見出し画像

迎え仮名もあります

むかえ仮名」は怒っていた。
怒りの対象は「おくり仮名」である。




学校や社会生活では「送り仮名」ばかりが扱われる。
そもそも「迎え仮名」という存在を知らない人の方が圧倒的に多いだろう。



この記事は、「迎え仮名」の気持ちをみ取り、みなさんに、

「『迎え仮名』って便利なんですよ」

と伝えたくて書いたものである。



この記事について⬇️⬇️





❶「送り仮名」を再確認!


「迎え仮名」について語る前に、まず「送り仮名」を確認したい。



「送り仮名」とは、以下のものだとご存じだろう。




「送り仮名」を簡潔に説明するなら、

単語を漢字で書く場合に、漢字に添える平仮名のこと

といえよう。

「送り仮名」は学校教育でも漢字検定でも頻出で、誰でも勉強したことがあると思われる。


↓漢字検定で「送り仮名」を勉強していらっしゃる方




というわけで、いったんまとめ。





❷迎え仮名とは?

「『迎え仮名』って何?」

という声が聞こえてきたので説明したい。




「三重」という言葉を例に挙げよう。



「三重」のままでは、「三重さんじゅう」と読むか「三重みえ」と読むかわからない。




そこで、「三重」の上に、「サ」とつける。

これで、「三重さんじゅう」と読むことがわかる。



この「サ」を「迎え仮名」という。




他の例も挙げよう。





「迎え仮名」とは、

漢字の上(横)に添えられ、漢字の読みを確定・・・・・・・・させるもの

なのだ。

【補足】

「振り仮名みたいなもの?」と思った人。
その解釈で合っています。

振り仮名と迎え仮名は、”役割の面で”似ています。




「迎え仮名」と「送り仮名」のイメージとしては、

このような感じだろうか。



「ふーん。でも三重さんじゅう三重みえなんて、文脈で判断できるんじゃない?」

と思う人もいるかもしれない。




たしかに、下記の文2つを見ても、文脈で判断できそうである。

◆器が割れないよう、緩衝かんしょう材で三重に包む

◆三重にある伊勢神宮に行った



では、次の文はどうだろうか?






この文は、二通りの解釈ができる。

◆「人気にんきのない遊園地」
◆「人気ひとけのない遊園地」



しかし、「迎え仮名」を使えば・・・・・・、

人気ひとけのない遊園地」とスムーズに読める・・・・・・・・のだ!




「でもさぁ、やっぱり文脈で判断できるでしょ?」

という人がいることは承知している。
そんな人にとどめをさしたい。




次の表現を見て、誰のことか2秒で・・・判断できるだろうか?







この表現では、

かん元総理大臣(菅直人さん)
すが元総理大臣(菅義偉さん)

のどちらのことかわからない。





しかし、

と「迎え仮名」を使えば一瞬で・・・すが元総理大臣のことだとわかる。


二通りに解釈できる読み方も、「迎え仮名」が使ってあれば読み手もすぐ判断できる。



エッセイストの岸本洋子さんは、『日本語文章がわかる。』(アエラムック)で、文を読んでもらうことについて次のように述べている。


読み手は、書き手とはまったく違う状況、思考回路で、書かれた文章の前にいるのです。その読み手に、自分の書いたものを読んで理解してくれと突きつけることは、相手に努力を要求することです。

アエラムック (85)『日本語文章がわかる。』p88
朝日新聞社
2002年11月1日


わかりにくい表現、二通りに解釈ができる表現では、相手に『高度な努力』を要求することになってしまう。

しかし、「迎え仮名」を使えば、読み手の負担(漢字を読み分ける負担)を減らすことができるのだ。





❸迎え仮名の嫉妬


「送り」と「迎え」は、セットで使われることが多い言葉である。

送迎・・バスを使う
◆子どもの
◆会社の歓送迎・・

しかし、「仮名」という言葉とセットになった場合は「送り仮名」ばかり使われる。




それに対し「迎え仮名」は腹を立てている。
業を煮やしているのだ。


「迎え仮名」は、戦う決意をした。



そこで「迎え仮名」が思い出したのは『孫子そんしの兵法』で有名な孫子の言葉である。

「迎え仮名」は漢文が好きだったからだ。


敵を知り己を知れば百戦危うからず

(敵の実力や現状を知り、自分のことをわきまえて戦えば、何度戦っても勝てる)

「送り仮名」を倒すには、まずは相手のことを知る必要がある。

「迎え仮名」は早速、辞書で「送り仮名」の意味を調べてみた。
すると、衝撃の事実・・・・・が明らかになる。



(以下、引用部分の傍点は私がつけました)


【送り仮名】

漢字の読み方をはっきりさせる・・・・・・・・・・・・・・
ために、その字の下につけるかな。

『日本国語大辞典』(第二版)第二巻
「送り仮名」の項


【送り仮名】

漢字の読み方・・・・・・
、特に語末を明らかにするために漢字のあとにつけるかな

『新明解国語辞典』(第四版)
「送り仮名」の項


【送り仮名】

漢字と仮名を交えて日本語を書く場合に,その漢字の読み方を明らかにする・・・・・・・・ために添えるもの(後略)

『日本語学大辞典』
日本語学会/編(東京堂出版)2018.10
「送り仮名」の項


そう、「送り仮名」とは、漢字の読みを確定させるもの・・・・・・・・・・・・・なのだ。



たとえば、

この「細」という漢字。

「ほそ」とも「こま」とも読める。



「細」だけでは読み方はわからないが、


このように「送り仮名」がついていれば、一目瞭然。

ほそ
こまかい

と読み方を確定することができる。



他にも、

『哀』

かなしい
あわ

『行』

った
おこなった
※『おこなった』と送り仮名をつけることもできます。

といった例がある。


漢文が好きである「迎え仮名」は、高校の授業を思い出した。


⬆縦書きです


Aの漢文にもBの漢文にも「過」という字が使われている。
このままでは、なんと書いてあるかわからない。


が、ここに「送り仮名」をつけると・・・・・・!


それぞれの「過」の読み方は、

あやまちて

ぎたるは

とわかる。
このことからも、

「送り仮名」は漢字の読み方を確定させるもの

ということが改めて確認できるのだ。



このことを知った「迎え仮名」は思う。


と・・・・・・!



このように「迎え仮名」は”話せば理解してくれる”ヤツでもある。
そのうえ、「文章を読みやすくしてくれる」、”頼れる”ヤツでもある。



こんな「迎え仮名」、日常で使ってみてはいかがでしょうか?



【2023年6月15日:追記!】

コメントで、

「迎え仮名」は知らない人がほとんどなので、使う前に知名度を上げた方がいいのでは?☺️

というご意見をいただきました。
まったくもってそのとおりだと思います笑😅



まずは学校などで「迎え仮名」について学ぶ機会を作ることが必要ですね!!



こちらの記事が収められているマガジンです👇👇


この記事が参加している募集

#とは

57,759件

#国語がすき

3,809件

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

出版を目指しています! 夢の実現のために、いただいたお金は、良記事を書くための書籍の購入に充てます😆😆