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CSHACKの代表の藤本さんに登壇を依頼いただき、カスタマーサクセスvs営業のイベントのモデレータを務めることになりました。
カスタマーサクセスと営業、両輪で本格的に発信をしているのはたぶん自分しかいない自負があります。
しかし、カスタマーサクセス vs 営業のテーマをじっくり考えたことはありませんでした。

私の情報収集をしている肌感覚としては、目先では営業とカスタマーサクセスが「ぶつかり合ってる」という相談はあり、これは日本も米国も欧州も変わらない共通のようです。
ただし、米国のSaaS経営の潮流的には営業とカスタマーサクセスが「溶け合っている」という側面もあります。
相互尊重のうえ、営業とカスタマーサクセスどちらの能力を持ったビジネスパーソンになったほうが、得です。

この理由を時代の変化も踏まえて解説します。今後のキャリア形成にお役に立てる情報提供が出来れば幸いです。

カスタマーサクセスが売上リターンを期待されるように

私は、2023年の夏に、雑誌コールセンタージャパン様の連載で、SaaSバブルの崩壊とそれに伴うカスタマーサクセス2.0の記事を書いたことがあります。
かねてからマッキンゼーが唱える「カスタマーサクセス2.0」は、正直に言えばコンサルとして売り先を拡張させたいポジショントークであり、2.0と言うには実態と離れていると思っています。

私がカスタマーサクセス時代が1.0→2.0へと抜本的に変わったと感じるのは、2021〜2022年に発生した、SaaS企業の時価総額が一気に下がってからの変化です。

カスタマーサクセス1.0の背景にあるSaaSベンチャー

カスタマーサクセスは、日本では2010年代後半〜2020年にSaaS企業の急成長と共に生まれ、拡大した職種です。ベンチャーといえばBtoBと言わんばかりにたくさんのSaaSが生まれ、そこにはカスタマーサクセスがアサインされました。

このタイミングのSaaS企業は成長期待が非常に高く、米国の既にある大きな市場が日本にも生まれることが期待され、VCから大型資金調達が行いやすい状況でした。
売上成長率と市場ポテンシャルが大きければ赤字でも資金調達が出来たため、コストを抑えずエンジンいっぱいで、新規顧客をどんどん伸ばしていくため採用投資も旺盛に行われていました。

SaaS好景気のカスタマーサクセスは、顧客数を増やし続けても安定するための調整弁の役割を果たしていたのです。顧客数が急拡大するので、このダムを崩壊させないように絆創膏のような役割を担っていました。

黒字経営が求められるカスタマーサクセス2.0

しかし、そのSaaS市場の好況は一転しました。今は以前のように勢いよく資金調達をして、赤字覚悟で新規顧客をどんどん取るような動きは難しくなっています。
利益率を見ながら、黒字経営で会社を伸ばしていく、健全経営が求められるようになりました。
もともと上場企業は黒字企業が評価される側面が強くあるので、健全な形に戻ったとも言えるでしょう。

黒字経営をするには、人数少なく、高い価値で(高い取引単価で)顧客と契約を結ぶ必要があります。これまでのカスタマーサクセスは、正直、赤字上等でかなりの人件費がそこに割かれていた状況でした。

しかし、今後はカスタマーサクセスは社員数はなるべく省力化、テック化へ。その分、人のリソースは出来るだけ単価を上げるための営業アクション当てるのが世界的な潮流になっています。つまり、カスタマーサクセスは営業をしなければならないのです。

カスタマーサクセスは営業から顧客を動かす力を学ぶべき

カスタマーサクセスが営業から学ぶべきは、シンプルに営業力です。
語弊を恐れずに言えば、カスタマーサクセスは「やると決まったことをやってもらう仕事」です。顧客はやると意思決めをしているので、1から伴走していく仕事になります。

しかし、営業はそもそも顧客がやると決めていません。0の状態を1にしなければならないのです。この0から1にするのと、1を伸ばしていくのとでは提案にかかるエネルギーは全く違ってきます。提案の成功確率が低いのはどちらか?それはもちろん、0から1にする営業のほうが難しいです。

この営業の難しさを学ぶために、2023年はできる営業マンの方に数多く会いました。書籍を出されているような方や、営業の責任者やトップ営業、大手企業の営業役員や営業戦略のトップなども話を聞きにいきました。

強い営業の特徴とは?

強い営業の特徴は、私の感想ですが、まず営業マン自体に自信がある。そして提案に筋が通っている。この営業の話なら信用しよう、この人は好きで付き合っていきたい、人格面も優れている。

つまりスーパーマンなわけですが、何故こういう方が売れてしまうかと言うと、企業がやっていないことを始める、ということにかかるエネルギーは相当にいるわけです。
とすると、仕事が出来て自信に溢れる、人柄も優れた営業。顧客にエネルギーを与えられる人こそが、相手の心と行動を動かせるのです。

カスタマーサクセスは営業から逃げてはいけない

カスタマーサクセスは「0から何かを始めさせるために必要なエネルギッシュな面」を営業から学ばないといけません。

カスタマーサクセスで売上を上げるということは、プランを上げたり、機能を増やしたり、部署を広げたり、他の製品も併用したりと、これまでの延長ながらまだやっていないことをやろうと提案することが求められます。

これを逃げずにやれるカスタマーサクセスと、営業はしたくないと逃げるカスタマーサクセスとで評価に差が出てくるでしょう。

本物の営業には強さと熱量がある

今年は営業について深く考えて、たくさんの人の話も聞きました。営業職は人口が多いので、正直、営業には変な人もいます。悪い営業だなと思う会社も確かにある。
ただ、それはそういう人や組織があるだけで、営業活動自体は建設的で、加えて高い熱量があるものだと私は思いました。

新しいことをしましょうと提案するわけなので、営業は一生懸命に提案を考えるわけです。断られたとしても、自社や自分なりに叶えられるというポジティブな提案を、真摯にやり続ける心の強さも必要です。
エネルギー、負けない力、曲がらない気持ち…こういった側面は、営業職の方の方が、カスタマーサクセス職より優れていると思いました。
ですので、リスペクトを持ってどのように顧客に動くきっかけやパワーを与えているかを学ぶべきです。

営業に求められる「カスタマーサクセス提案」

しかし、営業職の人はカスタマーサクセスにどう考えているか、実際のところ、カスタマーサクセスに本当に興味を持っている営業職の人はほとんどいないです。
証拠として、openpageのカスタマーサクセスに関するイベントやホワイトペーパーは、ほとんどがカスタマーサクセス部門ないしは営業部門のカスタマーサクセスチームが見ています。カスタマーサクセスに関わっていない営業職の人が調べるケースは5%にも満たないです。

人は自分の職種にしか興味がない。営業はカスタマーサクセスに興味がない。

当たり前と言えば当たり前なのですが、営業部門の方でカスタマーサクセスの情報収集をしている人は少数派です。
そして、これも2023年に入りわかりましたが、私の発信内容が営業に関する発信に切り替わったら営業部門の人が反応する、同じopenpage社の発信なのに強く傾向がデータから出たのです。

営業もカスタマーサクセスも、双方に相手の業務ノウハウに関してはそれほど情報収集の意欲はなく、自分ごと化する内容であった場合において学んでいるわけです。

人は違う部門の話に興味をあまり持っていない。これは実は自分が人材業界にいたときも感じました。

自分の職種以外のことは「見えない」

私は部署横断的な企画部門や新規事業部門に落ち着いていたことがキャリア上多いのですが、部署横断的に見ても、やはり部門間のセクショナリズムは強くあり、業務経験や知識から「見えない」「見てない」ゆえに発生する衝突はあるものです。

プロダクト部門が営業売上を上げる観点を考慮できない、一方で営業部門が営業だけの意見を開発に押し付ける。といったようなことは頻発しています。
本記事は「営業 vs カスタマーサクセス」ですが、職種が異なれば、どんな部門であっても、目標・業務・経験・志向性などが異なるので、本当の深いところまでは理解し合えないものです。

それでも営業がカスタマーサクセスを学ぶべき理由: 世界的な不況における営業難易度の向上

ただし、隣接する職種領域は、学んでおいて損はありません。話を戻すと営業はカスタマーサクセスから学ぶべきでしょう。

なぜなら、現在、米国ではSaaSベンダーの受注率や解約率が悪化したニュースが多く出ています。テクノロジー企業の販売不振は資金調達力の低下にも繋がるため、レイオフを実行する企業が後を立たない状態です。

どの企業もコストカットに走った結果、営業商談のシーンにおいて、顧客側がIT製品についてROIを厳しくみるように変わってきています。

実際に投資に対してどれだけ効果があるか。その効果は再現性を持って自社で実現できるかをかなり懐疑的に見ているのです。

顧客のカスタマーサクセスを実現する具体的なソリューション提案が営業にも求められる

となると、営業が、表面的な表現で「効果があります」と提案するだけでは、全く受注ができないわけです。この結果は具体的には受注率の低下に現れます。受注率の低下は社内投資意欲の減退、社内説明コストの増加(社内説明の難しさ)に影響します。

社内説明コストが高まるとはどういうことか。御社はこうすることで、このようなマイルストーンでこんな効果が実現される…といったような、契約後の絵姿まで考えて提案しないと、顧客は納得して購入しなくなるのです。
顧客も顧客で社内に説明するのが大変なので、営業資料の読み上げだけされても、自社だとどう使うのか?どんな効果があるのか?を説明しきれません。

実は営業ノウハウの多くは、本質的なカスタマーサクセス提案とは言えない

私は2023年、営業本を50冊ほど購入してチェックしました。
この、顧客の納得して社内に説明できる本質的な営業提案という観点で書かれた営業本は、1割くらいだったと思います。

営業のいくつかの有名フレームワークも対応しきれてません。例えばSPIN。ROIやカスタマーサクセスを説明しきることを考えたら、SPINはそもそも物足りないです。
SPINは4つの観点の質問するフレームワークですが、今の営業シーンにおいては、質問だけではなくて問題と解決に関する仮説まで自分の頭で考え、顧客と議論して納得させてないといけません。

顧客が購買する=投資する=成長するための支援シナリオを営業が仮説として考える

顧客からすれば何かを購買するのにロジックが必要になるので、ただ質問するだけではダメで提案力が必要です。
最近の営業の本は、この提案のノウハウに触れた仮説営業の本が増えてきました。鈴木 眞理さんや城野 えんさんの仮説営業の本がそうで、どちらも書籍の売上が好調のようです。

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(ちなみに、鈴木 眞理さんは内に秘めたエネルギッシュさ、城野 えんさんは人目見ればわからやすくエネルギーに満ちた人、という点で、営業力抜群な方たちです。)


法人営業の仮説営業力を高めるならカスタマーサクセスを学ぶべき

書籍は、顧客に対する仮説を考えて提案しようという話が書かれているのですが、仮説だけでなくて、解決策と具体的な進め方を事実として提案できるようカスタマーサクセスを学ぶとより良いでしょう。まだ知らない方は、私の書籍である実践カスタマーサクセスを読むことをおすすめします。

売るのではなく、購入する、そして購入したその後に製品を触って、製品運用が上手くいき、顧客が成功していくまでのシナリオを話せる。このスキルはカスタマーサクセスの知識が必要です。

営業がカスタマーサクセスを学べばセールストークが曖昧な内容にならず、具体的な課題解決を提案出来るようになります。ソリューション営業、コンサルティング営業の力も磨かれます。

そもそも法人営業は大手顧客との高単価取引が出来る人のほうが市場価値が高く、となるとカスタマーサクセスも押さえた本物の提案をできるべきでしょう。

営業もカスタマーサクセスも横断してマネジメントするCRO

そもそもSaaS企業の出世は、営業/カスタマーサクセス責任者→CRO/CCO→CEOというコースが米国で有名になってきました。つまり、営業とカスタマーサクセスのどちらもマネジメント出来る方がSaaS企業の経営者になれるのです。
hubspotのヤミニ・ランガンさんもCCOから代表取締役になっています。


経営者の視点に立てば新規営業も既存カスタマーサクセスをマネジメントしなければならない

SaaS経営は新規と既存どちらもバランスを取る必要があります。SaaSのベンチャー企業は上場すると、新規顧客の伸びと既存顧客の伸び、どちらも計測して株主に報告しています。
そのため、SaaS企業を経営するならどちらの指標や業務を理解する必要があり、営業だけ出来る、カスタマーサクセスだけ出来るだと本当の意味での出世や成長にはキャップがかかります。
経営者を目指すのであれば、THE MODEL全体を見通せるようなビジネスマンにならないと事業経営は出来ません。

キャリアを突破する人材はCEO志向

私のビズリーチの業務経験からは、単一職種特化系のキャリアは一定の年収で止まってしまいます。しかし、複数職種の横断でキャリア形成している方は経営脳が養われ、年収の限界を突破しています。
経営層に近づくほど、会社全社の動きを把握しなければなりません。
会社で本当に出世するには、一定ラインを超えたその後に、複数の職種を見れるようにすることから避けられません。

個人のキャリアを考えると、vsとして自職種のほうが上と張り合うのではなく、どちらも出来るようにして経営目線を養ったほうがいいでしょう。

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