How old is 加奈江ちゃん 〜泥流地帯考察〜

 どうでもいいことではあるのですが、長いこと修平の娘の加奈江ちゃんが耕作より年上だと勘違いしていたらしい、ということに気がつきました。
 よくよく読んでみると「従妹」の加奈江、と表現されていますのでこれは明らかに耕作より年下ですよね。加奈江のきょうだいの貞吾は耕作の一つ下なのでさらに下(もうこの時点で「えっ貞吾が兄だったの!?」と驚愕しちゃうんですが)、それでもさすがに良子の同級生以下ということはなさそうですから、耕作より二ないし三歳下(良子は耕作の四歳下)であると思われます。
 いやあ、前の記事で耕作より一、二歳年上の加奈江がちょっと嫁に行きそびれている感じで云々みたいな考察をしましたのでめちゃ恥ずかしいですよ。

◼️それも勘違いでしたね
 …と思いつつ加奈江の登場シーンを読み返してみたのですが、 さらにまた勘違いだったようで。
 正編「日追鳥」第二節に拓一や耕作、福子らが菊川先生宅を訪問し、結婚を祝う場面が描かれています。誘い合って続々と集まる顔ぶれや母校に再敬礼を向ける子供たちの姿、そして何より「おーい、卒業生たちが来たぞ」という菊川先生の言葉から、この日集まったのが日進分教場の卒業生であることがわかります。

 学校へ向かう沢への道を曲がる前に「提灯が六つ七つ」、それからさらに曾山兄妹らが加わりますので相当な人数に膨れ上がっていますが、この場面で名前が出されているのは拓一、耕作、国男、福子、権太、そして加奈江。

 えっ加奈江!?

 この時耕作が高等科一年。貞吾は一歳下で尋常科(分教場)在学中ですのでもちろん参加していませんし良子は言わずもがな。しかし加奈江が同行しているとなると、何らかの事情で特別参加ということでしょうか。良子ばりに「わちも行くぅー!」なんて兄の貞吾にねだって特別に連れて行ってもらう、なんてことも考えられそうですが、当の貞吾が参加していませんでそれは無さそうです。

 そう(オープン参加)でないとすればこの時点で加奈江はすでに尋常科を卒業している、ということになります。
 耕作から見て「従妹」つまり年少のいとこ、なおかつこの大正十年の時点で尋常科を卒業しているとなると…

 加奈江ちゃんは耕作より後に生まれた(早生まれなど月齢による)同級生?ということになりますか。そして加奈江が姉で貞吾が弟。
 「女性のいとこ」にあたる漢字は従姉と従妹だけで同年齢に対しては誕生日で判断するようですし。
 それだと色々辻褄が合いますね。よくよく読んでみると確かに耕作や福子と加奈江が同級生っぽい記述は無いのですが、特段それを否定する記述もありませんし、むしろ加奈江と福子の間には二、三歳の年齢差を感じさせない親密さが描かれていましたから。たぶん。

 ただ同級生だとすると耕作が三十五銭を失った正月のあの日も、耕作、福子、権太(以上六年生)、貞吾(五年生)、良子(二年生)の五人で出かけているのですが、このメンツで加奈江がいない(誘っていないor来なかった)のは何故か…。なんて疑問も湧いてきます。まあ加奈江の名前が初めて登場するのはもう少し先の、中学を断念した耕作に修平が「百姓に学問なぞいらん」と言い放ったことを思い出す場面ですし、この時点では「加奈江の設定はなかった」などという無責任な解釈もできますが。

 結論:加奈江は貞吾の姉で耕作・福子・権太の同級生

 貞吾と加奈江の名が並べられる時、後半で逆転するものの前半は「加奈江と貞吾」など加奈江が先行することが多いのも気になっていたんですよね(貞吾が先:五回、加奈江が先:四回)。もちろん私の勝手な決めつけではありますが…ああ、腑に落ちた〜。


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