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顧客理解の重要性から生まれたサービスと、プロダクト開発を強化する複業人材

スタートアップの事業成長の加速化でカギを握るのは、即戦力人材。そんな優秀な人材を迅速に巻き込める手段として「複業人材の採用」があります。今回は株式会社プロダクトフォース代表取締役CEOの浜岡 宏樹さんに、複業人材を積極的に採用している理由や、彼らがどのようにプロダクトフォースの成長に寄与しているのか、また今後の事業戦略を伺いました。


企業はユーザーインタビュー、個人ユーザーは副業が可能なプラットフォーム

― プロダクトフォース社の事業概要を教えてください。

プロダクトフォースは、2023年4月に株式会社LIFULL(ライフル)からスピンアウトし、主力事業として「ユニーリサーチ」というユーザーインタビュープラットフォームを提供しています。このサービスでは企業と個人ユーザーを繋ぎ、企業は新サービスの開発や既存商品の改善などに役立つユーザーインタビューを低コストかつ迅速に行うことができます。2024年4月時点で1,850社が利用し、35,000件のマッチングが成立しています。

一方、ユーザーインタビューの受け手である個人ユーザーは「誰でも参加できる副業」として数万人にご利用いただいています。自宅で30〜60分のインタビューに参加して興味・関心や経験について話すだけで、1時間あたり平均5,000円以上の副業収入を得ることができます。このように、ユニーリサーチは企業にとっては効率的な調査ツールとして、個人にとっては副業の機会としてそれぞれのニーズを満たしています。

― 企業のお客様がご利用になっているプランをお聞かせください。

企業はインタビュー調査概要を募集要項として作成し、ユニーリサーチのプラットフォームでいつでも募集を開始できます。月額利用料は一切かからず、プランによって最低金額は異なるものの、一人当たり5,000円からユーザーインタビューが実施できます。

「Liteプラン」では最大4件の設問、「Proプラン」では最大10件の設問に加え、匿名調査やユーザー宅への訪問、指定会場での対面調査も可能。事前に設問を設定し、それに対する回答をもとに条件に合ったユーザーとインタビューを実施できます。謝礼の支払いもプラットフォームで完結することから、企業側に事務手続きなどはかかりません。

― 企業がユーザーにヒアリングできるようになると、ズレたインサイトの設定も避けられますよね。

そうですね。企業がプロダクトアウトで開発すると、ユーザーのニーズに合わないサービスになって事業はスケールしません。ユーザーが日常生活でどのような生活・行動をしていて、どのような課題を抱えているのかを特定するにはインタビューが不可欠ですね。

― ユニーリサーチをご利用になっている企業には、大手企業からスタートアップまでいらっしゃいます。

ユニーリサーチは裾野が広いサービスで、新規事業開発では大企業からスタートアップまで、その他にも広告代理店やデザイン会社、コンサル会社といった業界でもご利用が増えています。昨今ではマーケティングや事業開発の領域で影響力を持つ方々が提唱していることもあり、これまでのプロダクトアウトからマーケットインによるモノづくりへの転換が注目されるようになりました。ユーザーや市場のニーズが多様化する中、企業ではリサーチ機能を内製化する動きが見られています。

― ユニーリサーチではサービスの質をどのように維持していらっしゃいますか?

サービスの質を支えるのは、インタビューを受ける方々です。利用規約の設定や企業によるユーザー評価システムを通じて不適切な参加者の登録を防ぎ、インタビュー相手としてふさわしい方を選別しています。

サービス改善から、バリュープロポジションの定義まで寄与する複業人材

― 浜岡さんのご経歴をお聞かせください。

私が新卒で入社したLIFULLには、自分のアイデアをプレゼンして新規事業を立ち上げられる「SWITCH(スイッチ)」という社内公募制度がありました。当時、私は教育事業を起案して運よく採択されましたが、まさにプロダクトアウトを地で行ってしまい「事業を立ち上げては潰し」を繰り返し、最後に行き着いたのがリサーチサービスでした。

ユーザーへの理解不足やリサーチの必要性を痛感した経験から「これは自分だけではなく、事業づくり全般に共通する課題ではないか」と考えるようになりました。そこで、「超簡単にリサーチ相手を探せます」というコンセプトで営業してみたところ予想以上に前向きなご反応を頂いて受注できました。この実体験がユニーリサーチの立ち上げに繋がりましたね。「よりオーナーシップを持って、人生をかけて事業を成長させていきたい」という想いからLIFULLの経営陣に相談してスピンアウトしました。

代表取締役CEO 浜岡 宏樹さんと取締役CTO 小賀野 翔大さん

― 現在(2024年4月)、プロダクトフォース社には何名いらっしゃいますか?浜岡さんが複業人材を採用し始めた経緯も教えてください。

正社員と複業人材を含めて15名に関わっていただいています。複業人材を採用する理由は3つあり、まず、私たちにはないスキルを持つ人材をチームに加えたいからです。

2つ目に、プロダクト中心の事業では優れたプロダクトをつくることが成長の鍵を握るため、開発を複数ラインで並行することが重要。当初、共同創業CTOのエンジニアが1人でデザインから機能実装、企画までを担っていましたが、開発体制がスケールしないため、PMやデザイナー、エンジニアを中心に複業としてご参画いただき、マルチトラックで機能開発を進めています。

3つ目に、アーリーステージのスタートアップとして、戦略が流動的に変わるステージでは正社員採用で固定費が増えるリスクを避けたいからです。PMF(Product Market Fit。顧客が満足する商品を最適な市場で提供できる状態)が確立し、長期的な戦略が確立されるまでは正社員採用は必要最小限にする方針です。

現在の事業規模では、複業人材でもリファラル採用をすべきだと考えています。コミュニケーションが取れる方や信頼できる方からの推薦は信頼性が高く、採用も効率化できますね。求人サイトは広範囲にリーチできますが、さまざまな方がエントリーする点から採用コストに見合わないケースがあります。

― プロダクトフォース社で活躍する複業人材には、どのような方が多いですか?

サービスの方向性やビジョン・ミッションに共感してくれる方や、プロダクトづくりや事業推進の難しさを経験した方がいます。皆さんはリサーチの課題を解決したい、事業を強化したいというマインドで活躍してくれています。

― 複業人材の方が活躍しているエピソードをお聞かせください。

ある複業人材の方からの提案で、ユーザー側のインターフェースを大幅にリニューアルしました。「インタビューに答えるだけで報酬がもらえるなんて革新的」と絶賛しつつ、「もっとこうやったら応募したくなります」「こんな情報があれば安心して使えます」と実行可能な改善案を15〜20個出してくれました。私たちはデザイナーではないため全ての提案をUIに反映させるのは難しかったんですが「ぜひこのアイデアを実装したいです」と言ったら3〜4日後にはデザイン案を頂き、約2週間で新しいインターフェースを実装していただきました。

また、マーケターとして採用した方は、彼の提案によって個人ユーザーに対する施策で活躍してくださっています。個人ユーザーに向けたバリュープロポジション(顧客に提供する価値の組み合わせ。 プロダクトのメリット、自社の価値や独自性を顧客に伝えて価値を高めること)の定義が不十分だったことに気づき、ユーザーインタビューを実施して個人ユーザーに提供する価値を明文化しました。結果、社内のコミュニケーションが円滑になり、プロダクト開発でもこのバリュープロポジションを意識するようになりました。

効果的な複業人材採用を目指すなら「ためしに協業してみよう」

― 今後のプロダクトフォース社の事業戦略をお聞かせください。

誰もが簡単に、あらゆる方法でリサーチが可能なユーザーリサーチプラットフォームに進化させていきます。また、ユーザーへの理解を深めるために、今後はさらに多くの手法で誰でも気軽にリサーチできる手段の提供と、それを実現するAI活用を考えています。

― 複業に興味を持っているビジネスパーソンに向けてメッセージをお願いします。

まずは複業を試してみるべきではないでしょうか。ただ、複業はあくまでも手段にすぎず、本業で挑戦できる余地があればそれを優先するべきです。それでもなおご自分の可能性を広げたいなら、環境を変えるために複業を考慮してもいいですよね。

キャリアを「収束」と「発散」で考えると、複業は「発散」には有効ですが「収束」には向かず、全ての問題を解決するわけではない。「隣の芝生が青いから」ではなく、現在の状況に即した判断が必要です。「発散」のフェーズになると、複業はリスクを抱えずに次のステップに進める有効な手段となります。ご自分のキャリアを一度振り返り、どちらが適切なのかを選択することが大切だと思います。

― ありがとうございます。複業人材をまだ採用したことのないスタートアップ・企業にもメッセージをお願いします。

現在、多くの企業にとって正社員採用が難しくなっているため、新たな代替手段として複業採用は必要不可欠ですが、実施する際には「使い分け」が必要です。複業人材に任せた方がいい仕事とそうでない仕事を把握するには、実際に複業人材と協業してみることです。私たちも実践を通じて、適切な任せ方や自社で行うべき仕事、複業人材に参画していただく利点を明確にしました。活用方針さえ確立してくれば、複業採用の効果を実感できるのではないでしょうか。

― 最後に、プロダクトフォース社ではどのような方を募集していらっしゃいますか?

私たちはプロダクトの会社として、ものづくり領域のデザイナーやエンジニアを常に求めています。プロダクトづくりに課題を持ち、それを解決しようと挑戦しているスタートアップにジョインしたい方はぜひお気軽にご連絡ください(プロダクトフォース社の採用ページはこちらです)。

― 浜岡さん、お話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

(取材・文:佐野 桃木)

※ 複業人材の採用についてご質問やご希望のある企業の方は、こちらよりお問い合わせください。
「おためし複業」事務局: otameshi_fukugyou@atomica.jp