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「経済産業省 DXレポート」を振り返り、DXを考える #4

前回に続き、経済産業省や独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)から公開されている有益なレポートやガイドラインを振り返りながら、国が提示しているDXの本質や現状、目指す方向性からDXのことを考えます。

今回は経済産業省が出している「DXレポート」について第4弾です

▼前回までの記事はこちら

(おさらい)DXレポートとは?

「DXレポート」とは経済産業省が2018年から定期的に発行しているレポートで、DXの提言、日本の現状・課題、DX推進の要諦・方向性などを示す文書です。本レポートはこれまで4回出されており以下のようなストーリーとなっています

2018 DXレポート1.0 ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開
 → レガシーシステムから脱却し、経営の改革の提言
2020 DXレポート2.0(中間取りまとめ)
 → レガシー企業文化から脱却し、本質的なDX推進へ
2021 DXレポート2.1(DXレポート2追補版)
 → 目指すべきデジタル産業の姿・企業の姿を提示
2022 DXレポート2.2(概要)
 → 「デジタル産業」への変革に向けた具体的な方向性やアクションを提示

2018年に初版が出され、ITシステム「2025年の崖」として警鐘を鳴らし日本企業にDX推進を提言したところから始まっています。実際の資料(概要PDF)は、次のリンクから参照ください。本記事では実資料を更にサマリしなおしたものを基に振り返っていきます。

参考)DXレポート実資料(概要PDF)

DXレポート2.2(2022)「デジタル産業」への変革に向けた具体的な方向性やアクション

DXレポート2.1では、デジタル産業とそれを構成する企業の姿が定義され、DXを推進した先の未来産業イメージが示されました。これを受けて、DXレポート2.2では、「デジタル産業」への変革に向けた具体的な方向性やアクションが提示されましたのでその内容を振り返っていきます。

DX推進の取組状況と変わらない効率化中心の投資状況

経産省の調べによると2022年時点では「2025 年の崖」問題の克服状況は順調ではない状況ではありますが、DX 推進指標の自己診断に取り組む企業数や成熟度は増加傾向にありDX 推進は着実に前進している状況でした。
一方でデジタル投資の内訳は、「既存ビジネスの維持・運営」に約8割が占められる状況が継続しており、DX推進に対して投入される経営資源が企業成長に反映されていない可能性がある点とDXに取り組んでいない企業もいることを踏まえ、引き続き状況は深刻な段階にあるとの見解が示されています

DX推進は着実に前進だが、効率化中心の投資状況は継続

バリューアップ(サービスの創造・革新)の取組状況

バリューアップ(サービスの創造・革新)の取組で、成果のある企業は 1 割未満に留まっており、サービスの創造・革新(既存ビジネスの効率化ではない取組み)の必要性は理解しているが、 目指す姿やアクションを具体化できていないため、成果に至らず、バリューアップへの投資が増えていかないのではないかという仮説が述べられています。

バリューアップの取組で成果を出している企業は1割未満

DXを成功させるための方向性

DX推進で成果を出している企業の傾向から、目指す方向性としては、「既存ビジネスの効率化・省力化」ではなく、「新規デジタルビジネスの創出」や、既存ビジネスであっても「デジタル技術の導入による既存ビジネスの付加価値向上(個社の強みの明確化・再定義)」であり 、その結果、全社的な収益向上を達成しているとのことで、デジタル変革の目的をコスト削減から収益向上にシフトしていくべきと提示されています。

DXを成功させる方向性は、コスト削減ではなく収益向上を目的に

業務効率化は進めつつ、軸足は収益向上のために何ができるか。にフォーカスしていくべき。そのためには未来のビジョンやあるべき姿をつくり、それに向けて準備していく必要がある。でもこれが難しいのでしょうね。

デジタルで収益向上を達成する要因

デジタル企業への変革を達成する際には、 CEO/CDO/CIO が DX 推進に関して、ビジョンや戦略だけではなく「行動指針(社員全員のとるべきアクション)」も具体的に示しており、それらの分析と結果共有が、変革アプローチの参考になるのではないかとのことで、収益向上を達成する企業の特徴が提示されています。

  • 全社で一斉にトップダウンで実施する

  • トップはビジョン戦略だけでなく、社員全員に行動指針を提示する

DX推進に関して、経営陣がビジョン・戦略だけでなく行動指針も具体的に提示していく必要がある

スモールに初めて横展開、とよく言われますが、DXは全社で一斉にやらないと実現ができない。ビジョンや戦略、社員全員が変わる必要があるため経営から変える必要がある。難易度が高いように聞こえるけど、大企業も取り組んでいるので、中堅・中小でできないはずがない。というか大企業よりもやりやすいはず

2つの要因としては、日本固有の産業構造である、ユーザ企業xベンダー企業の「低位安定」関係を脱し、同じ価値観をもつ企業同士が相互に高めあっていく関係へ変わっていく必要性が述べられています。

低位安定の関係を打破し、価値共創関係へ

同じ価値観をもつ企業同士がつながるためには、自分たちの価値観を外部に対して発信していく必要があり、企業の取組の発信や人的資本経営の開示が良い機会になるのではないか

既存DX政策体系 +デジタル産業へ向けた取組補強

DX推進をより具体で、本質的な取り組みとするために、政府からDX成熟度レベル体系が定義されています。何から取り組むべきかわからないという企業は、これを利用して自社の成熟度を評価・検証し、公的に認定されることを目指すのがよいでしょう

政府がDX成熟度を測る基準を提供している

参考)デジタルで収益向上を達成する企業の特長

まとめ

以上のようにDXレポート2.2では、「デジタル産業」への変革に向けた具体的な方向性やアクションが提示されました。企業は、投資の目的をコスト削減かバリューアップ投資にシフトし、デジタルで収益向上を実現するために、トップダウンで一斉に変革を実施していく必要があると改めて示されました。

現在2024年では、当時よりDXの取組は進んでいると思いますが、企業同士の価値共創や、共通プラットフォームの浸透はまだまだこれから本格化していく段階なのではないかと考えています。

未だDXに取り組めていない、取り組みたいがどうすればよいかわからないという企業は、経済産業省から提供されている有益な方針書、ガイドラインを活用して、まずは、DXとは何か?理解を深めていくところからはじめ、できるところから自社の変革を進めていくとよいでしょう。ただし、DXレポートでも述べられている通り、DXは組織変革を伴う取組のため、経営層からトップダウンで実施していく必要があるため、経営層を巻き込んだプロジェクトとして進行できるようにまず調整が必要だと考えます。

参考)経済産業省の提供するDX実現に向けた施策・資料

4回にわたり、DXレポートの振り返りとしていきました。現時点ででているレポートは以上ですが、これらの内容を踏まえて、引き続きDXについて考えていきたいと思います。


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