「主人在宅ストレス症候群」は日本人特有か?
前回の記事で、「主人在宅ストレス症候群」について、ご紹介しました。
夫が定年退職して家で過ごすようになったことで、妻がストレスによって不調を訴えるケースのことです。
「主人在宅ストレス症候群」の背景
それまで仕事三昧で会社に滅私奉公してきた夫たちが、定年退職になり、これからは心穏やかに家で過ごせるようになったと一安心した矢先に、それまでひとりの時間を家で謳歌してきた妻たちが悲鳴を上げるようになったのです。
妻としても、ようやく手のかかる子どもたちが巣立ち、自由時間を持てるようになったと思ったら、今度は夫がデンと構えるようになったのです。
しかも四六時中家にいて、一日三度の食事を当然のように求めてくる。
妻の奉仕を当たり前のものとしてテレビの前に陣取り、「コーヒー」、「めしは?」などと注文する夫に対してイライラが募り、しまいには動悸息切れがしてくる……。
妻のストレスをあらわす言葉として、「ぬれ落ち葉」という言葉がはやったこともあります。
定年退職後の夫が、特に趣味もないために、妻が出かけようとすると必ず「ワシも」と言って、どこにでも付いて来る、「妻にべったりの夫」をあらわす言葉です。
それまで「外で家族のために働きお金を稼ぐこと」が夫からの愛情の証だったのに、「外で稼がなくなった夫」は、何によって妻の私に「愛情」をくれるのか。
定年退職という区切りで、「家庭内における男女分業」システムが解消したのなら、私も家事から解放されるべきではないか。
それにもかかわらず、妻としての愛情の証である家事は死ぬまでしなくてはならないのは、理不尽ではないか。
妻のストレスはそのような感じではないでしょうか。
「主人在宅ストレス症候群」は日本特有か
「主人在宅ストレス症候群」は果たして、日本特有の現象なのでしょうか。海外と比べながら考えてみたいと思います。
家族社会学の専門家で、「パラサイトシングル」「格差社会」という言葉を世に広めた中央大学教授の山田昌弘先生によると、日本人はもともと「分散」「分業」の意識が強い一方で、西欧文化では、「一体」という意識が強いとのことです。
以下山田先生の『パラサイト離婚社会』からの抜粋です。
山田先生は、夫婦での時間に使い方だけでなく、愛情までもが、「分散」「分業」されるとしています。
日本人の場合、時間も愛情も分散しているので、定年退職後の夫が、一体化すると、余計ストレスがたまるということでしょうね。
では、欧米人は、夫や妻に愛情がなくなったら、どうするのでしょうか。
これに対しては、ドイツのコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンさんも言っています。
長く結婚生活を続けながら、夫の悪口を言って「ガス抜き」をするニッポン流と、夫が嫌になったら決断を急ぐ「欧米流」のどちらがいいと思いますか?
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