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黒影紳士season6-X 「cross point 交差点」〜蒼の訪問者〜🎩第一章 モノクロの目覚め


今回は此れ迄の黒影紳士の集大成‼️ 第一部1️⃣五万文字の白雪出生の謎。そして第二部の影の存在と交差する。season1第一章連結‼️ ーー ⚠️夏の謎大連鎖を制覇し者よ、season1短編集のチェックメイトの章、最終章を要復習だ。 ⚠️第二部到来と共に、リアル追求の為、ある大きな異変が出現する。 ーー 第二部2️⃣五万文字の全時間軸を超えた壮大なファンタジー 永遠とは何か… この僕が、「真実」の下に明らかにしてみせる‼️ 舞い上がれ❗️永遠の炎よっ❗️ 此処までが何と❗️たった第一部だよww 第一部を纏めるに相応しい言葉は…やっぱりアレしか無いよなっ。 行くぞーー‼️ 解陣っ‼️

モノクロの目覚め

 過ぎ去る肩と肩
 僕等は信じていた
 全く違う道で
 全く同じ世界、時代に生きる
 何時か…そう、何時か
 この頭上の空が繋がる限り
 一つの真実に辿り着ける

 ――――――――

 ――おはよう……黒影。

 その声は、創世神が長き眠りに着いていた僕を何時か、レクイエム(鎮魂歌)と言う棺の保存媒体から、目覚めさせる為に言った言葉……。
 そう思って……僕はそう聞き理解している。

 まだ瞼が重くて開かない……。
 光だけが薄ら瞼を通過するのに。
 こじ開ける様に、細く開いた瞳の先に立っていたのは、シルクハットの無い、シンプルな黒のロングコートを着た、輪郭もまだぼやけた影。
 ――……僕……か?
 其れはじっと顔等の角度からして、僕を見て何かを伝えたい様にも思えた。
 表情は逆光で分からず……微動だにせず、佇んでいる。

「おはよう!おはよう、黒影!」
 今度の其の言葉はより鮮明に、聞き慣れた声で安心した。
 ……そう、白雪の「おはよう」だった。

「……あっ、白雪。態々起こしに来てくれたんだね。有難う。」
 黒影は目を軽く擦り、上体を上げて微笑んだ。
「最近、疲れが溜まっているんじゃない?もうお昼よ。」
 と、白雪は黒影の横に軽く腰掛けると、心配そうに顔を覗き込む。
 ……目覚めたら、当たり前に白雪がいる日々。
 けれど、もう少し遠かった日を思い出す。
 今がこうして在る事に感謝したくなる……そんな、目覚めだった。
「少し……ドライブにでも行こうか。」
 久々の休日に、黒影はふと思い立った様に口にする。
「えっ?良いけど……何処へ?」
 白雪は起きて早々に、食事も摂らずにそう言うので少し驚く。
 大概、朝食を食べ乍らゆっくり頭を動かして、事件の事や今日の予定を考えるのが、黒影の日課みたいなものだからだ。
「……森林浴……みたいなものかなぁ。」
 そう、黒影はぼんやりと言うだけである。
「そう、偶には良いわね。」
 やはり幾分か疲れでストレスでも溜まっていてはいけないと、白雪はその行き先に満足そうに、にっこりと笑い、
「先に珈琲淹れて待ってるわよ、お寝ぼけさん。」
 と、黒影の鼻先をツンツンと指先で擽り、何時もと変わらないスリッパの音をパタパタと立て、去って行くのであった。
 黒影は自分の鼻先を気にすると、のんびり着替えてリビングへ向かう。

 ……墓参り……か。

 白雪は覚えているだろうか?
 あれから何一つ、あの事件の事には一切口にも出さない。
 まだ若過ぎて……受け入れられなかったのかも知れないと、今は思う。
 若かりし日の黒影の心に今も鮮明に残る。
 白雪の育ての親が亡くなった……あの残忍な事件が。
 育ての親である加賀谷 次郎(かがや じろう※season1設定にて、昭和前期で古風な名前が多い。)は焼却炉にて燃やされ死亡した。
 行方を眩ましていたその妻、加奈子……つまり、白雪の母は白雪と黒影の住んでいた、まだ小狭いアパートの柱時計の中で直立したままの遺体となって発見される。
 ずっと探していた父母を一度に白雪はこの事件で失っている。
 加奈子のほんの出来心で浮気した武田 十蔵(たけだ じゅうぞう)が白雪の本当の父親だ。武田 十蔵もこの事件の連続殺人の餌食となった。(※この事件の詳細はseason1の短編集。第一章「黒影」参照されたし。)
 白雪はその後も特に手続きもしなかったので、黒田家に嫁ぐ前は、本名は加賀谷 幸枝であった。
 風柳から後に聞いた事には、加賀谷 次郎と加奈子は小さな家族葬のみで、同じ墓に眠っているらしい。
 事件後、一度白雪と風柳の三人で墓参りには行ったが、それ以来ずっと足を運んでいない。
 白雪が覚えているかも定かではなかった。
 風柳が言うには、その小さな村では当時の事件の話が広まるのはあっという間だったが、もう生き証人もいないその事件に関しては、消え去るのも早いものだったらしい。
 黒影もその村人同様では無いが、其の事から逃げていた気がした。
 白雪に聞いてはいけない事だと思って、話題にもしない。
 あの事件は……何処か……黒影にとっても、影の様な靄が晴れないものだ。
 あれから何年経っただろう……。
 白雪も僕も大人になった。
 息子の鸞もいて、助けてくれる仲間も出来た。
 ……もう、受け入れられるものだろうか……。
 思い出してみても酷い事件だとは思うが、それ以上でも以下でも無く、それよりも白雪がどう思っているのだろうかと、気掛かりなだけだ。
 あまりにも多くの事件に関わり過ぎてしまったのか、何か特別な事件にも思えなくなってしまった己が、少しだけ虚しくもある。
 こんなにも毎日一緒にいて
 こんなにも会話し
 信じ、安らぎをおくのに
 僕は未だ……君の本当の気持ち一つ
 聞けずに
 知らずに過ぎようとしている

「何も悪い事では無い……。」
 自責の念を解く様に、黒影はタイをシャツに合わせ乍ら、鏡の中にいる己に、小声で独り言を言う。
 鏡に映った己の後ろに、再びあの自分そっくりの影がふっと見ている気がして、黒影はバッと振り向く。
 殺意も何も感じないが、酷く冷ややかにその影は黒影を見ていた気がした。
 だが、やはりそんな者……いる筈も無い。
 ……不安感か何かだろうか……
 黒影はそう思い、また鏡の方へ向き直し、額に手の甲を軽く当てた。
 白雪の言う様に、少し疲れたのかも知れない。
 熱は手で触れても当てにはならないと、後で計ろう……そう思った。
 さぁ、白雪の何時もの愛情たっぷり珈琲でも飲んで、気を取り直そう……。
 そう思って部屋を出ようと鏡から出て、部屋の扉へ向かおとした次の一刹那……黒影はぴたりと足を止めた。
 上半身を鏡の中に振り向かせ戻してみる。
「……此れは……。」
 思いもしなかった出来事に、口を付いてそう言っていた。
 普段の黒影は、真実を探そうと反応する「真実の目」か鳳凰にならない限り、目は赤くは成らない。
 その僅か残る赤と、影の強い影響による蒼い色との中間色で、蒼紫の様な瞳の色をしている。
 だから、タイの色もブルー系統が大半で、今日もブルーのタイを選んだつもりであった。
 然し、実際は違ったのだ。
 黒いタイを無意識に選び、巻いていた様である。
 窓の外をふと見れば、赤蜻蛉が跳ねて飛んで行く。
 ……やはり、墓参りかな。
 黒影はこれだけ、偶然も重なれば必然かと、半ば諦め逃げようとした今日の己を戒める。
「いつまで経っても、変わらない僕ではないっ!」
 そう言って、己の目を覚ます様に、ぱちりと頬を叩き白雪の待つリビングへと、足早に部屋を飛び出して行くのであった。
 ――――――――
「白雪?」
「ん?なぁに、黒影?」
 黒影は珈琲を口にして白雪を見て思わず呼んだ。
 白雪は何時もと変わらぬ笑顔で、隣の席に座り落ち着く。
「あっ……否、何でも無い。」
 一言、聞いた方が良いだろうかと思ったが、やはり躊躇してしまう。
「なぁに?変なの。」
 白雪はそう言ったが、事件の事でも何でも考え事をしている時は、黒影が癖だけで呼ぶのも知っているので気にも止めない。
 ……考えるのか、リラックスしたいのだか、何方かにすれば良いのに。
 白雪はそう思うが、其れが黒影らしいとつい微笑む。
「……そうだ。サダノブだ……。」
 ふと、黒影は珈琲を飲む手を止めて、呟く。
「サダノブが如何かしたの?」
 と、白雪は不思議そうに聞いた。
「あぁ、折角だからドライブに誘おうかと思って……。」
 と、黒影は答えるのだ。
「それなら電話で良いんじゃない?」
 白雪がそう言ったのだが、
「否、大丈夫だ。事務の話もあるから行ってくるよ。」
 そう黒影は答えるなり、コートを持って、帽子掛けから帽子を攫う様な早さで持ち、飛び出して行った。
「お仕事じゃないのに……。ねぇ、風柳さん。」
 今日は休みで新聞をのんびり読んでいた風柳に、白雪は出掛けの早さが変わらない休日の黒影に呆れ、言う。
 風柳は新聞を読んでいても気付いている。
 其れこそ刑事なのだから、隠そうとすると殊更追いたくなる物だ。
「そうだなぁ。折角の休日だからね。俺も、森林浴とやらが必要かね。」
 と、風柳は目を細めて穏やかに笑うだけだ。
 黒影が黒いタイをしている。サダノブに相談したくてソワソワしている。
……そして、森林浴。
 風柳には聞かずとも行き先が解っていた。
 白雪の亡き育ての父と母の墓参りだろうと。
 軽く場所は教えたが、入り組んだ山奥の小さな山村だ。
「そうよ、折角なら皆んなで息抜きが良いわっ♪……風柳さんも息抜き、行きましょうよ。私、お握り作ってくるわ。」
 白雪はそう言って、何時も皆んなを和ます笑顔を残し、キッチンへと向かった。

 ……あの子がもう……。
 ただ、泣き腫らした真っ赤な目で、雪の中佇んでいた少女。
 警察だと言ったら、子犬の様に脅え……保護してから少しずつ心を開いてくれた。
 黒影に何もしてやれなかった時間も、いつしか埋めてくれた。
 どれだけ感謝した事だろう。黒影とも、また兄弟で家族でいさせてくれる。
 白い雪の様に優しい心を誰も傷付けたくは無い。
 黒影が迷っている事と、同じ事を俺は迷っているに違いない。
 ……如何か真実を見ても、その笑顔が曇りません様に。
 そんな勝手な願いは、持っても良いものだろうか。

 風柳は、何も知らずにご機嫌そうに鼻歌を歌う白雪を見て、そんな事を思っていた。
 一番歳上で、二人をしっかり見守って行こうと思えど、分からない事も沢山あった。
 親の代わりには成れない。そう諦めては、笑顔をくれた二人に励まされ、いつの間にか成長して行く。
 此れもまた、一つの成長なのかも知れん……。そう言い聞かせ、黒影がサダノブを連れ、やっとこさの想いで勇気を出して、知らぬ存ぜぬの涼しい顔で帰ってくるだろうと思った。
「何をニヤニヤしているの?」
 と、白雪が風柳に聞く。
「其れは……そうだな。黒影ならば、推測していた……と、言うかな。」
 風柳はそう答え、また新聞に隠れてしまうのである。
「黒影は直ぐ帽子に隠れる。風柳さんは直ぐ新聞に隠れる。やっぱり兄弟よね。」
 白雪はそう、ツンと少ししたが微笑んでいた。
 ――――――――

「うわっ!だから、せめて山道はスピード落としましょうって!」
 と、サダノブが後部座席から黒影に言った。
「下げているだろう?……下り坂がいけないんだ。」
 黒影は、そんな無茶苦茶な理由を言って笑い飛ばす。
 Windowを開ければ木立から戦ぐ涼しい風。
 車内に差す光は木漏れ日が流す残像。
 瑞々しく青い新緑の香が気分を清々しくする。
 サダノブは、何時もならばまだ言い返す所だが、今日は言葉少なめであった。
 黒影から、何処へ向かうか聞いていたからである。
 少しでも、今は気楽にいたいのかも知れないと、エンジンを掛けると共にワイルド化してしまう黒影を、今日は見逃してやろうと思えた。(注意※見逃してはいけません、道路標識、危険運転。道路は道路交通法を守り、安全運転を心掛けましょう。)
「其の先の道、何があるんだろうな。……あっ、珍しい色の鳥が飛んで行ったよ。」
 などと、風柳は目的地の村が近付き、道が入り組んで来ると、そんな風に黒影に道を教えた。
 細い道を抜け、砂利道をゆっくり入って行くと、森が開け日差しが溢れている。
 その日差しは天からも降り注ぎ、地上には鏡の様に映って見えた。
 棚田に引かれた水に太陽が反射し、美しく天然の鏡を作っていたからだ。
 黒影は村に入ると、棚田ばかりの傾斜なので、手前で車を停める。
 白雪は何も言わずに、車のドアを開け降りる。
 惹き付けられる様に、棚田の景色を見て奥へ奥へと吸い込まれて行く。
「……思い出したようだな。」
 風柳が黒影の肩をぽんと軽く叩き言った。
「其の様ですね。」
 黒影は其れだけを言うと、小走りで白雪の元へ駆けて行った。
 何も聞けない……
 何も話し掛けられない……
 だけど、今は側にいる事ならば
 其れだけは出来る

 黒影は白雪の隣へ行くと、スッと手を取ってしっかりと握りしめた。
 白雪は、其の手を見上げてから、黒影の横顔を見上げた。
 真っ直ぐ先を見詰める長い睫毛の奧に、何かの決心にも似た真面目な瞳。
「……そうね。もう……大丈夫になっても良い頃よね。もし、やっぱり駄目って思っても、今は黒影がこんな近くにいてくれるんだもの。……連れて来てくれて、有難う。」
 白雪はそう言うと、黒影を見て少し悲し気に微笑む。
「無理して笑わなくて良い。もう……良いんだよ。」
 黒影は事件後に来た時も、白雪がそんな無理した笑顔で笑った事を思い出して、昔の白雪の面影と今の白雪を重ねた。
「……うん。無理しない。本当はね、私も気には掛けていたのよ。だけど、皆んなが心配してしまいそうで、行ってみたいって言えなかったの。」
「えっ?来たかったのか?」
 避けてばかりいると思っていたのに、白雪から返ってきた言葉は意外で、黒影は驚く。
「鸞が生まれた時も、黒影と結婚する事になった時も、人並みに報告しなきゃいけないかしらん?とは、思っていて。其れに……鸞が大きくなって思ったの。自分のルーツみたいなものを知りたいなって。だって私……殆ど覚えていないのよ。この村がどんな所かも。両親の事はまだ悲しいわよ。……きっと、悲しみが楽になっても消えはしないわ。けれど、何時か鸞がお父さんになったら、話しても良いかなって。」
 と、白雪は黒影の手をギュッと握り返したまま、棚田の細道の小石を転がせ、下を向き遊ばせ乍ら話した。

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(お急ぎ引っ越しの為、校正後日ゆっくりにつき、⚠️誤字脱字オンパレード注意報発令中ですが、この著者読み返さないで筆走らす癖が御座います。気の所為だと思って、面白い間違いなら笑って過ぎて下さい。皆んなそうします。そう言う微笑ましさで出来ている物語で御座います^ ^)

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お賽銭箱と言う名の実は骸骨の手が出てくるびっくり箱。 著者の執筆の酒代か当てになる。若しくは珈琲代。 なんてなぁ〜要らないよ。大事なお金なんだ。自分の為に投資しなね。 今を良くする為、未来を良くする為に…てな。 如何してもなら、薔薇買って写メって皆で癒されるかな。