見出し画像

【#01】1986年生まれの僕が大地讃頌を歌うとき

平成。

それは「ポケットビスケッツ」がミリオンを達成するような時代。
この小説は、当時の事件・流行・ゲームを振り返りながら進む。

主人公・半蔵はんぞうは、7人の女性との出会いを通して成長する。
中学生になった半蔵が大地讃頌を歌うとき、何かが起こる!?


※ウェブ小説という形態のため、描写は少なめで会話は多めにしました。(その方が読みやすいと考えたため)

1989年(平成元年)9月4日【月】
半蔵はんぞう 3歳 保育園(未満児)




ゲームボーイって、落としても壊れないらしいぞ」

「エッ!やってみよ」

 僕は持っていたゲームボーイを床に落とす。

ガチャっ!
嫌な音が教室に響いた。

「おぃぃ!!!!12,500円もしたんだぞ!」

 

【※】
 ゲームボーイ発売当時(1989年4月21日)の価格。消費税3%込みの価格である。

 ちなみに、日本における販売台数は3,247万台。ファミコンは1,935万台なので、ゲームボーイってスゴイのだ。

『キーワードで見る!平成カルチャー30年史』p11
2019年4月14日/三栄書房



 


ゲームボーイの持ち主、飯田健介イイケンが絶叫する。

「そんなに高いの!?ごめん!!」

僕はゲームボーイを拾い上げ、電源スイッチを入れた。

「動いてくれよ!!」

「たのむ!たのむ!!」

 二人で、祈りながら画面を見つめる。

“Nintendo”の文字が浮かび上がろうとする、そのとき・・・・・・

 

 

「何を騒いでいるのですか?」

 

まずいっ。さくら先生だ。

僕はとっさにゲームボーイを背中に隠す。が、先生は無言で僕の腕を掴んだ。

ゲームボーイは、あっさりと取り上げられてしまう。


「これは、ゲームですね?」

「ダメだと思います・・・・・・」


 下を向いたまま答える。先生は、小さくタメ息をついた。

 これは先生が預かっておきます

「エっ!」

【※】
 攻撃力バツグンの絶望的な言葉。
 『こち亀』の麗子も、両さんのゲーム機を預かることでダメージを与えていた。

『こちら葛飾区亀有公園前派出所』秋本治
106巻p27


 くそう。

落ちたゲームボーイが壊れていないか確認したかったのに。


【※】
 ゲームボーイは、かなり頑丈に設計されている。子供が取り扱うことを想定してあるためだ。

 『全力疾走した自転車カゴから落としても壊れない』のを目標としたと言われる異常な堅牢さを誇る。こういう話を聞くと「任天堂って、とってもいい会社」と感心する。

 湾岸戦争で爆撃されても壊れないすごいマシンとしても有名。


「ごめん・・・・・・」

半べそになっているイイケンに向かって、頭を下げた。

「・・・・・・いいよ。そもそも、オレが持ってきたのがダメだったんだ」

イイケンは、保育園で初めてできた友達である。僕は何度も謝った。

 「もう気にするな。それより、半蔵に見せたいものがある」

 

『ファミリーコンピュータマガジン』p63
1989年8月19日号/徳間書店インターメディア


 「おおッ」


イイケンが取り出しのは、1枚の紙だった。ゲームの雑誌をコピーしたものらしい。

「これ、マリオ!?めっちゃきれいじゃん!」

「そうだろ!?」

 ゲーム画面らしき画像は、一つしかない。だが、鮮やかな色彩にたちまち心を奪われる。

 

スーパーファミコンっていうらしい。ファミコンよりすげぇってことだな」

「この紙、どこでもらったの?!」

「お父さんが買ってきてくれた本をコピーしたんだ」

 

息を荒くしながら、記事を見る。

書いてある言葉は難しくてよくわからない。
だが、“とんでもないやつがあらわれる”ということを本能で感じた。

 

「何見てるの?」

 「!」「!」

振り返ると、女子がいた。僕と同じひよこ組の子だ。

名前は、たしか、水島花蓮かれんさん。

長くて真っすぐな黒髪に、赤いリボンをつけている。

 

「それって、ゲームの紙?持ってきちゃダメでしょ。先生に言うわよ」

「花蓮、ちょっと静かにしてくれ」


 

イイケンは、水島さんのことを下の名前で呼んだ。


 

「この子と仲がいいのか?」

「花蓮とは家が近所なんだ」




どおりで親しいわけだ。


 「イイケンは本当にゲームが好きよね。半蔵もゲームが好きなの?」

「いきなり呼び捨てかっ。まぁいい、頼むから静かにしてくれ」


また先生に見つかったら面倒なのだ・・・・・・。


「いいわよ、静かにする。先生にも言わない。そのかわり・・・・・・

 

花蓮は、僕にそっと近づく。

猫のように大きい瞳が、そこにあった。

 

「明日、うちに遊びに来てね」

 

(イメージ)

エっ!?

 女子の考えることは、サッパリわからん・・・・・・。

 

「あのな、半蔵。花蓮かれんの家に行くとビックリするぞ」

「行ったことあるのか?」


イイケンは、にやりと笑いながらうなずく。

 「花蓮の家、実はな・・・・・・」





(つづく)

次の話→

こちらの連載が入っているマガジンです👇👇


見出し画像は『ファイナルファイト』(1989年 カプコン)です。

出典:youtube→1989 [60fps] Final Fight Cody Nomiss ALL(配信者:Replay Burners )

全編を通し、出典明記のない画像は、『フリー素材』か『私自身が用意した画像』です。


この記事が参加している募集

眠れない夜に

忘れられない恋物語

出版を目指しています! 夢の実現のために、いただいたお金は、良記事を書くための書籍の購入に充てます😆😆