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バイプレイヤーズ 〜泥流地帯の12人〜(2)武井富
母ちゃんが居なくなった日…ですか? はい、とてもよく覚えています。本当にはっきりと。
いとこの家で遊んでいたら、叔母さんが「あんたらの母さん、もう家におらんわ」って。はい、突然に。弟二人と慌てて飛び出しました。私は小さい妹を背負ったまま。半里ほどですか、家までの道を全力で走ったんです。あんなに必死に走ったのは最初で最後かもしれません(笑)
でも、走りながら色んなこと考えてしまって。拓ちゃんも
武井シンを憎む前に 〜泥流地帯考察〜
被災しなかったカジカの沢に住む武井シンが「心がけがいいから助かった」と幾度か口にしたことで多くの被災者を傷つけ、憂悶させます。
「死んだ者は心がけが悪かったというのか」
「死んでいない深城は心がけが良かったというのか」
人は誰しも無意識に、悪意なく人を傷つける(傷つけている)という罪に触れられ、物語後半の重要なテーマにもなっているわけですが、もちろん「こういうことを口にせず生きるべき」とい
性と聖〜 福乳に与えられた役割と三浦文学のエロティシズム
さて『泥流地帯』を読み解く上で私の前に立ちはだかる大きな壁。ストーリーだけでなく、複雑にこじれた耕作の恋愛観や女性感、さらには信仰に至るまで、もろもろ考察するに避けては通れぬ「福乳」つまり「福子の乳房」問題。
なんというか、耕作が福子の青白い乳房の記憶をご神体の如く扱っておるのですが、私もそれに釣られているのか、これまで深く考えないように無意識に避けていたような気がします。といいつつこう