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見えないレールの上を歩いていた私が、そのレールから降りたとき

東京の大学4年生を休学し、参画した大人の島体験。ぶどう畑や空き家整備、広報として働きながら「圧倒的な原体験をした」と語る彼女が過ごした1年間とは?

島根県の離島、隠岐島前地域で大人の島留学・島体験に参画した皆さんの来島前・来島後、そしてこれからについてお届けする「私、島で働く。」

来島のきっかけから島での仕事・暮らし、自分自身の変化など
1人1人のストーリーをお届けしています。

常峰さん 取材当時22歳 神奈川県出身
2023年度4月大人の島体験生として来島

今回はR5年度大人の島体験4-6月生として海士町に来島。その後、制度を延長し1年間島に滞在。
島前ふるさと魅力化財団で働く、常峰菜生さんのインタビューをお送りします。

来島から約11ヶ月。離島直前の常峰さんに、海士町で過ごした大人の島体験について聞かせていただきました。



みんなと同じ道、見えないレールの上を歩いていた。

22年間神奈川で生まれ育ち、東京にある大学に進学して、大学3年生の秋の段階で就職活動を始めていました。周りの友達も就職活動をスタートしていたから、私もやらなきゃなと思って。
同級生たちは東京で就職することを考えていたので、私も何も考えずに当たり前にその中の一人として動いていました。

このころ、みんながこうしているからこうしようとか、なんとなく見えないレールの上を歩いている感覚があって。

インタビュー中の常峰さん

ただ歩いているだけのつもりなのに、気づいたらそのレールの上を歩いているという感覚。特に大学は自分と似通った人が集まっていることもあって、自然とみんなと同じ方向に向かって進んでいたのだと思います。

そんな思いを抱えながら就活をしていたけれど、ここ!と思うところは見つからなくて。「自分って東京へのこだわりはないんじゃないかな」と気がつきました。

神奈川以外で暮らしたこともない、いつか地方で暮らしてみたいなぁと思っていた部分もあり、就職する前に一度経験できたら選択肢が広がるかな?と思いました。

さすがに移住するのはハードルが高いので、その前に短期間だけお試しで行ってみたいと調べてみたところ、大人の島留学・島体験が目に留まりました。

家賃もかからず、お給料も出る、こんな制度なかなかない。海士町という名前もその時初めて知って、事前来島もせずに来ました。
3ヶ月、お試しで気軽に行けるのがいいなと思いました。

休学は1年間。
4月から来島予定だったので大人の島留学(1年間)と大人の島体験(3ヶ月)を選ぶことができたのですが、休学中の1年間をどう過ごすか考えたとき「1年間を全部島で過ごすのってどうなんだろう?」と、島に来る前はあまり想像できませんでした。

海外にも興味があったので、3ヶ月島で過ごして残りの期間は海外行ったり、就活しようと考えていました。
大人の島体験に参画すると決まったのは、3月の前半くらいでした。

知夫里島の赤壁にて


ぶどうへの愛情が芽生え、大人の島体験を延長することに決めた。

島に来るまでの事業所を決める面談で、特にこれといってやりたいことがあったわけではなかったのですが、観光、課題解決、まちづくり、興味がある3ワードをお伝えしていたと思います。
いざ島に来たら、「大人の島留学・島体験の受け入れをしている島前ふるさと魅力化財団(以下、財団)なら色々なことができるよ!」とおすすめしてもらって。
ではそこでお願いします!と財団で働くことが決まりました。

最初の3ヶ月は、大人の島留学生が来た時の対応や、研修への参加、新しく来た島体験生のための空き家清掃などが主な仕事でした。
それと並行して、空き家に隣接したぶどう畑でぶどうを育てるお手伝いをしていて、それが一番楽しかったんです。

一番楽しかったぶどうのお世話

そのぶどう畑は数年前に手入れをされていた方が離島されて、そこから長年手をつけられていたなかったそうなのですが、去年からできる人たちで少しずつ手入れをし始め、今年度から本格的にスタートしました。

私は運良くスタートの5月から関わることができました。でも4月生の場合、4-6月までの期間しか島にいられない。
6月までだと、ぶどうの実がなる前の段階で終わってしまうんです。

ぶどうが大きく成長するところを見ず、収穫をできず、出荷されるところも見られない…
もうその時点でぶどうへの愛着が生まれていて(笑)
3ヶ月で帰るのはもったいない。純粋に楽しかったし、最後まで見届けたいなと思って、迷わず大人の島体験を延長することに決めました。

無事に出荷されたぶどうたち

4月生は海外に行くことが確定している人や、その後の予定が決まっている人以外は延長している人が多かった印象です。
私自身、来る前は初めての土地で過ごすことについて、延長するしないは決められなかったけど。3ヶ月の中でいろんな人繋がったり、話したりしてその先でしか見られないものがあるのではないかな?と思いました。


大吉が引き寄せてくれた島のご夫婦との出会い

最初のころの仕事は、とにかく車を走らせていろんなところへ行って、いろんな手配をしたり地域に出ていることが多かったです。
暮らしの部分でも、自分自身積極的に動いていたと思います。

来島して3日目くらいに島のとあるご夫婦と、ちょっと運命的な出会いをして仲良くさせていただいていて。
初めての休日、一人でふらっと隠岐神社に散歩に行ったんです。
神社の鳥居をくぐったところでお花見BBQをしているご家族がいて、目が合ったので「こんにちは」と挨拶をして。そのまま通り過ぎて階段を登って、お参りしておみくじを引いて。
そしたらなんと大吉で、いいことがたくさん書いてあって「おぉ!!!」と(笑)

仕事:土や緑に関係する職と縁あり🍇

階段を降りて鳥居の方に降りて向かって行ったら、またバチっと目が合い、どうしよう…と思ったのですが、
「4月からきました島体験生の常峰です」とご挨拶をさせていただきました。

そうしたら、「お酒は好きか?ご飯食べたか?」とお話ししてくださって、「お酒好きです、ご飯はまだ食べてないです!」と。飲んでけ飲んでけー!ってファミリーのお花見BBQに入れていただきました。
そこから隠岐牛などをひたすら食べさせてもらって。「夜は八千代行こうよ(島の飲食店)」と声をかけていただき、それまでの時間はたけのこ堀り行くぞ!って(笑)お家にもお邪魔してコーヒーをいただいたりして。

夜ご飯を食べた後はスナックへ行って一曲歌って。何を歌ったらいいかなと思いながら、津軽海峡冬景色を歌いました。

実は、そのご夫婦の旦那さんは島の大工さんで。大人の島留学生などのシェアハウスの工事をしてくださっている方でした。
私もシェアハウス関連の仕事をすることもあったので、仕事で再会して。今も一緒にお仕事させていただいて、なかなかない出会いでうれしいなと思います。
大吉が引き寄せてくれたのかもしれません。

一緒にたけのこ掘りへ


現在は広報の仕事、キーワードは「一歩踏み込む」。

上半期はシェアハウス関連、ぶどう畑など身体を使う仕事だったのですが、今は主に広報の仕事を担当しています。
広報も外に動きまわって欲しいと言われ、上半期の経験が活かせるような広報をしていけたらと。
広報ってパソコンに向かうイメージがあったので、外に出ながら広報ってどうしたらいいんだ…?と最初は少し戸惑いました。

今、広報チームは「一歩踏み込む」というキーワードで動いています。
自分の身の回りにいる島留学生だけでなくて、地域のみなさんとこんな間柄だよ、などもっと周りの人を巻き込んでいけたらいいなと思っています。
手の届く範囲だけではなく、もっと広げて一歩踏み込む、そこを大事にしています。

自分自身、広報歴なしでフォロワー2500人のアカウントを運用するプレッシャーも感じています。
もちろん頑張りますし、自分のベストを尽くしていますが、いろんな人からの目線があったり、ほかのアカウントを見たりしていろんな発信方法があるんだなと。
大人の島留学のいいところを100%出せていないのではと思うとき、悔しいと感じる部分もあります。

でも広報チームで働いていて、働くということ自体が楽しいです。
リーダーの方がチームを大事にしてくださっている方で、週一でご飯食べに行ったり、月一で飲み会したり。
リーダーが「俺が責任取るから、チャレンジせずに終わるのはやめてくれ」と言ってくださるんです。
私自身、リスクを考えてしまう部分があるので、思い切って挑戦できる環境を用意してくださることがありがたいです。

同期の広報チームメンバーとは、お互いに助け合い、試行錯誤しながら仕事をすることができ、とても勉強になっています。

広報チームのみなさんと


この1年間、圧倒的な原体験をした。

来年度は海外に行ってみたいという気持ちもありますし、いろんな地域に行ってみたいなと思っています。一度立ち止まる時間も欲しいです。

いつかこの1年間を思い返したときに、いろんな感情を思い出せるような気がする、原動力になる気がします。
あの経験があったから頑張ろうとか、あれがあったから今こうしているとか。
これからに繋がっていく圧倒的な原体験をしました。

将来は地方で農業をやっているかもしれないとも思いました。
それが楽しそうだなと思えました。前まではそういう選択にためらいがあったけれど。
世間的にもお金的にも会社で働く方が安定しているしいいかなぁとか、そういう部分より、今は自由の方が大切だなと。

今まで歩いてきた、見えないレールの上から降りたのだと思います。
島に来て1年が経つ今は、海の上でサーフィンをしている気分(笑)


波が来たから乗ってみよう、落ちても怖くない!そんな気持ちです。



(R5年度大人の島留学生:柿添)


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