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【英論抄読】股関節骨折後の膝の硬直

▼ 文献情報 と 抄録和訳

大腿骨骨折手術後の膝の硬直に対する修正Judet式大腿四頭筋形成術+膝蓋骨牽引術の検討

Shen Z, Deng Y, Peng A, Zhang Y. Modified Judet's quadricepsplasty plus patellar traction for knee stiffness after femoral fracture surgery. Int Orthop. 2021 May;45(5):1137-1145.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

✅前提知識
大腿骨骨折後の膝硬直
外傷後や術後の膝のこわばりは、整形外科の合併症の中でも治療が困難なものの一つである。
大腿骨軸部骨折の副作用としての膝関節硬直のメカニズムの根底には、大腿四頭筋の線維化と拘縮がある。大腿骨前面を直接通過する中間広筋が主な線維化部位である。この部位の線維化は、正常な膝関節屈曲のメカニズムを阻害する。

[背景]
大腿骨骨折後の膝関節硬直に対するmodified Judet quadricepsplasty(MJ)と独自に考案した膝蓋骨牽引術の臨床効果を検証する。

[方法]
2014年5月から2017年1月までに、大腿骨骨折後の膝関節硬直患者21名に対して、筆者が考案した膝蓋骨牽引を併用したmodified Judet quadricepsplastyを施行した臨床データをレトロスペクティブに検討した。再手術時の年齢は20~57歳(36±12歳)であった。骨折固定から大腿四頭筋形成術までの期間は5~23(15±5)カ月、経過観察期間は11~32(18±6)カ月であった。術前、術中、術後、最終フォローアップの可動域(ROM)、全牽引時間、合併症を評価した。膝関節機能はJudetの分類法に従って評価した。

[結果]
膝関節ROMは術前5~60(36±13)°、MJ後30~80(53±13)°(0~30(17±10)の増加)であったが、術後は0~30(17±10)の増加であった(p < 0.05)。膝蓋骨の牽引期間は10~14日(11±2)であった。牽引装置除去後の膝関節ROMは90~100(92±3)°であり、関節破壊後のROMと比較して10~65(39~14)°増加した(p<0.05)。経過観察期間は11~32(18±6)ヵ月であった。最終フォローアップ時の膝関節ROMは80-130(104±12)°で、術前と比較して40-100(68±16)8°増加し(p<0.05)、牽引除去後のROMと比較して-10-40(12±13)°であった(p<0.05)。膝関節機能は14例(67%)で良好、6例(28%)で良好、1例(5%)でまあまあであった。

[結論]
MJ+膝蓋骨牽引は、収縮した大腿四頭筋を伸展させ、短期間で膝関節機能を回復させることが可能であった。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

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まず、療法士としては、外傷後や股関節術後の膝拘縮(postsurgical knee stiffness;PKS)が割と生じうるということを、認識しておく必要があるだろう。そしてPKSは、結構若年者にも生じることが個人的な感覚としてある。こうした症例に対して、療法士として何ができるか、考えていこう。

▶臨床への示唆
・「この感じはもしかすると、PKSかもしれない」と評価できたら、医師と共有する。上記論文のようなOPEとなるか、保存療法となるかをディスカッションする。
・保存療法であれば、『中間広筋が主な線維化部位である可能性が高いため、治療の第一選択としていく。

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