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【#74】店名に『デブ』って、どうなんですかねぇ
平成。
それは「ポケットビスケッツ」がミリオンを達成するような時代。
この小説は、当時の事件・流行・ゲームを振り返りながら進む。
主人公・半蔵は、7人の女性との出会いを通して成長する。
中学生になった半蔵が大地讃頌を歌うとき、何かが起こる!?
この記事は、連載小説『1986年生まれの僕が大地讃頌を歌うとき』の一編です。
1998年(平成10年)11月1日【日】
半蔵 小学校6年生 12歳
「桃の天然水、飲むぅ?」
おは。今日は【桃の日】。桃の日ってか、桃の天然水の日や。桃天美味しいよな。中学の部活の時よく桃天飲んでた。ほんで夏場とか桃天凍らせてたんやけど、最初めっちゃ甘いのに最後はほぼ水の状態になるんよな。ってか桃天って、日本たばこ産業のJTが販売してたんやで。知ってた?#桃の日 pic.twitter.com/cht8jijVDM
— レオ@140字の遊び人(★万華鏡写輪眼を開眼しました★) (@reo_miryoya) March 2, 2022
【※】
1996年に発売された清涼飲料水。
1998年に、華原朋美(当時若者から絶大な支持を得ていた)がCMに出演したことで爆発的にヒット。
CM中で華原が連呼する「ヒューヒュー」が当時流行語となった。
「いや、いらないよ・・・・・・」
花蓮と会うのは6年ぶりだというのに、久しぶりという感じがしなかった。
まぁ、手紙のやりとりはしていたし、プリクラや写真で顔を見ていたから、案外そういうものなのかもしれない。
「映画は12時半からだよね。先にご飯食べよっか。何がいい?」
僕らは、岐阜市の商店街、柳瀬に来ていた。
柳ケ瀬#岐阜 #柳ケ瀬 #商店街 #アーケード #カメラ好きな人と繋がりたい #写真好きな人と繋がりたい #額装のない写真展 #キリトリセカイ #カメラと旅する岐阜市 pic.twitter.com/OacUBcrwf3
— たく@SYC 岐阜 (@taku_koushien) March 12, 2022
ここは映画館もゲーセンもある、素晴らしいところだ。
「平日じゃないから、ハンバーガーは半額じゃないしなぁ・・・・・・。花蓮は、何がいい?」
【※】
1998年の初夏、静岡から始まったマクドナルドのキャンペーン。
当時130円だったハンバーガーが、平日限定に65円に値下げされた。効果は絶大で、ピーク時の売上は49.7%も増加した。
私も、この時期にハンバーガーを母に買ってきてもらった記憶がある。
ハンバーガー単体ではちょっと物足りないので、レタス、ケチャップを追加してもらい、モリモリと食べた。
「アタシ、行きたいとこあるの。ついてきて!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『中華そば 丸デブ総本店』
暖簾には、本当にそう書いてある。
![](https://assets.st-note.com/img/1647582263929-UEceeCmTLP.png?width=800)
「変わった名前だな・・・・・・」
「安くておいしいらしいわ。さぁ、並ぶわよ!」
【※】
『中華そば 丸デブ総本店』
岐阜県岐阜市に実在するラーメン店。創業は大正6年。
どんぶりからあふれんばかりの麺とスープのインパクトは、特大である。
岐阜のラーメンといったら丸デブ紹介してほしいとこだが、無理だろうなw pic.twitter.com/VaBdnKYQuC
— ご隠居@SSTR2022 5/21参加 (@furusan21) March 17, 2022
注文し、5分ほどすると中華そばが届いた。
「これは・・・・・・!」
「おいしいわね」
醤油味で、あっさりしたおいしさである。
「そにしても昨日はびっくりしたぞ」
「うん、驚かせようと思って。用事が早く済んだから、小学校に行っちゃったわ。でも、おかげで勝てたでしょ?」
運動会のリレーを思い出す。
第3コーナーに差し掛かるところで、花蓮の「コーナーの先を見ろ!」という声援が聞こえた。
「花蓮の言うとおり、コーナーの先を見たらなんか走りやすかったぞ」
「姿勢が良くなるんだってさ。感謝しなさいよ」
花蓮のおかげでコーナーで天光寺を抜くことができた。
「おぉ、感謝してる。まさか運動会を見に来るなんてな」
「用事が早く終わったから、驚かせようと思ってね」
結果、白組は逆転。
優勝したのだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1648771102322-HhbC15BYKx.jpg?width=800)
「いい時間になってきたし、映画館に向かうわよ!」
花蓮は、変わっていない。
強引で、自分のペースで先に進める。
だが、不快なんてことはなく、むしろ一緒にいて心地よかった。
ただ、通行人が、花蓮の方をチラチラ見ているのが気になる――。
「ついたわね」
岐阜市の映画館に着くと、お目当ての映画のポスターが飾ってあった。
#今日は何の日
— あぷ🍀 (@GB_lovecinemas) October 30, 2019
21年前の1998年10月31日
【踊る大捜査線 THE MOVIE/湾岸署史上最悪の3日間!】公開日🎬
連続テレビドラマ『踊る大捜査線』初の劇場版。
観客動員700万人、興行収入101億円で邦画年間興行収入1位を記録した。#日めくりロードショー#映画好きな人と繋がりたい#1日1本オススメ映画 pic.twitter.com/BXTKitz12p
「これって、ドラマ版見ていないと楽しめないんじゃないか?」
「大丈夫よ、始まる前にアタシが解説してあげるから」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」
「かっこよかったね、青島刑事」
「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」
「はいはい、わかったわよ・・・・・・。ハンゾウの方がハマってるじゃない」
僕は青島刑事のセリフが気に入って、何度も繰り返してしまう。
「このあと、どうする?」
「買い物していこう。適当に、お店をのぞこうよ」
「へぇ、岐阜にもダイソーがあるのね」
「おい花蓮、岐阜をバカにしてるだろ?」
![](https://assets.st-note.com/img/1647584363070-Uk8dVgaAo5.png?width=800)
2019年4月14日/三栄書房
【※】
デフレの波に乗り、100円ショップが急成長した。
食品から日用品まで、あらゆるジャンルの物が100円で買えるという、前代未聞のコンセプトである。
それが主婦の心をつかみ、一気に注目された。
「もう4時かぁ。そろそろ帰らないと」
「東京は、遠いからな・・・・・・」
今夜の遅い時間の新幹線で、東京に帰るらしい。
「あのさ」
「うん?」
ズバズバとものをいう花蓮にしては、口ごもっている。
「最後にプリクラ撮ろうよ」
いつもの強引さはない、普通の誘い方だった。
断る理由はないので、近くのゲーセンに足を運ぶ。
「おぉ!!SNKが作ったプリクラがある!」
「じゃ、これで撮ろっか」
![](https://assets.st-note.com/img/1647584615075-6xTMNvBOil.png)
【※】
格ゲーで有名だったSNKが作ったプリクラの機体。
岐阜県養老郡にある、養老ランドのゲームコーナーで現役バリバリ稼働中である。
「はい、半分こ」
「お、おう」
ゲーセンから岐阜駅まで歩いて向かう。
次に会えるのは、いつになるかわからない。
「そういえば、こっちに帰ってきた用事って、何やったんだ?」
「うーん、聞いててあまり楽しい話じゃないよ。聞く?」
「花蓮が話したくなければ、いいよ」
「いや、半蔵には聞いてほしいかな。歩きながらでいいから」
聞いてわかった。
たしかに、楽しい話ではなかった。
話しながら涙を浮かべる花蓮に、何をしてあげたらいいかわからくて、僕は初めて――
初めて女の子を抱きしめた。
(つづく)
![](https://assets.st-note.com/img/1647584949534-WNnzjxiMt4.png?width=800)
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