【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #14
10月4日(金)――(4)
「それじゃあアキ、まずは腹式呼吸の練習だ」
「え? 歌の練習じゃないのか?」
少女と向い合せに立ったところで、僕は首を傾げた。
「良い歌声のためには、声の出しかたから練習すべきなのだ」
「へえ」
「というわけで、腹式呼吸の練習から始めるぞ。それができたら、喉の開けかたを教えよう」
「よろしくお願いします、コマせんせー」
「うむ、良い返事だ!」
張り切った様子で、ではアキ、と少女は姿勢を正す。
「足は肩幅に開いてくれ。次に、肩をぐっと上げて、す