見出し画像

とにかく言いてぇのは「You guys are the best thing that ever happened to me」

 深夜にLINEが鳴る。きっと、親友の伶ちゃんからだ。人生に悩み、親指の爪をかんだとき、私は思わず伶ちゃんに連絡をする。彼女のくれる言葉は魔法のように深く染みる。さっき電話で話した恋愛相談に対してメッセージをくれたんだろう。


 恋をした。恋をして、いる。

 
 indigo la end/緑の少女、の歌詞が頭の中を流れていた。私は恋人がいる。でも新しく好きな人ができた。私の恋人はそれを了承していて、この関係はポリアモリーとかオープンリレーションシップと呼ばれる。漢字では多性愛なんて表記されることもある。双方の話し合いのもと、複数人と付き合うことを了承しながら関係を築いている。周りからどう見えるかは知らない。知りたくもないし、関係ない。


 とはいえ、私は一対一の異性間でしかできない結婚制度がある日本に生きている。どんなに恋人と強く誓いあっていても、他人のものさしを借りてきて自分の人生に悩むことがある。恋人がいるのに新しくできた好きな人について、心の整理がついているはずなのに、社会という客観的な性質を帯びている"風"の主観を持ってきて、考え込んでいた。伶ちゃんに電話やLINEで、「自分が不貞行為をしているのではないか。恋人のことが好きなのに好きな人もできたことは間違っているのだろうか」などと、あーでもない、こーでもないと伝えていた。

 伶ちゃんの送ってくれたメッセージに感激したので紹介したい。

「忙しい日々の中で誰かと出会って共感して、近くにいてほしいという寂しさはすごく分かるよ。だからそういう人に出会えたことも大いに大事にしてほしい」

画像1

 
 何かあまい花の香りを嗅いだようだった。肩の力が抜け、暖かい場所にいる気持ちになった。私は恋人を傷つけるのではないか、ということを考えすぎる故に、自分の感情をすべてないがしろにしていた。それは結局、恋人とも新しくできた好きな人とも向き合っていないことと同じではないのか。相手から「良い人」と思われるがために、自分を責めるという行動で自分自身へ無駄な弁明をしていた。

 伶ちゃんの言葉は、自分の感情の大切さを思い出させてくれた。まずは自分の感情を大切にしよう。そしてその上で相手を大切にしようね、と。
 簡潔にこうも伝えてくれた。「環が悩むのは人に対する誠実さゆえだよ。大事なことだよ」。私は自分の感情から逃げてはダメだ、と強く思った。

 伶ちゃんに背中を押された。
人間同士は寄り添ったり、つながったりしているだけで素晴らしいのだ

 これまで、私は死を意識することが多かった。きょう死ぬかもしれないから、「好きな人にはちゃんと好きと伝えよう」とか「大事なものを絶対に大切にしよう。そうしないと後悔する」とか。すぐに答えも求めた。好きな人には好きと伝え、そのレスポンスが欲しいと思っていた。

 その考えがゼロになったわけではない。ただ、かなり薄らいだ。私は伶ちゃんの言うように、「共感を覚え寂しさをも共有したい人」に出会えた。それがまず素晴らしいことだ。自分が相手を大切に思う気持ちをまず大切にしよう。そして、「たとえ心が100%通じていなくても、互いに不安や不満を持ったとしても、きょう寄り添えたことに楽しみや暖かさを感じていこう」と考えるようになった。

 最後や終わりは突然にくる。ただ、予期できないことをそこまで強く意識しなくていいのではないか。怖さや絶望を根底にしっかり抱え込んだまま、継続する毎日を感じて、自分を大切にし、相手を思っていけばいいのではないか。

 新しい好きな人との関係に悩み、それを伶ちゃんと共有できたことで私の考え方が変わった。それは恋人とだけ付き合っていたら感じなかった感情だ。恋人と話し合い、新しい人とも出会い続けるという選択をしている自分たちも好きだなと思った。そして新しく好きになれる人ができて良かった。どういう形になるかは、徐々に決まっていくはずだ。

画像2

 私はもう大人だし、一人で生きていてもある程度生活を楽しめる。だけど、伶ちゃんをはじめとする「みんな」がいることでもっと楽しくなるのだなと温かい気持ちになるのであった。

Guys/The 1975

<環プロフィール> Twitterアカウント:@slowheights_oli
▽東京生まれ東京育ち。都立高校、私大を経て新聞社勤務。
▽9月生まれの乙女座。しいたけ占いはチェック済。
▽身長170㌢、体重60㌔という標準オブ標準の体型。小学校で野球、中学高校大学でバレーボール。友人らに試合を見に来てもらうことが苦手だった。「獲物を捕らえるみたいな顔しているし、一人だけ動きが機敏すぎて本当に怖い」(友人談)という自覚があったから。
▽太は、私が死ぬほど尖って友達ができなかった大学時代に初めて心の底から仲良くなれた友達。一緒に人の気持ちを揺さぶる活動がしたいと思っている。
▽将来の夢はシェアハウスの管理人。好きな作家は辻村深月


 

この記事が参加している募集

#自己紹介

231,593件

#スキしてみて

527,181件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?