四十九院紙縞

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オリジナル小説を書いてます。 活動場所等のリンク集→https://potofu.me/49in44ma

マガジン

  • 単発短編小説

    一話完結の短編小説置き場。

  • 長編小説『リトライ;リバース;リサイクル』まとめ

    記憶喪失の殺人鬼と、大鎌を携えた少女による、ちょっと歪んだ恋の話です。

  • 短編連作小説『透目町の日常』まとめ

    短編連作シリーズ『透目町の日常』をまとめました。基本的には一話完結なので、気になった作品からご覧いただければ幸いです。

  • 長編小説『陽炎、稲妻、月の影』まとめ【完結済】

    記憶喪失の地縛霊と霊能力者の女子高生が、校内の心霊現象を解決していく物語です。

  • 長編小説『暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌』まとめ【完結済】

    周囲から孤立している「僕」と自称狛犬の少女が、神社で歌の練習を通して仲良くなっていく話です。

最近の記事

【短編小説】明日死ぬって言ったらどうする?

「明日死ぬって言ったらどうする?」  その日、私は友人である英生と中華料理屋に来ていた。  目的はひとつ、激辛料理である。  私たちは、定期的に激辛料理を食べる。  それはストレス発散の為であり、互いの近況報告の為でもある。忙しい社会人にとっては、なくてはならない大切な時間だ。  どうして毎回激辛料理かと訊かれれば、答えは単純明快。素面で話すには恥ずかしいけれど、お酒を入れるほどでもない話題に、美味い辛いとひいひい言いながら食べる激辛料理は、思う以上に最適なのだ。  今日も、

    • 【短編小説】世界終焉の、一週間後。

       一ヶ月前、世界終焉の日が全世界に通達され。  二週間前、選ばれた人たちは宇宙へ旅立った。  一週間前、冗談みたいな天変地異に見舞われ。  そうして、世界は滅んだ。  そのはずだった。 「なんで生きてっかなあ」 「そりゃあ、死んでないからっしょ」  世界終焉の、一週間後。  滅んだはずの世界の端で、私は友達と海辺に居た。  ほとんどの生き物は死滅した。一週間前に起きた地震と大雨と洪水と津波と……それから、なんだったか。とにかく天変地異が起き続け、それによって滅んだのだ。  こ

      • 【短編小説】美しい嘘

        (1)――「殺せるものなら、殺してみろ。ただし、美しくな」  暗闇の森。  この辺りの人間がそう呼び畏れ近寄らない森で、少年が一人、ぽつねんと輝いていた。  輝いていた、という言葉に間違いはない。  老人のように白い髪、陶器のように白い肌、血の色をした瞳。  そんな姿で、陽の光が差さない森の中に居れば、輝いていると表現したくもなるものだ。  魔女は、そんなことを考えながら嘆息し、同時に心を弾ませる。  軽い散歩のつもりで歩いてきたが、思いがけず美しい光景に出会ったものだ―

        • 【短編小説】無表情な私と無愛想な君とが繰り返すとある一日の記録

          (1)――今日は、というか、今日も、だ。  酷く嫌な夢をみた気がして、私は目を覚ました。  心臓はまだ早鐘を打っていて息が上がっているし、十月の朝とは思えないほど滝のような汗をかいている。  それなのに、夢の内容は微塵にも覚えていなかった。  怖かった。  その感情だけが色濃く残っていて、余計に後味が悪い。 「ひさぎー? いい加減に起きないと遅刻するよー?」  階下から、私を呼ぶ母の声がした。  この呼びかけで起きなければ、部屋に母が突入してくる。別に、部屋に見られて困る

        【短編小説】明日死ぬって言ったらどうする?

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        • 単発短編小説
          5本
        • 長編小説『リトライ;リバース;リサイクル』まとめ
          0本
        • 短編連作小説『透目町の日常』まとめ
          15本
        • 長編小説『陽炎、稲妻、月の影』まとめ【完結済】
          44本
        • 長編小説『暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌』まとめ【完結済】
          39本

        記事

          【短編小説】幽体離脱を経験した友達とお喋りする「私」の話

          『稀によくあるありふれた日々』 「風邪をひいたときにみる、変な夢ってあるじゃん」  放課後。  なんとなく家に真っ直ぐ帰る気になれなかった私たちは、学校の教室に残り、雑談に興じていた。  中学三年生の秋。  部活は春先に引退し、受験に本腰を入れなければならない時期。しかしそれ故に、どこかで肩の力を抜きたい衝動に駆られる。今日のこの時間は、お互い明確に言葉にはしていないが、息抜きの意味合いが強かった。先へ進む為には、こういう時間も必要なのだ。  それに、今日中に彼女に伝えておき

          【短編小説】幽体離脱を経験した友達とお喋りする「私」の話

          【短編小説】末継将希について

          幼馴染・今野悠汰の証言 「お久しぶりです。前に会ったのは、俺らが小六のときでしたっけ。ほら、あの頃は俺と将希が同じゲームにハマってて、よくお家にお邪魔させてもらってたんスよね。五回に一回くらいの頻度で将希のお母さんが作ってくれたクッキーが美味しかったの、よく覚えてます。懐かしいなあ。  ……この度は、御愁傷様です。今日は、将希の話を聞きたいってことでしたけど、具体的にはどんな話を聞きたい感じですか? ……将希の最近の様子、ですか。  そうですね……俺から見た将希は、ずっとい

          【短編小説】末継将希について

          【短編小説】鬱で療養中の「私」が昔馴染みの雪女と雪だるまを作る話

          『雪解けのときはまだ遠く』  小学生の頃、雪が降っている日に限り、同い年くらいの女の子とよく遊んでいた。  雪が音を吸収し、世界に一枚布を被せたような静寂さが支配する世界では、私と彼女の笑い声だけが響き渡っていた。雪だるまを作り、氷柱を使ってチャンバラをし、かまくらを作り、雪合戦をした。  彼女は、少し――いや、かなり、不思議な子だった。  烏の濡羽色のような瞳も髪の色も、ただ美しいと思うだけだ。私が不思議に思ったのは、彼女がいつも、こちらが寒く感じるほど薄着であることだ。私

          【短編小説】鬱で療養中の「私」が昔馴染みの雪女と雪だるまを作る話

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #44 【完】

          最終話 今日も明日も明後日も――(2)  アサカゲさんは祠の前にしゃがんだかと思うと、その戸を開け、中から一枚の紙を取り出した。四つ折りになっていて、なにが書かれているのかまではわからない。 「祠が空っぽなのは如何なもんかと思って、仮でこれを入れてたんだ」 「……見ても良い?」 「ああ。ほらよ」  ぶっきらぼうに頷いたアサカゲさんから、仮の御神体としていた紙を受け取り、広げる。  そこには、小学生が描いたであろう、女の子と背の高い着物姿の人の絵が描かれていた。 「アサカゲさ

          ¥100

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #44 【完】

          ¥100

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #43

          最終話 今日も明日も明後日も――(1) 「よお、一週間ぶりじゃねえか」  目を開けて一番に視界に飛び込んできたのは、苛立ちを顕にしている女子生徒の姿だった。 「ええと……」  あまりの怒気に怯み、俺は言い淀む。  私立境山高等学校、第二教室棟一階の廊下にて。  目の前に立つ彼女は腰に手を当て、少しだけ見上げるようにして俺を睨みつけていた。  急な展開に驚きこそあれ、それまで意識を失っていたのが嘘のように、はっきりと冴え渡っている。  だから俺は、旧知の相棒に挨拶をする。 「

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #43

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #42

          第5話 呻く雄風――(12)  とても幸福で温和な時間に浸っていたいところだが、いつまでもこうしているわけにもいかない。 「さてと。時間もあんまりないし、後片づけしよっか」 「は? 時間?」  疑問符を浮かべたアサカゲさんに、敢えて回答はせず、俺はついっと人差し指で円を描いた。  三年五組の教室で発生した風は、そこに居る三人を優しく抱え上げると、グラウンドへと運び出す。始めこそ悲鳴を上げられたが、害がないとわかるや否や、アトラクションに乗っているように楽しんでくれた。同時に

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #42

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #41

          第5話 呻く雄風――(11)  ごうごうと唸りを上げる風の音で、俺は意識を取り戻した。  視界の端に、真っ白な白い髪がちらついている。  身につけている服は、今しがた思い出した記憶と同じ、秘色色の着物だ。  自身の身に起きた変化を確認しているうち、足が地面につく。そこでようやく、ここがグラウンドであることに気がついた。  三年五組の教室を出ようとして、あれからどのくらいの時間が経ったのだろう。  状況を把握しようと周囲を見回すと、少し離れたところに〈よくないもの〉が寄り集ま

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #41

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #40

          第5話 呻く雄風――(10)  私立境山高校が建てられてから、どれくらいの年月が経った頃だろうか。  気がつけば校舎は増え、多発する心霊現象の所為で、校内の複雑化が進んでいた。  その日も俺は、生徒の賑やかな声に耳を傾けていた。  放課後に入り、部活動に勤しむ生徒の声が聞こえてくる。  しかし、その声の中に、聞き慣れない声が混じっていた。 「どこ? どこにいるの?」  それは、幼い女の子が泣きながらに発した声だった。  迷子だろうか。  慌てて気配を探る。  すると、声の主

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #40

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #39

          第5話 呻く雄風――(9)  この土地に人間が定住するようになってほどなく、俺は生まれた。  いや、生まれたという言葉は正確ではないか。神様というものは、人間の願いが寄り集まった結果、それを叶えるものとして顕現する。だから「生まれた」というよりかは「発生した」という言葉のほうが、張本人としてはしっくりくる。  ともかく、俺が土地神としてこの土地を見守るようになったのは、ここに高校が建てられるよりも、世界規模の戦争が起こるよりも、もっともっと昔、人間からしたら気が遠くなるよう

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #39

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #38

          第5話 呻く雄風――(8) 「――三人とも下がって!!」  なににも触れられない俺では、三人を遠くへ突き飛ばすこともできない。  だから俺は咄嗟に〈それ〉と三人の間に入り、せめて盾になれたらと、右手を突き出した。確かこのリストバンドには、防衛機能どころか、反撃を繰り出す魔改造が施されていたはずだ。  刹那、教室の窓が割れ、稲妻に似た閃光が走り、大きな破裂音を轟かせた。  あまりの反動の強さに、気がついたら俺の身体は床に転がっていた。思っていた数十倍は殺意が高く、俺はこの状況

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #38

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #37

          第5話 呻く雄風――(7)  翌日。  アサカゲさんは、朝からグラウンドで、封印の儀式を行う為の下準備を整え。  ハギノモリ先生は、協力してくれる霊能力者たちを出迎え、念入りに打ち合わせを行っていた。  急な午後休校となったが、生徒たちからすれば、金曜の午後が公然と自由になって嬉しそうな様子である。みんな口々にどこへ遊びに行こうかと話し合いながら、校舎をあとにしていく。先生たちが校内放送や巡回を行って、早急に下校するように促しているが、生徒の足取りの軽さを見るに、そう難航は

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #37

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #36

          第5話 呻く雄風――(6)  次の日も、事態は悪化の一途を辿っていた。  ポルターガイスト現象は増加し、空気の澱みに耐え切れず意識を失う生徒も出てきた。ほとんど紙一重な状況で授業は通常通り続けられているが、生徒にも不安の色が強く出てくるようになってきている。もうあまり時間の猶予はない。  死者の魂の通り道にある、境山高校。  その土地の空気を清浄化して守ってきた土地神。  どうにかして場の浄化だけでもできないものかと、昨日から今日にかけて、あれこれ試してみたものの、全て無駄

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #36