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「プラスチック」まみれの日々~毎日新聞編

▼昨年末、思わず声を出して笑ってしまった記事があった。2018年12月29日付の毎日新聞「くらしナビ」の面。「プラスチック危機」シリーズの

〈2日間無しで過ごせるか〉

という見出しの記事。

〈使い捨てプラスチックによる海洋汚染が問題になっている。環境省によると、国内で、ペットボトルや容器包装の家庭ごみにより、年間約407万トンのプラスチックが排出されている。リサイクルを進める傍ら、プラスチックごみの総量を減らすことが喫緊の課題だ。夫と2歳の長女がいる記者が、週末の2日間で“脱プラスチック”生活に挑戦した。

というものだ。(塩田彩記者)年間400万トンという、想像もつかないプラごみの量と、日常生活とをリンクさせて考えようとする試み。

▼〈週末、一家で挑戦〉という見出しから本編の記事が始まるが、1日目からつまづく。

〈娘のインフルエンザ予防接種。注射の際にあまり泣かなかった娘をほめ、いつもの調子で「頑張ったからゼリーをあげようね」と声をかけてしまった。一口サイズのゼリーは、もちろんプラスチックのカップ入り。直後に気づき、「やっぱり煮干しにしようか」と提案するも受け入れられず、プラごみ第1号を出してしまった。〉

ここで笑ってしまった。2歳の女の子にあげるご褒美に、ゼリーの代わりに煮干しじゃだめだろう。

▼この後もなんとかプラスチックを避けて生活しようとする苦戦の様子がてきぱきと描かれている。きのこは買えない。魚も買えない。豆腐はかろうじて買えた。肉も無理かと思いきや、大型スーパーで肉を紙に包んでくれるというコーナーを発見し、よろこんで肉をまとめ買いしたら、なんと紙で包む前に肉を包む「経木」が、経木のふりをしたプラスチックだった。

「紙のふりをしたプラスチック」も多い。言われてみれば、なんと多くのプラスチックに囲まれて生活していることか。記事を読んであらためて気付かされた。

▼2日目。〈夕方、こんな時に限ってシャンプーが切れ、詰め替え用のストックもないことに気がついた。ドラッグストアの陳列棚はプラ容器に入ったシャンプー類が並ぶ。諦めかけた時、紙箱に入ったせっけんを見つけた。「これで髪が洗える」とほっとして購入。だが、帰宅して箱を開けてみると、中から出てきたのはプラスチックの袋で丁寧に包まれたせっけんだった。「こんなことなら普通のシャンプーを買っておけばよかった」。そう思いながらキシキシする髪を乾かして、2日間のチャレンジを終えた。〉

たった2日間でも、プラスチック製品を買わない生活は無理だ、ということがわかる、とても説得力のある記事だった。この文章を読んでいる人の大半は、そして書いている筆者自身も、プラスチックまみれの日々を過ごしている。

そもそもラップがなければ、おかずの作り置きも無理。記者は〈仕事と育児の両立を可能にしている時短の工夫が、プラスチック製品に支えられていることを痛感した。〉という。

いっぽう、心がければ減らせるプラごみもあることを指摘しており、誰でも〈工夫できる余地が見つかるかもしれない〉ことを示唆した、血の通った記事だった。

(2019年1月14日)

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