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山内マリコさんの『さみしくなったら名前を呼んで』を読んで、これほど「分からない」と思った小説は初めてで、だから、逆にむしろ清々しかった。

女心が分からない。

ずっとそう思って生きてきたし、実際、そう面と向かってなじられた経験もある。

「ひらのさんは、本もたくさん読むし、頭もいいのかもしれないけど、『わたしの気持ち』はまったく分かってないよね」

そう言われて、こっぴどくフラれたのは、いつのことだったか。

いや、頭は別に良くないよって、心の中で小さく反論した僕は、その時点で、まさに「女心が分からない」男だったのだろう。

ついでに、そのとき、「ちなみに、僕があなたを傷つけてしまったのは、例えばどんなときだった?」と質問した(メンタル強い!)僕に対して、彼女が具体例をいくつか挙げてくれたのだが、そのどれもがあまりに「分からなさすぎて」、僕は女性とお付き合いすることに対して、本当に自信をなくしてしまったものだ。

そんな僕だから、(江國香織を筆頭に)女性作家の作品を読むときには、「これって、僕は素敵な作品だと思うけど、まったくもって何も分かってないんじゃないか」という思いが常に拭えない。



山内マリコさんの『さみしくなったら名前を呼んで』を読んだ。

昨年読んだ、男性を主人公にした短編集『選んだ孤独はよい孤独』がめちゃくちゃ良くて、ならば本業?の女性を主人公にした作品を読んでみようかと、同じくタイトルに惹かれた本書を手に取ったわけだけど。

結論から言えば、まったく分かりませんでした。笑

いや、ほんと、これほど「分からない」と思った小説は初めてで、だから、逆にむしろ清々しかった。

だって、それって、つまり、そういうことでしょ?

でも、じゃあ、つまらなかったのかと言えば、そんなことは全然なくて。

本書を読み終えた僕は、「わたしの気持ちを分かってない」と僕をなじったり、僕が「めんどくせえな」と辟易したかつての恋人たちと、今なら優しい気持ちでお付き合いすることができるかもしれないのにな、という幻想を抱いて少し残念な気持ちでいる。

ちょっと、これは、女性読者の感想を聞いてみたい気もするんだけど、きっと「めんどくせえな」と後悔するだろうから、やめときます。

でもどうしても言いたくて聞いてほしいんなら、少しくらいなら我慢して聞いてあげようかなって、すみません、もちろん冗談だよ。

あ、最後にひとつだけ。

男はみんな、岡村ちゃんがいちばんすきなんだぜ。っていうのは偏見ですからね? 山内マリコさん!




#タイトルまじ秀逸

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