詩/悼む

悼む

常に
太古から
全てのいきものに作用してきたというのに
ニュートンの登場まで誰にも気づかれなかった、
引力のように
現前はあった。なのに
毎晩死にたくなるのはなぜなんだろう
どこにいてもいたたまれない
どこからもいなくなりたい
常に
どこにもいないと気づいているというのに。
眠れぬ夜が明けて葬儀の支度をする

タゴールとアインシュタインが対話した時
タゴールは現前について語り
アインシュタインは
私が見ていなくても月は確かにある、と
思い出に浸った
それで、いいのではないか

参列。
あなたはもうどこにもいないのだとしても
あなたを知る人々の思い出の中で
あなたは生き続けている
(それは本当のことだ)
だから
どうか忘れないでやって下さい
事ある毎に我ら集まり
あなたのことを語り合う時
あなたは復活にあずかるのです
アーメン

人間は、それでいいのではないか

2022年9月

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