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バカボンの兄 詩集

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詩の末尾に初稿を書いた年月を付していますが、note投稿にあたり加筆しています。投稿後の加筆もあり得るので、ご了承ください。
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#記憶

詩/悪しき者

悪しき者

体中が痒いので
毛穴を全部ひらいてしまおうと
湯舟につかっている
両手は宙でページを繰っている

ひとを傷つけて
痛みを覚えることで
まだ罪びとであることを確かめている
痛みを感じなくなったあとに
何が残ってるっていうのか

手の甲に浮かんだ汗は
しずくとなって落ちる前の心
引力によって
内側から自分の輪郭を保つ
奥から沁み出してくるものによって太る

自分の命を絶つ力を備えて
なお生

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詩/悼む

悼む

常に
太古から
全てのいきものに作用してきたというのに
ニュートンの登場まで誰にも気づかれなかった、
引力のように
現前はあった。なのに
毎晩死にたくなるのはなぜなんだろう
どこにいてもいたたまれない
どこからもいなくなりたい
常に
どこにもいないと気づいているというのに。
眠れぬ夜が明けて葬儀の支度をする

タゴールとアインシュタインが対話した時
タゴールは現前について語り
アインシュタ

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