きみと夜ふかしとマグの中のペンギンミルク

 
きみと同じなまえの作家の本を買いました、ふたりで行きたいところなんて水族館と動物園、それから公園、おまけに明け方のコンビニくらいで、だからきみではない誰かが書いたラブストーリーを読もうと思ったのです、恋とはそういうものだと、本棚のいちばん上で燦然とかがやく小説が言うのだからまちがいないでしょう、そう、架空の少女に言われたのです、たしか、じゅうにさいの春でした。

コウテイペンギンの模様、白と黒の境にきみは似ているから、わたしはのどもとの黄色になってきみを曖昧にしたいのだと、目の前がちかちかと瞬くのがわかる、きみが彼そのものだったのならたまごになって立ちあがったそのあしもとで産まれる準備をしたいし、ひなになって保育所できみの帰りをさみしく待ってみたいと思うけれど、つがいのメスになる夢は、ついぞ見ませんでした。

ねぇパパ、パパはわたしのこと、ごはんも食べずにあたためてくれるのでしょう、わたしはそんなあなたから、いつか離れて海へとあるくのでしょう。それならあなたに似ていない灰色のからだのまま、ずっとそのあしのあいだで眠っていたいわ、ねぇ、だめかしら。
ふとんの中、わたし、ペンギンでもきみの子どもでもなくて、だからこんな馬鹿ばかり考える、そんなこと、もちろんじょうずに話せなくって、南極のドキュメンタリー、あのペンギンきみに似てるねって笑うことにしたのです。



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