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【英論抄読】高齢者における栄養状態と身体組成が機能障害に及ぼす影響の性差について

▼ 文献情報 と 抄録和訳

高齢者における栄養状態と身体組成が機能障害に及ぼす影響の性差について

Sawada M, Kubota N, Sekine R, Yakabe M, Kojima T, Umeda-Kameyama Y, Usami S, Akishita M, Ogawa S. Sex-related differences in the effects of nutritional status and body composition on functional disability in the elderly. PLoS One. 2021 Feb 2;16(2):e0246276.

[ハイパーリンク]

DOI, PubMed(Full text), Google Scholar

[背景]


本研究の目的は、老人病棟の入院患者における栄養状態および身体組成の変化が包括的高齢者医学評価(CGA)の結果に及ぼす影響を評価することであった。また、これらの関係性における性差についても検討した。

[方法]


2012年から2019年にかけて東京大学病院の老人病棟に入院した高齢者(65歳以上)計212名を本研究に登録した。CGA(ADL、IADL、MMSE、GDS、Vitality Index)を実施するとともに、身体組成(付着筋量、腹筋量、体脂肪量)および血中栄養不良バイオマーカー(血清アルブミン、プレアルブミン、25-ヒドロキシビタミンD、亜鉛、ヘモグロビン濃度)の評価も行った。

[結果]


重回帰分析により、男性では上肢、下肢、腹部の筋肉量がADLのスコアと有意に関連することが示された。一方、腹筋量はGDSのスコアと負の相関があった。体脂肪量も IADL のスコアと負の相関があった。一方、女性では、重回帰分析では、体組成パラメータとCGAのどの領域のスコアとの間にも有意な関連はみられなかった。しかし、男性とは異なり、女性では血液中の栄養不良バイオマーカーがADL、IADL、MMSE、Vitality Indexと有意に関連していた。

[結論]


本研究の結果、高齢者における栄養状態および身体組成と機能状態との関連は、性別によって異なることが明らかとなった。これらの結果は、男性では運動の強化、女性では栄養状態の改善が、機能状態の維持に特に有効であることを示唆している。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

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こうした性差は、何故生じるのだろう?いずれにせよ、この結果はリハビリテーションに大きな意味をもつと思われる。

▶臨床への示唆
1.性差を考慮した集団介入
現在、地域で行われる集団介入で性差やその特徴に考慮した介入が広く行われているとは言い難い。そのため、上記のような研究をもとに性差に考慮した集団介入はその有効性を高める可能性がある。
2.個別介入における性差への考慮
栄養状態を加味したうえで運動療法を行うことは、一般的にされているだろう。さらに、性差に考慮した比重の変化をつけると、より効果的な介入ができるかもしれない。つまり、極端に言えば、
介入の比重
男性:運動療法>栄養指導
女性:運動療法<栄養指導
このような視点で介入をデザインしていくことも念頭に置いておくことが大切だろう。

以下の文献もこうした介入を行ううえで参考になる。

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医療従事者における道徳感についても記事にしていますので良かったら読んで頂けると嬉しいです。

最後まで読んで頂きありがとうございます。今日も一歩ずつ、進んでいきましょう。

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