒い地域に生息しているそうです。今回は毛皮を服のように着ている感じにアレンジしてみました。
模様は3色の化粧度をボーダー柄にして塗り分けてみました。マットな質感に仕上がった化粧土のボーダー柄は個人的にも気に入ったので、他の作品にも取り入れています。ぜひ会場で探してみてください。

「ブルードン」

釉薬はいつも使っているものなのですが、ベースの土の色を変えてみたんです。いつもの釉薬と土の組み合わせを変えることで、こんな表現になるんだと嬉しかったです。

偶然プラスチックっぽい質感になったのですが、個人的に気に入っています。プラスチックというと、人によっては安っぽいイメージを持つかもしれません。私は逆に、そのケミカルなチープ感に魅力を覚えています。

私にとって、ウルトラマンや怪獣のソフトビニール人形特有のプラスチック風の質感は、子どもの頃に遊んでいたおもちゃを思い出させる、ノスタルジックな質感なのかもしれません。

「ゴルドン」

全身を金で塗ったメタリック系の釉薬の作品です。極端なカラーリング、質感が好きなんですね。

「イッカク君」

この作品は、実は「ゴルドン」と同じ釉薬を使っていますが、ベースの土が違うので質感がだいぶ変わっています。同じ土と釉薬の組み合わせでも、釉薬の厚みによっても風合いが変化するので奥が深く面白いです。

ー特徴的な「歯」どのように生まれたのでしょう?

地元の陶芸祭りで発表した「怪獣」という作品の制作時に「こういう歯を埋め込んでみたら面白いかな」と思って、軽い気持ちで埋め込んでみたのが最初のきっかけです。

その後いろいろ試行錯誤して、丸みを帯びた歯を意識して作るようになりました。尖らせると、けっこう獰猛な感じになるんですね。怖さよりも可愛さを出したいので、歯はあえて丸っこく仕上げています。
サイズも気にしていて、小さすぎると邪悪さや不気味さが際立ってしまうので、そうならないよう注意しています。

ほどよいキャッチーさと可愛さが表現できたらと思っています。

ーこれからどんな作品を作りたいですか?

作りたい作品はたくさんあります。既存のシリーズ作品を拡張していきたいです。
他には動物だけではなく人間をモチーフにした作品を作りたいと思っています。また普段は手練りで作品を作っているのですが鋳込み(いこみ)で作品を作ってみたいと思います。

ただ鋳込みは知識がまったくないので勉強に時間がかかると思いますが面白そうなのでいつか鋳込み作品を作ってみたいと思います。

ー鋳込みについて詳しく教えてください

鋳込みとは、泥漿(でいしょう)というドロドロの泥のようなものを石膏型に流し込み、焼いて陶器になった作品を型から出す、という制作手法です。

鋳込み技法を用いると、シャープなデザインの作品を作れるのではと期待しています。鋳込み絵作られた陶器の食器を見るととても薄く、モダンで現代的な雰囲気を持っている印象です。想像以上に細やかな表現をなされている作家さんもいらっしゃり、手捻りとはことなる造形ができるのではと思い、チャレンジしたいなと思っています。まずは勉強ですね。

ー お客さま、ご来場予定の皆さまにメッセージをお願いします。


この度はピカレスクギャラリーさんで2回目の個展の開催となりました。前回よりも広い部屋で開催をしています。作品数も前よりも増えています。

東京で作品を発表するときは小さい作品が多いですが、今回は大きめの作品もあります。今回個展用に制作した作品はカラフルな作品が多いと思います。

既存の作品もありますので是非、ピカレスクギャラリーさんにお越しください。

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松本良太 個展「陶器の “不思議生物” 」


〈会期〉2024年2月21日(水) – 3月3日(日)

〈詳細〉https://picaresquejpn.com/ryotamatsumoto_exhibition_2024/

〈松本良太 公式SNS〉
X(旧Twitter) https://twitter.com/ryouta_pottery
Instagram https://www.instagram.com/ryouta.ma/
HP https://touboukamimakino.com/

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【基本営業日時】
*営業 水 - 日・祝 11:00 - 18:00
*定休 毎週月火
*会場 Picaresque Gallery
*住所 東京都渋谷区代々木4-54-7
*電話 070-5273-9561

■開催中&過去に開催した展示一覧
https://picaresquejpn.com/category/information/

■開催&開催予定の展示一覧
https://picaresquejpn.com/exhibition-calendar/

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