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深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。

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散文詩/自由詩まとめ。
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2019年7月の記事一覧

ぼくらは赤い川で待つ

 
赤、見えなくたってきみは傷ついていて、そのかなしみをやりすごしている。

目に見えるものの価値しか知らないひと、目に見えないものしか信用できないひと、きみはどちらも軽蔑したまま夜が明けるのを待つひと、だから、刃の冷たさに安心したりしないし、なによりぼくらはきみの涙を見たことがなくて、それは、とてつもないかなしみのような気がする。

横断歩道、線から落ちたやつらがどうなったのかおそろしくて聞

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かみさまはかわりばんこにねむる

 
まち
ねむるあいだ
空から海が落ちて
まち
ねむるあいだ
沈んでいるのです
ねむらないぼくたちはそのあいだ
さかなになって
あしを捨てて こえを捨てて
吐きだすあぶくの
おおきさだけで会話をするのです

明け方
潮は引いて
アオからアオへ
まちはなにごともなく
海へ一礼をして
ぼくたちはなにごともなく
ひれをあしに変えて
しゃがれたこえを拾う

まち
ねぼけまなこの
置いていかれたくじ

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イッカクジュウと四十夜の逢瀬

 
うつくしい角をなでて怪我をしたかった、そうしてその舌で傷口をなめられて、ふたりおだやかに眠りたかった、そのうちにきみを裏切って、その角で腹をやぶられて、どろどろと濁るこの水を、タイナイのこの水を、いやしてもらって、ほほえんで、しんでしまいたかった。

海は澄んでいたのでしょうか、そればかりを思うのです、あらくれたその波がただ澄んだ嘆きでできていて、ひとの撒いた毒など、溶けていなかったのならい

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きみと夜ふかしとマグの中のペンギンミルク

 
きみと同じなまえの作家の本を買いました、ふたりで行きたいところなんて水族館と動物園、それから公園、おまけに明け方のコンビニくらいで、だからきみではない誰かが書いたラブストーリーを読もうと思ったのです、恋とはそういうものだと、本棚のいちばん上で燦然とかがやく小説が言うのだからまちがいないでしょう、そう、架空の少女に言われたのです、たしか、じゅうにさいの春でした。

コウテイペンギンの模様、白と

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ピアニッシシモで讃美歌を

 
こわれたい、うたを、うたってほしいと、きみにこわれたいのだ。
 

その名前を呼ぶためだけにこの喉があればよかった、大したことも言えないくせに簡単にかすれていく声などきみのためにしかいらないと思った、明け方の淡い空気に溶けて、消えてしまう細い声など。

人間がうたう理由を知らない、ぼくたちが分からないだけで動物たちだっていつもうたっているのかもしれなかった、それはヨロコビで、カナシミで、イカ

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ななふしぎそのいち、セーラー服の幽霊

 
うちの冷蔵庫にはたいていフルーツがなくて、扉を開けるたび救いなんてないのだとポップに絶望した、コンビニのくじで当たったミルクティーの甘さがやけにさみしくてさ、与えられたしあわせなんてこんなもんなんだろうってテツガクシャを気取ったの、あーあ、さびれた遊園地に行きたいな、そんでメリーゴーランドに乗りたい。
きみはもちろん王子様でもなんでもないので、まわるわたしをただ見ていてね。

ねぇセンセイ、

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琥珀のゆびわは海をさまよう

 
ハッピーエンドしか見たくないってうずくまる君をだれが憎んだりできるの、エイミー、その瞳はアンバーで、君はいつだって彼女になりたくてテレビの電源を入れたんだ、僕はその物語の結末を見ることなく死ぬのだと思う、君と暮らせない程度の今が、つづく限り。

似合わないから髪を切らない、黄色のワンピースは選ばない、一輪挿しには絶対に薔薇と百合は飾られなくて、そんな困難で億劫な現実、たぶん君にだけやってくる

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しんだら紙ふぶきにしてあげるから

わりあい穏やかに見えるのはたぶんずっと怒りつづけてるからなんだと思うよ、激情は安定している、日常に散りばめられた小さな餌を食べては排泄して、安定しているから、泣かないでいきているらしい。これ、飼いならせたことになんのかなぁ、そうだったらいいな。
こいつがいなくなったらお腹が空いてしょうがなくなりそうだし、お腹が空きすぎたこいつに内蔵を食い破られても困るから。

言葉、思考、せりあがってきても喉に

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